11
これで、ぼくも終わりだ。
必死で威嚇するけど、ミーミーって声にしかならない。
カラスたちはまったく怯んでくれない。
次々とぼくのところに突進してくる。
それをぼくは躱す。
ぼくには逃げることしかできないのか。
そういえば、さっきからカラスの動きは全部見えている。
ぼくはかすり傷ひとつ負っていない。
それに全然疲れるって感じはない。
そういえば、白い女の人がいってたな。
祝福をあげるって。
ぼくは最初から強くてなんでもできるって。
よく考えたらぼくは戦っていなかった。
おかあさんやおにいちゃん、おねえちゃんみたいに。
どうせ死ぬなら戦おう。
これだけのカラスを倒すなんて無理だけど、一匹でも倒してみよう。
ぼくはおかあさんの子供なんだ。
ぼくは、カラスたちに向き直る。
カラスたちはまったく無防備に突っ込んでくる。
その嘴をさけて、飛びつく。
身体の中で熱いものがぐるぐるする。
魔法の練習をしていたときに感じたものだ、
猫パンチをくらわすとカラスは吹っ飛んでいく。
えっ。
あんま力いれてないけど。
ぼくは自分の肉球を見る。
ふだんとおなじだけど。
でも、身体の中のぐるぐるが増えてくるとカラスの動きが遅くなるような気がする。
ぼくはそのぐるぐるを身体から外に出すイメージ。
そのとたん、ぼくの周りのカラスが地におちる。
なんか、気絶してるし。
ぼくは、カラスに飛び掛かる。
爪をたてるとカラスは大きな傷を負う。
なんだこの力は…
カラスのリーダーは逃げようとする。
とりあえず、仕切りなおそうってことなんだよね。
リーダーとしてちゃんとした考え方。
無駄に犠牲を増やすことはないってことか。
でも、逃がすわけにはいかない。
って言っても大ガラスは空を飛んで逃げようとしているのだ。
ぼくに追いつく手段はない。
ダメ元でジャンプする。
おもいっきりだ。
そのとたん、ぼくの身体は高く浮き上がる。
そのまま、ぼくは弾丸のように大ガラスのところに飛んでいくのだった。