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「ケビン、釈放だ」
サンドルが苦虫をかみつぶしたような顔でいいながら、腕の縄と腰縄を外させる。
逮捕されてから3日目のことだった。
もっとかかるとは覚悟していたが、大した事はなかったみたいだ。
結局騎士団も以前のようなことはできなかった。
わたしがどんな魔法を使うかわからないし、ブラックウッドさんの名前も効いたみたいだ。
結局、彼らはどなりつけるくらいしかできなかったのだ。
わたしがドアを開けるとレイモンドさんが立っていた。
わたしは振り返ってサンドルに小さく会釈をする。
サンドルは無視してそっぽを向く。
やっぱり、相当怒っているみたいだ。
たぶん、わたしを落とせなかったことをモーガンに責められるんだろうな。
「レイモンドさん、ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ遅くなってすみません」
「でも、どうやったんですか?」
「ただ、古い友人に力を借りただけです」
「古い友人?ですか?」
「ええ、友人というより敵ですかね。
昔、商売でしのぎを削ったことがあります。
昔の話ですがね。
まず宿に帰りましょう。
お疲れでしょうから」
「大丈夫です。
ブラックウッドさんに習った魔法がありますから。
それに、わたしを傷つけようとすることはできませんでした。
小心者ばかりですからね。
自分の考えでなにもできないやつらです」
「たしかに。
しかし、モーガンはもう終わりです。
一か月もつかどうかというところですか。
とりあえず、彼らがつぶれるのを寝て待てばいいだけです」
そう言って笑うレイモンドさん。
その微笑み、無茶苦茶怖いんだけど。
「とりあえず、宿でこれからのことを考えましょう。
商品も補充しなければなりませんし、一度ドラの町にもどりたいと思っているんですよ」
「それもいいでしょう。
戻ってくるころには終わっていますから。
ただ、その時にはもっと強い敵と戦わなくてはなりません。
新しい商品を仕入れてきてください。
わたしが、店を守っておきましょう」
レイモンドさんはわたしの言葉にこう答えるのだった。