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わたしは取り調べ室に連れていかれる。
なんか懐かしい気もする。
この前はこんなに落ち着いてみることができなかったが、粗末な部屋だ。
「モーガン商会と製造法が違うのなら、製造法を言ってみろ」
またその手か。
「しかし、これはブラックウッドさんの許可を得ないと教えるわけにいきません。
それから、わたしはブラックウッドさんの友人です。
もし、わたしに何かあったら、老師はどうするでしょうね」
ブラックウッドさんの名前を出す。
べつに製法は教えてもいいって言ってるが、今ではない。
「またそんな嘘を」
「嘘かどうか確かめてみてもいいですよ」
サンドルはもう一人の騎士と何か話あう。
たぶん確認しているのだろう。
嘘だとおもっているんだけど、確信できないのだ。
こういうときに小心者ほど動けない。
少し若いのと話し合って帰ってくる。
「おまえ。騎士団を舐めてるのか!」
若いのがわたしにすごむ。
たぶん、若いやつにわたしを脅させて、もしなんかあったら若い騎士に責任をかぶせるつもりなのだろう。
「べつに舐めてませんよ」
そう言ったとたん、若い騎士は殴りかかってくる。
ブラックウッドさんから習った防御の魔法を使う。
身体を一瞬鉄のように固くする魔法。
とくにわたしのような非戦闘職にはちょうどいい魔法だ。
思いっきりの拳をふるう騎士。
そして、次に骨が砕ける音。
騎士は拳を押さえてうずくまる。
これ、痛いやつだ。
若い騎士に同情する。
「どうした?」
「こいつ無茶苦茶固いです」
「何をした?」
サンドルがわたしを睨む。
「ブラックウッドさんに教えてもらった防御の魔法です」
わたしは答える。
これで、やつらには攻撃できなくなる。
あとは時間稼ぎだ。
やつらにわたしの使える魔法はわからない。
だから、へんに攻撃はできなくなる。
それに本当にブラックウッドさんと親交があると思うだろう。
「すこし休憩だ。
水でもだしてやれ」
サンドルはそう言うと部屋からでていくのだった。