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子猫といってもぼくたちも魔法猫。
クロにいちゃんやハチワレにいちゃんもただやられるだけではない。
必死で魔法を打ち込む。
でも、覚え始めたばかりの魔法はあまりにも無力だった。
すぐに避けられて、嘴の攻撃を受ける。
無傷なのは、魔法を使えないぼくだけ。
とにかく、カラスの動きをよく見て避けるだけに集中した。
でも、向こうの世界でのトラウマもあって、カラスと対峙すると恐怖が先にたつ。
普通なら爪と牙で反撃するけど、それができない。
クロにいちゃんとハチワレにいちゃんもカラスに囲まれて姿が見えなくなる。
たぶん、これで終わりだ。
シロおねえちゃんはなんとかおかあさんと合流する。
「シロ、逃げなさい」
おかあさんはおねえちゃんだけでも逃がそうとする。
それは、おおきな隙となる。
ついにおかあさんの前に、あのリーダーのカラスが降りてくる。
大ガラスは羽ばたく。
そこから起きる風が渦巻き、風がおかあさんの身体を切り刻む。
致命傷ではないけれど、かなりのダメージ。
そこにカラスの大軍が襲い掛かる。
おかあさんも抵抗するけど、多勢に無勢。
なんとか2、3匹に氷槍を命中させるのがやっと。
それにもう動けなくなっている。
おかあさんは周りを見回す。
その瞳は塗れている。
おまえたちごめんねっていうように、ニャーって大きく鳴く。
そのまま、崩れるようにゆっくり倒れていく。
そのおかあさんをカラスが埋め尽くす。
ぼくこそごめんね。
こっちの世界でも何もできないかったよ。
なんでもできるって思っていたけど、守られることしかできなかったんだ。
シロおねえちゃんが必死で逃げる。
でも、それを逃すようなやつらではない。
すぐに追いつかれて、囲まれる。
カラスたちは、容赦なく、ぼくたち家族の身体をつついて食べる。
これは、この世界の決まり。
弱いものが強いものにたべられる。
ぼくたちも虫とか鼠とか弱いものを食べて生きている。
それと同じなんだ。
でも、ぼくは守りたいって思った。
こっちの世界でおかあさんがしたみたいに。
向こうの世界で人間のおかあさんやおとうさんが守ってくれたみたいに。
そのぼくのところにカラスたちが群がってくるのだった。