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「本当に効くのか?」
「ただの水じゃないだろうな」
「この価格で薬が出せるわけがないじゃないか」
「いえ、大丈夫ですよ。
効果は保証します」
わたしは商売人の笑顔で対応する。
たしかに薬というのは、いちばん騙しやすい商品だ。
成分は門外不出と言えばいいし、効かなかったとしても責任を追う必要はない。
それにフラシーボ効果と言って、信じれば本当に病気が治ってしまうこともある。
人間の意思の力も侮れるものではない。
わたしたちの薬も人間の治癒力に作用する。
普通の回復薬ではなく、ブラックウッドさんが古代の魔導により編み出した薬だ。
そう言っても、今日ここに店をだしたばかりのわたしを信じるものは誰もいない。
一応は安さに足を止めてくれるけど、買ってくれるものは誰もいない。
「やっぱやめとくわ」
おじさんはそう言って他に行こうとする。
「ありがとうございます。
また、お越しください。
それで、今日開店したばかりなんで、試供品をお渡ししています。
これをどうぞ」
わたしは小瓶を渡す。
これは以前もやった方法だ。
この前は効果を証明するために。
いちおう店としての信用はあったわけだから、薬の宣伝のためだった。
今回はこの店の宣伝をかねてだ。
タダでものがもらえるとなったら、このあたりの人はすぐに群がってくるだろう。
「そうか、それならいただこう」
おじさんはそれを受け取る。
さて、忙しくなるぞ。
「おれにもくれよ」
「わたしにも」
まわりの人が手を出してくる。
それから、その声を聞いた人も群がってくる。
「ニャンコロッド商会、本日開店です。
深淵の森の近くのドラの町から参りました。
これからこの町でお世話になりたいと思っています。
本日は試供品を配っています。
わたしどもの薬はよく効きます。
その効果の程をお試しください。
ただ、限定100本となっています。
なくなり次第終了です」
わたしは声を上げる。
そのとたん、わたしの店は多くのひとに囲まれるのだった。