20
エクレルの町につく。
えっ?ウルフはどうしたのかって?
4匹は素材となって荷台に積んである。
1匹は逃がしたけど、べつに無駄な殺生は必要ない。
できればみんな逃がしたかったんだけど、2人の旅人っていうのは簡単に倒せると思ったんだろうな。
いちおう門番のチェックはある。
それには、ギルド証の提示をする。
もちろんわたしたちのものではない。
深淵の森で拾ったものだ。
魔獣に襲われて命を落とした商人のものだろう。
魔獣はこういうものは置いていく。
ゴブリンとかは持っていく場合もあるが。
わたしはケビン、レイモンドさんはアルバンという名前になる。
年齢を合わせたらこのカードになった。
この人たちが罪人でなかったらいいんだけど。
いちおう照合しているときがいちばん緊張する。
まあ、犯罪を犯すとギルドカードは取り上げられるから、その可能性は低い。
あと、偽装の可能性もあるが、元商人のわたしたちは見分け方を知っている。
もし、偽造なら門番ごときに見破れるものではない。
あと、問題はグリフレッドって見破られることなんだけど、2人とも相当見た目は変わっている。
わたしは鍛えられて、10キロの減量をしているし、レイモンドさんは長髪と髭を生やしている。
たぶん、家族でもないとわからないだろう。
だけど、わたしたちに家族はいない。
今はドラの村のみんなが家族だ。
「まあ、問題はなさそうだな」
「ありがとうございます」
わたしは門番にそっと銀貨を握らせる。
門番はすこし笑ってそれを受け取る。
変わっていないな。
ハミルトンに仕える役人たちは、かなり腐敗している。
やはり、ハミルトン伯爵自体相当にモーガン商会からの袖の下を受け取っている。
その下のものも同じようになる。
「どこからきたんだったっけ」
「北のほうの町から深淵の森を少し横切って来ました」
「そうか。危険はなかったか」
「ええ、特にありませんでした」
「そうか。このところウルフやゴブリンが増えていてな」
「そうなんですか。気が付きませんでした」
そういえば街道は騎士のパトロールもあり、ウルフが出てくることはなかったはずだが。
騎士団が相当にさぼっているとしか思えないな。
それほど、規律がゆるんでいるのか。
「しばらくこの町で商売しようと思います。
よろしくお願いします」
わたしは、門番にそう言って荷馬車を動かし始めるのだった。