09
ある日、なんか上の木の枝にたくさんのカラスが集まっていた。
ぼくたちは縄張りっていうのがあるんだけど。
空は違うんだ。
なんでって?それはぼくたちは飛べないから。
カラスが飛んでいたって、ぼくたちは手をだせない。
もし、地面に降りてきたら手をだすけどね。
こっちの世界のぼくは鳥をつかまえるのも得意なんだ。
カアカア
ひときわ大きなカラスが鳴く。
その声が引き金になる。
いきなりカラスたちはぼくたちのところに降下してくる。
それも一斉に。
おかあさんはそれに気が付いて魔法を展開する。
無数の氷の槍を生み出す。
しかし、遅い。
ギャーオ。
ミケおねえちゃんの顔にカラスの嘴が突き刺さる。
まず集中的にミケおねえちゃんが狙われる。
本当なら一番小さいぼくなんだろうけど、なぜかお姉ちゃんが狙われたのだ。
おねえちゃんの身体はカラスに囲まれて見えなくなる。
もちろん、おかあさんは氷の刃を飛ばす。
しかし、おねえちゃんを貫いてはいけないから、思いっきりはいけない。
その上、おかあさんの氷槍は弾かれる。
あの大きなカラスの前になにか魔法陣のようなのが現れ、おかあさんの魔法はミケのところに届かない。
次にぼくのところにもカラスが降りてくる。
でも、その攻撃を避ける。
そう、ぼくはおにごっこが得意なのだ。
ぼくは走って逃げる。
カラスはぼくの動きについてこれない。
ただ、攻撃を受けてるのはぼくだけではない。
クロおにいちゃんもシロおねえちゃんもハチワレおにいちゃんも。
おかあさんは、おにいちゃんたちのほうにいこうとする。
でも、それが大きな隙になる。
大きなカラスがおかあさんのところに行く。
それと他のカラスが石をおかあさんに落とす。
足を怪我したおかあさんは普通の動きではない。
大きな石がいくつか直撃する。
たぶん、ぼくたちを襲ったのは作戦。
おかあさんを集中できないようにするため。
今のぼくたちなんて、カラスの敵じゃない。
カラスにとって、おかあさんさえ倒せばこの戦いは勝利なんだ。
普通、おかあさんもそんなことはわかっているだろう。
でも、ぼくたちがやられたらおかあさんは冷静でいられない。
この場合の正解はぼくたちを置いて逃げること。
それなのに、ぼくたちを守ろうとしてしまった。
ミケおねえちゃんのところからカラスが離れる。
そこには血まみれのおねえちゃんがぼろきれのように横たわっているのだった。