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わたしたちも家を与えられ、ドラの町の住人となった。
村長は猫ちゃんらしい。
ここで生活を始めたが、毎日が驚きの連続だった。
この町の魔導技術はまるで未来の世界。
100年後にタイムスリップしているとしても、おかしくないくらいだ。
だから商売のネタはいっぱいある。
商人にとってはすごく魅力的だ。
あと、ぼくといっしょにここに来た2人の老人。
まず、一人はホルスさん。
一流の鍛冶職人だったらしい。
ところが、頑固でモーガン商会の仕事を断ってから、いやがらせを受けるようになった。
そして、ついに店がつぶれてしまった。
その恨みでモーガン商会に自分の作った武器を持って飛び込んだところを逮捕されたということだ。
門の近くに鍛冶の炉がある家があった。
ホルスさんはそこに住みはじめたのだ。
不思議なことだ。
この町にはなんでもある。
もしかしたら、宇宙人がここに町を作って、ある日故郷に帰っていったのではないかと思ってしまう。
あんがいそういうことかもしれない。
この町には古代、いろいろな人が住んでいたのだろう。
ここにある炉は魔導エネルギーで金属を溶かすみたいだ。
ホルスさんはこの炉と設備があればなんでもできるという。
職人魂に火をつけられたホルスさんはさっそく仕事を始めたのだった。
もう一人の老人もすごい人だった。
レイモンドさん、元モーガン商会の支配人だ。
商人として大先輩だ。
小さな生糸問屋だったモーガン商店を総合商社にまで育て上げた企業戦士だ。
その手腕はわたしも聞いたことがある。
ただ、モーガン商会が大きくなってからは、モーガンにとってレイモンドさんは邪魔な存在になった。
大きくなるまではまともな商売をして、信用を築いてきたモーガン商会は市場を独占してから変わった。
モーガンはレイモンドさんを横領の罪で訴えたのだ。
レイモンドさんにとって身の覚えのない罪。
しかし、この町の刑事は貴族のハミルトン伯爵の思うがままだった。
モーガンは完全にハミルトン伯爵を手の内に入れていた。
レイモンドさんは無実の罪で鉱山送りとなったのだ。
わたしはこの町でレイモンドさんに商売のことを一から学ぶことにした。
やはり商売の基本は信用。
レイモンドさんは言う。
モーガン商会のやり方ではたぶんあまり長くもたない。
それは商人の心をわすれてしまったからだって。
わたしも最初はモーガンを見返そうとかそんなことばかり考えていた。
しかし、猫ちゃんたちを見ているとそんなことはどうでもいいと思うようになった。
わたしとレイモンドさんはこの町の資材の配分にかかわるようになった。
必要なところに必要なものを。
そういうのは商人の仕事だ。
猫ちゃんは森に迷い込んだ人をたびたび連れてきた。
その人たちはただ迷い込んだだけじゃなくて、心に傷を負っていた。
ただの迷い人は猫ちゃんは元の道に案内するだけで連れてこないのだ。
ドラの町に住む人はだんだんと増えていき、わたしたちの仕事もそれにつれて増えていくのだった。




