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ドラの町はすこし小さいにしても町である。
それなのに3人と猫ちゃんしか住んでいないという。
家も100件以上あるのに、使っているのは門の近くの3軒だけだ。
それもとなり合わせの小さな家だ。
「人間住むところなんてこのくらいがちょうどいいんじゃよ。
分不相応の暮らしをしようとするから争いが起きる」
ブラックウッドさんの弁だ。
わたしたちが招かれたのは、ミリアさんの家だ。
きれいに片付いているキッチン。
そのテーブルには、お料理が並んでいる。
肉や野菜のある豪華な料理だ。
肉は牛系の魔獣、にしても野菜の品揃えがすごい。
どこか近くの村に市場があるのか。
「この村には農場があるんだよ。
ゴーレムさんたちが野菜を作ってくれるんだ」
アッシュ君が教えてくれる。
まあ、3人の暮らしなら家庭菜園レベルでできるかもな。
それにしても売れるレベルの野菜だ。
商人はすぐにこんな風に考えてしまう。
「いただきます」
わたしたちは料理に口をつける。
「「おいしい!」」
わたしたちは声をそろえてしまう。
一流のレストランの味だ。
特に火加減や調味料の配合が絶妙。
このミリアさんって子、普通の少女に見えるけど、料理の天才じゃないか。
「すごい、この味、まるで都の一流レストランだ。
家庭料理には思えない。
君はすごい料理人になれるよ」
「えっ?でも、これは魔導コンロの言うとおりに作ったんだよ。
だれでもできるよ」
「そうなんじゃ。この魔導コンロは古代の魔導技術で作られているんじゃ。
古代人の魔導は現代の魔導に比べてかなり進んでいたんじゃ。
この町を動かしているのもその魔導。
その技術はAIと言われるみたいなんじゃ。
魔道具が学習し自分で判断していく。
そんな技術なんじゃ」
ミリアさんの言葉をブラックウッドさんが解説してくれる。
この町、すごい町なんだ。
この技術でレストランを作ったら、素人がプロ級の料理が作れる。
それなら、人件費が安くなる。
それだけでなく、常に同じ味の料理が作れる。
気難しい職人はいらなくなくなるのだ。
わたしはおいしい料理を食べながら、新しい商売について考えてしまうのだった。