11
「虎、いやこの大きさはグレイトタイガー」
「グレイトタイガーならA級じゃないか」
騎士たちは剣を抜いてグレイトタイガーに対峙する。
グレイトタイガーは悠々と品定めをするようにわたしたちを見る。
ただの餌を見る目。
わたしたちを敵とは見ていない。
だれから食ってやろうかって感じ。
舌で鼻の下を舐める。
騎士たちは構えたまま下がる。
わたしたちもだ。
刺激しないようにゆっくりと。
そう、こういう時は走ってにげてはいけないという。
そういう奴から獲物にされるのだ。
グレイトタイガーは吠える。
大きな口を開けて、鋭い牙を見せて。
騎士たちはそれを合図に我さきにと走り出す。
わたしたちを置いて。
そう、彼らにとってA級の魔獣が出たというのは逃げてもいい口実となる。
わたしたちをいけにえにして逃げ切ればいいって考え。
ただ、誇り高き狩人にはそんな理屈は通らない。
獲物を逃がすなんてことは彼の美学に反したみたいだ。
武器も持たない囚人はあきらめるしかない。
戦う手段を持たないのだ。
そのうえ、手首を縛られ互いに繋がれている。
それは冒険者上がりだけじゃなくて、わたしや老人を含めてのことだ。
とにかく、グレイトタイガーは素早く動く。
騎士たちの逃げたほうに回り込む。
すぐに騎士たちの前に現れる。
「こいつ、俺たち、みんな食うつもりだ」
「逃げられないぞ」
「しかたない戦うしかない」
騎士たちは覚悟を決める。
しかし、こいつら閑職のやつらだ。
素人目でも戦いの経験が少ないのがわかる。
その引けた腰でグレイトタイガーを倒せるわけはない。
グレイトタイガーは爪をふるう。
その爪に一人の騎士がとらわれる。
そのまま、飛ばされて木にぶつかる。
なんか足が変な方向を向いてる。
「来るな。こっちに来るな」
もうひとりの騎士が無茶苦茶に剣を振っている。
そんなことしても無駄だろう。
そう思ったとたん、虎がそいつに突っ込む。
その騎士の肩口を虎の牙が食いちぎるのだった。




