10
それからの旅は地獄となった。
騎士たちは、ことあるごとにわたしを打つようになった。
そのおかげで老人たちに対する風当りは弱くなったんだからいいとしよう。
わたしはいつかこんな騎士たちが好きにできる時代を終わらせるという夢のために耐えることができた。
ついに深淵の森に入った。
空は木々に覆われ、わずかな空しか見えない緑の世界。
鉱物を運び出すために道が開かれているが、それがなければ迷ってしまうような樹木の海だ。
ここからは、危険度が高くなる。
凶悪な魔獣が出てきてもおかしくない地帯にはいったのだ。
騎士たちもわたしにかまっている暇はなくなる。
もし、魔獣が出てくると戦わなければならないからだ。
わたしたちは騎士たちに前後をはさまれ歩いていく。
もちろん用心しながら進むのだからあゆみは遅くなる。
わたしも老人たちもついていくのが容易になったのだ。
それにもう半日も歩けば鉱山につくのだ。
わたしは、その時、わたしたちについてくる茶色い小動物をみつける。
あれは猫ちゃんだな。
そう町によくいる猫ちゃんだ。
しかし、ここの猫ちゃんは尻尾が2つに別れている。
聞いたことがある。
これは魔法猫だ。
町の猫ちゃんと違って魔法を使うことができるのだ。
もしかして、わたしたちを魔法で殺して食おうというのか。
でも、猫ちゃんの顔からそんな風には見えない。
なにか好奇心でわたしたちを見ているって感じだ。
「なんだ。魔法猫じゃないか」
騎士の一人が猫ちゃんに気づいて、猫ちゃんのところに近寄る。
「魔法猫の皮は高く売れるんだよな。
なんか楽器の材料になるとかで」
騎士たちは猫ちゃんを捕まえようとする。
でも、猫ちゃんは素早く逃げていく。
やはり町の猫ちゃんより素早いようだ。
よかった。こんなやつらにつかまらなくて。
すこしほっとする。
「それでは。ここで休憩だ」
小川のあるすこしひらけた場所で、騎士たちは馬を止める。
休憩だ。
小川の水は森の中だけあって澄んでいて冷たい。
わたしたちは水をかぶったり飲んだりする。
それから、腰をおろして身体を休める。
そのとき、草むらからのぞく目に気が付く。
わたしが目を凝らすと草むらから巨大な虎が姿を現すのだった。