08
数日後、わたしは鉱山に連行されることとなった。
10年間の強制労働だ。
劣悪な環境で朝から晩まで働かされることとなる。
10年という期限はあるが、ほとんど生きて戻ってくることはないと聞く。
しかし、わたしは戻ってやる。
なんとしても戻って、あのモーガンをつぶしてやる。
そうしないと、本当に自由な社会にはならない。
脱獄と言う方法もある。
ただ、鉱山監獄は難攻不落だ。
問題はその場所だ。
深淵の森に入ったところにある。
深淵の森は果てしない広さの樹海だ。
入ったところと言っても、森を一時間は歩かなくてはならない。
磁石でさえくるってしまう迷いの森だ。
道をしっているものでないと迷ってしまう。
それに、深淵の森には強力な魔物が住んでいる。
わたしのような商人がひとりで戻ってくるのは不可能といえよう。
それでも、なんとしても戻ってこよう。
そして、世界を変えるのだ。
人々が希望をもてる世界に。
がんばったら報われる世界に。
わたしたち10人は引き出され、腰ひもでつながれる。
これから1週間の鉱山への旅がはじまる。
囚人は徒歩、そしてわたしたちを見張る騎士は4人。
剣を持って馬に乗っている。
「そろそろ出発だ。
おまえら、ちゃんとついて来いよ。
もし、逃げようとしたら殺してもいいといわれている。
くれぐれも変な考えをおこさないように」
わたしたちは繋がれていて、武器も持たされていない。
それに逃げたところで人間の足だ。
騎馬の足にはかなわない。
逃げてもすぐに追いつかれて斬られるに決まっている。
わたしたちはうなづく。
「よし、では出発だ。
おくれるんじゃないぞ」
そう言って、隊長は手をあげる。
その合図で全員が動き出す。
ほとんどが屈強な男たちだ。
たぶん、町で乱暴を働いたのだろう。
しかし、中には60歳くらいの小柄な老人もいる。
わたしも彼らに比べると弱弱しく見える。
わたしは少し早歩きで囚人の列についていくのだった。