05
「べつに逃げたりしませんよ。
わたしはなにも悪いことはしていないのですから。
騎士団できちんとお話します」
わたしはそう言って、両側から捕まえようとする騎士を制止する。
「とにかくグリフレッドを連れていけ!」
サンドルが命じると両手が縛られ、連行される。
「ちょっと行ってくる。
大丈夫だ。すぐに戻ってくる」
わたしは店の者に言う。
そして、騎士団についていく。
ここで暴れてもしかたがない。
あとは駆け引きだ。
それも相手はモーガン商会だ。
すこしやりすぎた部分はあったのかもしれない。
連日売り切れはよくなかったかもしれない。
また、あまりに増産するのも。
とにかく、交渉によって乗り切れるはずだ。
商売人同士では、あまりにひどいことはできない。
わたしが騎士団の詰所につくと、取調室に入れられる。
壁にはいろいろな道具が置いてある。
それは拷問具だ。
この世界では自白至上主義となっている。
たぶん、これを見せることによって脅すという意味もあるのだろう。
「すわれ!」
わたしは椅子に座らされる。
テーブルをはさんでサンドルが座る。
「これから取り調べを行う。
包み隠さず話すんだぞ」
「わかってます。
なにもやましいことはしてませんから」
わたしは答える。
「モーガンさんから、訴えがあった。
お前が回復薬の製法を盗んで、安く販売しているとな。
このことに相違はないな」
「いえ、わたしの売っている回復薬はモーガンさんと製法が違っています。
そもそも材料も違います」
わたしは抗弁する。
わたしの回復薬は、まったく新しい考え方で作ったものだ。
「では製法を言ってみろ。
それをモーガンさんに見せたらおまえの言うことが本当かどうかわかるだろう」
「それは、できません」
わたしは、取り調べに反発するのだった。