03
わたしたちは一気に計画を進めた。
決めた限り、スピード感をもってやらなければならない。
ぐずぐずしていたら、邪魔をされる恐れがある。
相手はモーガン商会だ。
並大抵なやり方ではつぶされてしまう。
相手に考える隙を与えない。
わたしたちは町の中心の公園で試供品を配った。
ジェミーはぼくたちの回復薬の効果を宣伝してくれる。
わたしたちの回復薬は、口コミでどんどん広がっていった。
もちろん、なにもなかったわけではない。
軽いいやがらせはあった。
こっちの薬の効能について嘘をひろめるとか、チンピラを使ったいやがらせとか。
たぶん、この程度のことしか思いつかないのだろう。
チンピラ対策としては、店のあたりの親分さんに声をかけておいた。
おやじの代からけつもちをしてくれている親分だ。
チンピラが来てもその名前をだしただけで、引き上げていく。
たしかに商売と関係ない力に屈するのは良くない。
ただ、それを自力でなんとかできるのは、モーガンのような大商人だけ。
そのうち、ちゃんとした冒険者を雇って自衛組織を作りたいが、優先事項はそこじゃない。
とにかく、わたしたちの計画は予定通りにすすんだ。
モーガン商会はわたしたちを舐めているんだろう。
モーガンを巨象とすれば、わたしたちはそれにたかるハエ程度の存在。
敵ですらないと考えているのだろう。
それはわたしの読みどおりだ。
奴らの目がこっちに向けられるまでが勝負だ。
モーガンが本気をだせば、わたしたちなど簡単にひねりつぶされてしまうだろう。
それまでに、虎ぐらいの存在にならなければならない。
そうすれば、彼らもひねりつぶすことはできないだろう。
それにしても、簡単にことが進みすぎている気がするが。
わたしたちの商売は軌道に乗り始めた。
わたしたちの店には、開店から行列ができるようになった。
そして、昼くらいには売り切れるのが普通になった。
ジョンが増産してくれるが、おっつかなくなっている。
作れば作っただけ売れるそんな状態が続く。
材料もモーガン商会より安価で手に入りやすいものを使っている。
それも、秘密で冒険者ギルドにたのんでいる。
わたしたちが依頼していることがわかれば、その素材は値が上がってしまう。
そうすれば、今の価格は維持できない。
今時点で値上げをするわけにもいかないのだ。
今は安価で品質の高い商品を出しているという信用を売っているのだ。
それと、モーガンの扱う高級品には手を出していない。
今は真向から喧嘩を売るわけにはいかないのだ。
モーガンの最大の顧客層は上級冒険者や騎士団、貴族だ。
わたしたちは下級冒険者や民衆なのだ。
わたしたちは順調に利益を上げ続けるのだった。




