02
「ついに、新しい回復薬ができた」
わたしがそう言うと、店のみんなが集まってくる。
「よかったな。グリフレッド」
「おめでとう」
「これでいままでの苦労が報われるね」
仲間の顔を順に見回す。
ジョン、スティーブン、ジェミー。
みんなよく頑張ってくれた。
これで、みんなに良質な回復薬がいきわたる。
そう、いままで回復薬というのは高価な品だった。
製法はモーガン商会が握っていて、普通の人には手が出ない値段となっていた。
そして、一般の人は仕方なく闇で売られている回復薬を使うしかなかった。
モーガン商会のやり方自体は特に商慣習に反するものではなかった。
薬の製法というのはひとつの財産だ。
そういう権利を守る制度がないのだから、自分で守るしかない。
だから、製法を持つものが独占するのは仕方がないことだ。
ただ、商売には信義誠実の原則というのがある。
商人同士約束は守らなければならないのだ。
そうでないと、安全に商売ができなくなる。
みんなが疑心暗鬼にならななくていい状態。
そういう社会でないと、商売自体がなりたたないのだ。
それを担保するのが領主の役目だ。
信義誠実に基づいた裁判がなされないと、その領地の商業は崩壊するのだ。
だから、ぼくたちは自分たちでまったく新しい回復薬を作った。
いろいろな薬草を試して、安価で効果の強いものを作ったのだ。
これを世にだせば、みんなから感謝される。
そして、ぼくたちも儲けることができる。
これこそ、三方良しというものだ。
この回復薬を売った儲けにより、他の薬も開発することができる。
それによりモーガン商会の牙城に小さな穴でもあけることができたら。
ぼくたちに続くものも出てきて、大きな流れになっていくだろう。
「ジョン、スティーブンできるだけ多く薬を作ってくれ。
小分けにした試供品を配る」
そう、まずわたしたちの回復薬を体験してもらう。
本当にいいものは絶対に認められるのだ。
「ジェミーは宣伝を頼む」
彼女は町のインフルエンサーだ。
彼女がいいと言った、ファッション、雑貨、食品はバズる。
そう、いいものであってもまずは認知されること。
とりあえず、目を止めてもらわないと存在しないのと同じだ。
だから、彼女を仲間に引き込んだ。
彼女もモーガン商会の独占には嫌気がさしていた。
そのおかげで、おしゃれなものやいいものが出回らないって言ってた。
さて、あとは敵がどうでるかだ。
モーガン商会はいろいろな手段を使って敵をつぶしてくる。
これは商人にとっての戦争だ。
わたしはモーガン商会との戦いについて、いろいろと考えを巡らせるのだった。