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"悪辣令嬢"エレノア・フォンブラウンは婚約破棄され追放される

初めて連載してみます。

駄文かも知れませんが、もし良ければ見てみてください。

そんなに長くする予定はありません。

「エレノア...済まないが君とは結婚出来ない」


私は婚約者であり、この国の皇太子である、ロベルト・ドラグニス殿下に婚約を破棄された。


此処はドラグニス帝国皇帝の謁見の間。


皇帝や王族、貴族たちが集まる中、皇太子ロベルト殿下と公爵家令嬢である私、エレノア・フォンブラウンは十八歳の成人の祝いの後、正式な婚約を発表する場で、私は盛大に婚約破棄を宣言された。


「ど、どうしてですか!?」


私は状況が飲み込めず、慌てた口調で聞き返す。

するとロベルト殿下は私の横にいる妹、シエルの手を取った。


「私はこのシエル・フォンブラウンと婚約する!」


私の横にいた妹、シエルがロベルト殿下の宣言を受け、お互いに強く抱きしめ合った。

突然の事で頭が真っ白になり、開いた口が塞がらない。


「ごめんなさい...お姉様。実は私たちお互いに好きになってしまったの...」


シエルが私に向かって告げた。


「僕たちはお互いに惹かれ、今日まで密かに愛を育んできたのだ。それに僕はシエルから君の本性を聞いてしまった...君は異母姉妹であるシエルを虐げていたのだろう。そのような女性と僕は結婚出来ない!」


婚約破棄だけでも動揺しているのに追い討ちをかけるかの様にロベルト殿下は私に言い放つ。


「そ、そのような事は...」


私が口を開くと横からシエルが割って入る。


「エレノアお姉様、貴女は私のお母様が平民出身なのを気に入らないのは知っていました。だから私に厳しく接していたのでしょう...ですが、あんまりです!私たちは母親が違えど、姉妹じゃないですか!」


「何を...」



私がシエルに厳しくしていたのは真実だった。


元々シエルの母親はフォンブラウン公爵家に仕えるメイドだった。


私の父親は母が私を身籠もっている最中に、シエルの母親と密かに恋仲になっており、そしてシエルを身籠ったのだ。


私の母は父の不貞を許し、シエルの母親を家族として迎え入れようとしたが、シエルの母親は公爵家から去ったのだ。


その後、私の母は病で他界し、シエルの母親が後妻として迎えられ、シエルもその時に公爵家にやって来た。


新しくやってきた妹は賢く、美しく、非の打ち所がなかったが、貴族としての振る舞いを全く知らない平民であった。


その為、教育係として私がシエルに貴族としての振る舞いを教えてきた。


公爵家の恥にならぬよう...また貴族の世界で生きていけるよう様々な事を教えてきた。


だが、それが仇となったみたいだ。

妹からしたら私のそれは、虐げにしか映らなかったようだ...






あの婚約破棄から一ヵ月が経ち、ロベルト殿下とシエルの結婚式の日が来た。


元々は私とロベルト殿下の結婚式であったが...


かつて自分の結婚式だったものに出るのはこうも肩身が狭いものか。


周りを見渡すと、貴族たちが私をみて小言で何かを話している。


おそらくは、結婚破棄された私を嘲笑い、妹を虐げていた悪女として侮蔑をしているのだろう。


遠い目で貴族たちを見ていると背中に衝撃が走る。どうやら誰かが私にぶつかったようだ。


「ごめんなさーい。これはこれは、エレノア嬢でしたか...どうですか?自分で用意した結婚式の舞台は?花嫁は貴女ではないようですけれど」


かつて公爵家令嬢である私に媚びを売り、擦り寄ってきた貴族の令嬢たちがそこにいた。


私は馬鹿にして来た彼女たちを睨む。


「睨まれてしまいましたわ〜」


「今度は私たちが虐められてしまいますわ〜」


「まぁ恐ろしい〜」


「皆、貴女のことを"悪辣令嬢"と呼んでいますのよ〜」



揶揄うような声で私を挑発する。


どうやら婚約破棄の一件で、シエルが言った言葉が一人歩きをし、噂に尾ひれが付いて、しまいには世間で私は"悪辣令嬢"や"外道エレノア"なる称号を手にしてしまった...


すると、そこに本日の主役であるロベルト殿下とシエルが現れた。


「今日は私たちの門出の日、どうか無用な争いはやめてください」


純白のウェディングドレスを纏ったシエルは、姉である私から見ても美しかった。

横にいるロベルト殿下も白のタキシードに身を包み、貴族の令嬢の視線を奪った。


「お美しいですわシエル様!」


「なんとお綺麗なのでしょう!」


「まるで帝国一の宝石、ダイヤモンドですわ!」


「いえいえ、帝国に舞い降りた女神ですわ!」


先程まで私を揖斐っていた令嬢たちがシエルに媚びを売りはじめた。


「結婚おめでとう...シエル」


私は自分の惨めさを精一杯に押し殺し、シエルに祝いの言葉を送る。



シエルが満面の笑みでこちらに近づいて、私を抱きしめる。







「いい気味ね〜オ・ネ・イ・サ・マ」


耳元でシエルは私に囁いた。


「公爵家に来た私に、あーだこーだ言うアンタにはウンザリしてたのよ。でもこの前の婚約破棄の時の顔は最高だったわ〜。それでこそ、ロベルト殿下を奪った甲斐があったってことよ」


今までに聞いたことの無い口調でシエルは語る。その囁き声が私以外に聞こえることは無い。


「シエル...貴女何を言って...」


シエルが馬鹿にしたように笑うのが聞こえ、私は頭の中が混乱した。


「まったく...何が貴族の振る舞いよ。下らない。結局、殿下は私をお選びになったわ。貴女は貴女の馬鹿な母親同様に男を奪われて惨めに死んでいくのよ」


怒りが沸点を超え、私の中で何かが破裂した。


私だけの事なら我慢も出来た。

しかし母の...お母様の侮辱だけは許せない。

お母様は誰よりも貴族としての誇りを持ち、最後まで気高く生きた。


私は怒りを堪え切れずシエルの顔に平手を放つ。

シエルは勢いよく倒れ、床に疼くまった。


「やめて...お姉様!」


シエルが叫ぶ。


周りの貴族もこちらの騒動に気づき、私たちに視線を向ける。

慌ててロベルト殿下もシエルに駆け寄る。


「なんて事をするんだエレノア!!」


それでも私の怒りは収まらない。


「ふざけるなッ!私の母を...」


「ひどい...お姉様。私の...私たちの結婚が許せないのね!でも私たちは愛し合っているの!」


私の言葉を遮るようにシエルが割り入る。


「僕たちの晴れの舞台になんてことを...シエルたっての願いで君を招待したんだぞ。本来ならシエルに酷い仕打ちをした君をこの場に呼ぶことはなかった。それなのに、なんて恩知らずな!」


ロベルト殿下は私に詰め寄り、怒りの言葉をかける。


「しかし殿下!シエルは私の母を...」


「言い訳はたくさんだ!僕は君を許せない!彼女は本日より皇太子妃だ。公爵家に正式に苦情を入れさせて頂く!」


そこにひとりの夫婦が現れる。


「お、お待ちになって下さい!皇太子殿下、我が娘の無礼をお許し下さい!」


私の父がそこにはいた。

父はロベルト殿下に懇願するように謝る。


「貴方!エレノアは皇太子妃に手を出し、皇太子殿下の怒りを買ったのですよ!」


そこには母...私ではなく、シエルの母が立っていた。


「申し訳ありません、殿下。この不届き者には相応の処罰を与えますので、どうかフォンブラウン家にはご容赦を...」


シエルの母親がロベルト殿下に頭を下げる。


「...それで、如何にして処断するつもりだ?」


ロベルト殿下は静かな、しかし怒りの籠った口調でシエルの母親に聞いた。


「この者を公爵家から追放致しますわ」


私はその言葉に驚き、身体が強張った。

慌てて私の父、フォンブラウン公爵が間に入る。


「な、なにを...何を言っておる!我々の娘を...」


「貴方はお黙りなさい!」


父はこの継母...この女に逆らえない。

この女の気迫に父は飲み込まれてしまっているのだ。


そして父の言葉を遮り、続けて私に冷たい視線を向ける。



「貴女は本日、この時をもって公爵家を追放します」


こうして私は婚約者に続き、故郷も失った...







あれから一晩が明けた。

私は必要最低限の荷物を纏めて自室の扉を開ける。


屋敷の従者やメイドたちが私に冷たい視線を送る。


皆、シエルと皇太子を祝福し、帝国の繁栄を願う者たちだ。


一方で私と言えば、今や世間では立派な悪女。

そしてその悪女は今日を持って貴族でなくなる。


「エ、エレノア!」


父が慌てて駆け寄ってきた。


「こんな事になってすまない...これを持って行きなさい...」


父はせめてもと思ったのか、少しばかりの路銀を私に渡して来た。

身一つで家を出る娘に渡すには少し心許ない額だが仕方ない。

シエルの母親に援助を禁じられているようだ。


「心配ありませんわお父様。エレノアは一人で生きていきます...お父様もどうかお元気で」


「う、う...」


父は最後に涙を流し私を見送る。

そしてシエルの母親...私の義母も見送りに来た。


「貴女のような、恥知らずは二度とこの家の敷居を跨がぬように」


義母は私に嫌悪と侮蔑の表情をする。

彼女は昔からそうだった。

きっと母のことも嫌いであり、その血引く私も疎ましいのだろう。


「はい...言われなくともそう致しますわ。お義母様」


私は強がりながらも義母に言う。

本当はとても悔しい...

大切な母との...家族との思い出が詰まったこの屋敷をこのような形で出ていくのは。


「では...さようなら...」


私はこの家に別れを告げた。





屋敷の敷地を出ようとすると、道に一台の馬車が止まっていた。


そこからはあのシエルが降りて出てきた...


「なんの用かしらシエル皇太子妃殿下...」


シエルは屈託のない笑顔を私に向ける。


「あははは、お姉様がどんな惨めな顔で屋敷を出てくるのか気になってね〜」


底抜けに明るい声でシエルは言う。


「このような家から出れて逆にせいせいしましたわ!」


言葉とは裏腹に私は今にでも泣きそうになる。


「強がっちゃって!おもしろーい」


「...」


此処で泣いたら負けだ。

せめてそこの誇りは失わぬよう私は堪える。 


「せいぜい平民の生活を楽しんでね!バイバーイ、お馬鹿さん」


シエルは私に手を振ると馬車に乗り込み去って行った...



ここまで読んで頂きありがとうございます。

続きが気になった方は是非次もよろしくお願いします!

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