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第5章 アイドル・ダンジョン 異常あり  作者: みーたんと忍者タナカーズ
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 そう言えば入学式のあと提出しておいたももち浜学園スクールアイドル同好会の申請書は通ったのかな。

全然先生たちから報告がないな。

ホウレンソウはどうなってるの?

報告、連絡、相談。

基本じゃないの。


小町はあたりを見渡しながら、誰も見てないのを確認して、職員室の数の子先生を訪ねた。

「ああ、ももち浜学園スクールアイドル同好会の話しか………………」と数の子先生は切れが悪い。

「そんなもんつくってもしょうがないだろう」

「どうしてダメなんですか?」

小町にしてみれば友達ができるかもしれない部活である。

本物のアイドルだし、主導権が握れるかもしれないのだ。

「だって何を目標に活動する気だ」

「それは………………」

「せいぜい文化祭で披露する程度だろう」

「まあ、そうですけど………………」

「学祭でフラッシュ暗算でも披露するなら、協力するが所詮歌を歌うだけだろう」

「できればいろんなアイドルグループをつくって歌合戦をしたいんですが……………………」

「歌合戦?」

「そうです、お客さんに投票をさせて、ナンバーワンスクールアイドルを決めたいんです」

「なるほど。で、アイドルグループは何組できそうなんだ」

「それはまだ……………………」

「だろうな。そもそも同好会だぞ。もし5人が入部したとしてもみんなソロだろう」

「そうですね……………………」

「それじゃあ盛りあがらないんじゃないか?」

「曲はどうする?カラオケじゃあー、ただのカラオケ大会だぞ」

「確かに……………………」

「うちには軽音楽部もあるし、わざわざスクールアイドルなんて仰々しいネーミングにする必要はないだろう」

「先生はアニメを知らないんですか?」

「アニメ?」

「そうです、ラブライブですよ」

「デブダイブ?そうか………………、そんなに卑下することじゃないぞ、渡辺。俺の尺度じゃ、お前はぽっちゃりだ」

「ラブですから、ラブライブ。スクールアイドルのアニメです」

「アニメ?アニメなら漫画部があるだろう」

「主旨が全然違います」

「うーん………………、分からんなあ………………。どこが違うんだ」

「もういいです」

「まあ、デブだからって気にするな、渡辺。お前は前から見るとデブだが、横から見ると意外とスリムだ。そう、ちょうどスルメみたいだぞ」と数の子先生は相変わらずトンチンカンなことを言っている。

やっぱりスクールアイドルは無理そうである。

そもそもアイドルが盛りあがってたら、小町がこんなに学校で孤立しているはずがないのだ。

ああ、やっぱ、芸能コースがあるような学校の方が良かったのかな?

なんか浮いちゃってるな。

一応進学校だし、芸術に理解があるわけじゃないんだよね。

学園長が私のファンなだけだしさ。

学園長はほとんど学校には出てこないし………………。

むしろ博多っ子乙女俱楽部のライブで会うことのほうが多いんだもん。

普通のおっさんだしさ。

アイドルのVチャットに普通に参加するけどさ。

そこで話すことと言えば普通の話しだし。

こっちから学校のことを質問するわけにもいかないしね。

ファンのおっさんとして接してるし。

CDを買ってくれるおじさんって、どこか「足長おじさん」なんだよね。

「足長おじさん」って知ってるかな?

映画でしか見たこと無いんだけどさ。

大金持ちのオジさんが孤児院の女の子を支援して、大学を卒業させてくれるの。

名前を隠してただお金だけを援助する。

まるでアイドルを応援する太いファンよね。

投げ銭をしまくって、いつか一流のアイドルになりますように支援する。

でも映画の中のおじさんはおじいさんなのよ。

そして映画の中ではやましい気持ちで資金援助してるんじゃ無いかって、お友達に責められるの。

でいったんは素っ気ない態度をとるんだけど、ここが映画なんだよね。

女の子がおじいさんのことが大好きで大好きでしょうがないわけ。

で、周りの応援もあって、女の子にプロポーズするんだよ。

やばくない。

ちょっとひくのよね。

まずおじいさんがお金にものを言わせて若い娘を手に入れる。

そこがひくわあ……………………。

で、女の子視点で考える。

お金を支援してくれたからと、自分を卑下して身を捧げるとしたら、ちょっと悲しい話しだし……………………。

かと言って大金持ちのおじいさんでしょ。

お金目当てで結婚しようとしてたとしてもひいちゃう。

映画ではその後が描かれてないんだけどさ、続編をつくるとしたらこうなるでしょうね。

普通はそんな結婚は若い女の子がすごく金使いが荒くって、お金を使いまくり、おじいさんの奥さんや本当の子供たちと遺産を巡って骨肉の争いみたいになるのよね。

老いらくの恋が過ぎたわねって身内から批判されまくるの。

そして遺産を巡って殺人事件が起きるみたいなバットエンド。

結局足長おじさんのせいでみんなが不幸になりましたってなるものよ。

金にものを言わせて自分のお気に入りの子を手に入れる足長おじさん。

でもアイドル活動をしてるとそんな足長おじさんが現れないかなって思ってしまうんだ。

いいじゃない、どうせお金があまってるんでしょ。

もう歳だし、お金の使い道も無いし、アイドルを応援して売れるならって投げ銭をしてる足長おじさん。

ああ、私はほしいわ、足長おじさん。

自分に冷たい奥さんや家族に遺産を残すくらいならってアイドルに金を使うみたいな足長おじさん大歓迎。

学園長は結構渋ちんなのよね。

お金持ってるくせに出し惜しみしてるんだからさ。

足長おじさんを見習いなよ。

私はいい物件だと思うのよ。

アイドル渡辺小町はもう売れっ子のレールに乗ってるんだからさ。

ほら、あとは燃料を補給するだけよ。

なんてったって@ジャムに出てるのよ。

まだステージは狭いけど、きっとストロベリーステージに立ってみせるわ。

ああ、ストロベリーステージってアイドルフェスのいちばん大きなステージのことよ。

いろんなアイドルグループがそのストロベリーステージにあがることを目標にしてるの。

で結局、そこに上がれる基準は売れてるかどうかなのよね。

だから足長おじさん、頑張って。

頑張って私にお金を使ってね。


「汚れちまった悲しみに……………………」と小町は中原中也の詩を読みあげる。

私ってすっかり汚れちまったわ。

心はもう真っ黒け。

せめて体だけはきれいでいたい。

だから結婚するまで守るつもりよ。

送信。


そもそもお前なんかに告白する男子はいねえよ。

お前なんか結婚できるか。


なんか今日は悪口が心地よい。

本当に私、汚れてしまったのかもしれないな……………………。

送信。


デブ専がいるらしいし、落ち込むなよな。

そのうちお前を好きな男が現れるかもな。


今日のみんなは少し優しい。

小町は少しだけ心が浄化された気がしていた。


まあ、白髪のはげたおじいさんか、歯の抜けたおっさんか、ハゲの親父だろうけどな。


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