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第5章 アイドル・ダンジョン 異常あり  作者: みーたんと忍者タナカーズ
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風花はチラリと小町を見つめる。

小町は外を見てニヤニヤしている。

視線の先を追いかけると、そこには小町のファンであろう男が警備員と揉めていた。

それを見て、風花はハッとなる。

学校にまで追っかけてくるなんて最低。

ファンだからって節度を持ってよ。

これだからアイドルって嫌い。

最悪、最低。

同じクラスにカギをしめた黒歴史の余韻が残ってる。

気にするなと思ってもクラスに来たら黒歴史を思い出すじゃない。

なんでいるのよと叫びたくなる。

私は思い出したくないのに………………。

もう忘れてしまいたいことなのに………………。

小町がいるせいで嫌なことを思い出すじゃないの!

間違っても私がアイドルだった話なんてしないでよ。

誰も私の黒歴史に気がついてないんだからね。

関東地方ならまだしも、福岡県での知名度は壊滅的だし、このクラスで私を知ってるのは多分小町くらいなんだから。

売れてなくて良かったって思えたことはそれだけよ。

私は普通の女子高生に戻るんだからね。

邪魔しないでよ。

小町がいきなり声をかけてきた時は驚いた。

アイドル渡辺小町と思ったからだ。

だからこそ私は全力でアイドル渡辺小町を無視し続けた。

黒歴史とさよならするためだ。

そしてしばらくすると小町は別人になった。

アイドルらしさは完全に消え失せた。

仲間はずれにしたわけじゃない。

そうしろと命じたわけでもない。

なのに勝手に小町が気配を消してくれた。

それは喜ばしいことなのだ。

地味で根暗な女の子。

きっとそれこそが本当の小町の姿なのだ。

明るくて気さくで輝いて見えるアイドル渡辺小町は、きっと彼女が演じている渡辺小町に違いないと、風花は感じている。

それはアイドル神無月風花と同じなのだ、きっと。

それでも仲良くする気はない。

売れっ子なんだし、それだけで十分幸せじゃない。

私とは同じじゃない。

それにオタクだった渡辺小町は、各地で行われる風花のイベントに必ず顔を出していた数少ない一人なのだ。

新しい道を歩み始めたばかりの風花にとって小町の存在は邪魔以外の何ものでもない。

いっそ消えてしまえばいい。

昔みたいに登校拒否で学校を休んでほしいと風花は心から思っていた。

仕事だと言い訳して学校に来なくなればいいのに………………。

とにかく私にかかわらないで………………。

あなたが黙ってたら誰にも知られないんだから………………。



小町はため息をついた。

一日何回ため息をついてるのだろう。

風ちゃんの顔を見てはトキメキ、そしてため息の繰り返し。

風ちゃんを中心に形成されていくキラキラ組に小町は入ってない。

小町はそれが寂しかった。

風ちゃんが輝いてるせいで私は独りぼっちだ。

これじゃ中学時代と同じだ。

風ちゃんの影に隠れて日が当たらない。

これでもアイドル業界では知名度はあるはずなのに………………。

これはもう風ちゃんのせいと疑ってもいいと思う。

いや、そう思いたい。

風ちゃんが私に冷たくするからだ。

無言の無視。

責任とりなさいよ。

責任とって私のファンになりなさいよ。


「この子、あなたの子供よ。小町って言うのよ、可愛いでしょ。フフフフフ」

「DNA鑑定してだって?」

「顔が似てないじゃないかって?」

「ブサイクすぎるって?」

「結婚しなくてもいいわよ。でもせめてこの子のファンでいてね」

「アイドルだから可愛いでしょ?」

 授業中の小町は風花の横顔を盗み見ながら、いろんな妄想をして過ごしていた。

バカバカバカ。

そんなに追い詰めたら、風ちゃん、私のこと嫌いになっちゃう。

「ごめんね、風ちゃん。この子は私一人で育てるわ。慰謝料もいらないし、養育費もいらないわ。だから小町のファンになって上げてね」

「あなたに似て、可愛いでしょ、フフフフフ」

ああ、私のバカバカバカ。お馬鹿さん。

風ちゃんのせいじゃないよ。

でも………………、風ちゃんがいなかったら、みんなだって私を祭り上げたと思わない。

少なくとも福岡県では有名人なんだからさ。


あっ!そろそろお昼のツイートしないと………………。

授業中でもツイートあげるのはアイドル渡辺小町のルーティン。

何あげよう。

福岡の話しでも書くか。


ローカルスターが他県にいくと全く誰からも認知されてないというけどさ。

ももち浜学園は福岡県にあるんだよ。

地元よ、地元。

でもまあ、あるっちゃあるのかなあ………………。

よその県の人は、福岡県民がみんなラーメン食べてるって印象あるけどさ。

実はうどん派が多いってこと、他県では知らないからさ。

もつ鍋、明太子だけが福岡名物だって思ってるでしょ。

でも私はどっちも苦手なんだよね。

私が好きなのはやっぱりいちごかな。

なによ、アイドルぶってなんかいないわよ。

いちごが好きなんだからしょうがないじゃないの。

あまおうってキュートな味がするでしょ。

送信。


何、何、ブスがいちごを好きになるなって………………。

いちごに失礼だろうって……………………。

いちごに謝って………………。

分かったわよ、いちごさん、いちごさん、私のようなブス王があまおうを好きになったりしてごめんなさい。

あまおうのイメージダウンになってすいませんでした。

ぶた王なら、もつ鍋食ってろ。

分かりました。

プロフィールの欄に好きな食べ物、あまおうを消しておきます。

もつ鍋が大好きです。

とんこつスープは一気飲みできます。

って何よ、このツイート。

ほんとに私のファンなの?

誉められて伸びる子?

全然誉めてないじゃないの。

うーん………………。

プク顔、載せちゃう。

送信。


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