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第5章 アイドル・ダンジョン 異常あり  作者: みーたんと忍者タナカーズ
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元々がアイドル好きだったわけじゃなく、詳しかったわけでもない風花にとって、それは耐えがたい真実だった。

風花が思い描くアイドル像とあまりにもかけ離れている。

そんなギャップに風花は戸惑った。

子供の頃見ていた歌番組にはアイドルがいっぱい出ていた気がする。

なのにいつしか歌番組からアイドルが消えてしまった。

いや、消えてしまった気がするのは気のせいなのかもしれない。

私がアイドルにと言われたときには当然テレビの歌番組を中心に仕事をするのだろうと思っていた。

CDを出し、歌番組に出て、コンサートをするのが私が目指すアイドルだと思ってた。

ところがいざアイドルになると、テレビに出ることはほとんど無く、コンサートと言うより、狭い狭い小さな部屋でライブをするのが日常茶飯事。

私が想像していた世界とはかけ離れていた。

地方に移動するのにもハイエースが当たり前。

電車すら夢のまた夢。

私が想像しているアイドルは新幹線や飛行機でテレビ局からテレビ局を渡り歩く姿。

タクシーを使い、ギリギリでスタジオ入り。

求められる仕事をただ熟すだけの日々に嫌気がさしてもじっと我慢の毎日。

そんなのが私が思い描くアイドル像。

ところがいざアイドルと言う肩書きをもらっても、仕事が全然埋まらない。

時にはデパートの片隅で素通りする客を相手に歌を歌い、競艇場や競輪場で歌ったりの日々。

子供の頃テレビなんかで聴いていた芸人さんのドサ回りと一緒じゃないの。

こんなはずじゃなかった。

風花のアイドルへの情熱はどんどん冷めていく。

アイドルが出ている番組はほとんど見なくなった。

ネットですらアイドルが出ているだけで見る気がしない。

そんな頃渡辺小町が売れっ子になり始めていた。

小町に関して思ってたことは売れているアイドルという印象だけである。

ほとんど接点もなく、雲の上の存在というより興味すらない人たち。

完全に洗脳から冷めていた。

元の自分に戻りたい。

元いた場所に帰りたい。

あの頃の自分は一体何だったんだろう。

アイドルになっていなければ、アイドルと言うだけできっと拒絶していたはずである。

それが中途半端にアイドルになったせいで、アイドルという狭いカテゴリーの中での価値観に自分が染まってしまっていた。

今、現実世界に戻ってみると、雲の上の存在に見えた渡辺小町が全然売れてる気がしない。

と言うのもテレビで渡辺小町を見ることがほとんどないからである。

アイドルの世界では有名人でも、こうやって外部から見てみると渡辺小町は全然売れてるタレントではないと気づかされる。

むしろ売れたいとがっついてる普通のタレントの一人だと気がついた。

これはアイドルを意識して避けているせいかとも思ったが、違うようである。

不思議なものでアイドルという存在の視点はまだ残っているのだ。

これはファッションにまったく興味が無かった頃には気がつかなかったものが、好きになるとやたらと目につくのと一緒だろう。

そのためたまに渡辺小町という文字を見つけると、目が行くのである。

でも実際アイドル時代に見えていた渡辺小町と、今のクラスメイトの渡辺小町はまったく違うものになっている。

そんな渡辺小町に自分はまったく歯がたたなかったのだ。

自分が目指していたものがどれほど低い目標だったのかと身にしみる。

私はもう二度と芸能界には戻らない。

普通に高校生活を送り、普通に大学に進学し、友達と笑いながら過ごしたい。

そんな渡辺小町がよりによって同じ学校の同じクラスに通ってる。

それだけで風花にとっては、渡辺小町を避けるのには十分な理由であった。


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