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第5章 アイドル・ダンジョン 異常あり  作者: みーたんと忍者タナカーズ
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「今、ブサイクアイドルで大ブレイク中の渡辺小町さんです」

久しぶりの福岡ローカルの番組である。

会議室を間借りしてるだけのスタジオ。

あるのは椅子だけ。

そんな番組があったのかと思うような知名度の低い番組である。

さすがにこれはももち浜学園の誰も聞いてないかもしれない。

「ブサイクだけどめげません」と小町は拳を握りしめる。

「可愛い」とアシスタント。

可愛いの意味が完全にズレている。

ブサイクにつける形容詞が可愛いのはずがない。

後で知ったのだが、ポットキャストの番組だったらしい。

ラジオだったのか。

ラジオじゃ伝わらないでしょうと小町は思った。

とは言え外部から発注される仕事に優劣をつけられるほど売れてるわけじゃない。

「前向きだけが私の自慢です」

「ほんと、初めて見たけど、可愛いですね」とアシスタント。

このカワイイはミニブタを見て、可愛いと言ってるカワイイだろうと小町は思った。

ブサイクが売りなのに、カワイイとは長所をつぶす言葉である。

東京のアイドルが福岡にきて、ライブの合間にラジオ番組を渡り歩くのを見に行ったものである。

引きこもりが町に出る唯一のきっかけはそのくらいしかなかった。

きっとこの番組はそんなマイナーな番組なのだろう。

「どんどんコメントくださいね。レスだって忘れませんよ」と小町は叫ぶ。

ブサイクって書いてる子には丁寧にレスをしてるわ。

調子に乗って、悪口書きまくる子、それっきり黙る子。

いろいろいるけどね。

そんな姿をきっと誰かが見てると信じてる。

「来週のゲストは大野城市のゆるキャラ、大野ジョーさんです」

ラジオと知って驚いたのは、来週のゲストがゆるキャラだと言うこと。

このポットキャストは動画で見れるのだろうか?

気になって小町は調べてみた。

しかしアーカイブには動画は一切あがってない。

ゆるキャラの内蔵だけが出てても誰も気がつかないではないか。

スリッパ履いて現れたひげ面のおっさんがゆるキャラだったりしてもおかしくない。

この不自然さ。

もしかしたらそれが狙いなのかもしれない。

実際自分がサイトを検索しているではないか。

気になるわあ……、この番組。

まんまと罠に掛かってしまった。

これは持論なんだけどさ、テレビ局に勤めるような人はみなオタクだと私は思っている。

いや、オタクの確率が多いはず。

だってミーハーじゃなきゃ、そもそもマスコミなんか選ばないでしょ。

そんなオタクのハートを掴むの。

そうしたら、AD、ディレクター、プロデューサーと出世して、オタクが私をキャスティングするに決まってる。

その中でも数少ないブサイク好き。

変わり者っているのよねえ……。

私のファンってみんなそうだからさあ……。

世の中に必ずいるの、ブス専って。

万人が好きな美人好きはこの際無視、無視よ。

万に一つのレアな人。

私はそこだけに向かってルアーを投げてる。

ヒットするかどうかは分からない。

でもブサイクができる努力って、そこが限界。

ブサイクだからって諦めるより、最低限のチャンスにかけてみる。

そして掴んだ、顔面凶器。

私をキャスティングする相手は、私にそれを求めてる。

今度の仕事もブサイクという肩書きがあったから。

ブサイクだから関門海峡を渡れたのよ。

体張ってるでしょ、風ちゃん。

私、これでも頑張ってるんだからね。


「やばすぎ都市伝説」に出てたでしょ。

見てくれたのかな……。

普通じゃない分、私、目立ってたでしょ。

最低限の爪痕は残してきたわ。

全国区よ、全国区。

国民的アイドル一歩手前よ。

いくらなんでも国民的アイドル直前の人気者である渡辺小町を知らないなんてことはあり得ない。

クラスメイトに渡辺小町がいたら、普通は誰かに自慢したいから仲良くしたいと思うでしょ。

ねえ、風ちゃん。

私は風ちゃんが好きで好きで風ちゃんの後ろで踊りたくてアイドルを目指したのに、風ちゃんが売れないんだもん。

私だけ売れてもしょうがないでしょ。

て言うか途中でやめちゃうなんて、私はどうしたらいいわけ?

目標が消えていなくなってしまったのよ。

あんなに好きだったのに………………。

目の前にいて、手が届く距離に風ちゃんがいるのに………………。

この距離感は遠すぎるよ。

あざかわさんより私は風ちゃんの自慢をしたいのに、もう自慢すらできないじゃない。

せめてモデルくらいしててよ。

まったく引退しちゃうなんて、寂しすぎるよ。

どんだけ追いかけてきたと思ってるの。

ずっとずっとずっとだよ。

風ちゃんロスが今もつづいてる。

せめて友達になれたなら、こんな気持ちにならずにすんでるはずなのに………………。

風ちゃん、単推しだったんだからね。

気持ちにまだ整理がつかないよおー……。

オタクの恋はしつこいんだよ。

一途なオタクは厄介なんだからね。

いなくなりました、他の人を好きになりますなんてできやしないんだから。

ああ、もう一度入学式からやり直したい。

あの頃の私はまだ風ちゃんのパーソナルスペースに踏み込んでいけた。

まして最初に声をかけたのは私の方だったんだし……。

もし中学時代、私が風ちゃんに声をかけられたら、それは舞い上がったと思うわ。

少なくとも私のこと覚えているんだぐらいには感じたと思う。

それが全くの無視。

まるでわざと私を避けてるのかと思うくらいの既読スルー。

目もあわない。

避けられてる?

なんで?

なんで、なんでなのよー。

いっぱい握手したじゃない。

いっぱいいっぱい笑顔もくれた。

お金が目当てだったの?

そんなわけない。

アイドルの金銭事情は分かってる。

私がいくらお金を積んでも、儲かるのは事務所だもんね。

歩合制で課金されるわけ無いんだし………………。

もおー……、分かってるかなあー……、私の気持ち……。

ずっとずっともやもやしてる。

もやもやが爆発しそう。

こんなに好きなのにぃー……。

背中しか見せてくれないんだから、嫌だ、もう……。

風ちゃんのことが好きなのに……。

バカバカバカ。


しばらくは不定期配信になると思います。

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