家庭教師・プロジェクト・考察
う、嘘だろ……家庭教師があの「梨田優佳だと……」
若本は驚きのあまり固まっていた。
梨田さん、めっちゃ可愛い。
なんだよあの私服。水色のカーディガンに白のシャツ、下はオレンジの長いスカート……これはいけない。中学生には刺激が強すぎる。オシャレすぎる。
すると、母から
「拓也、早速自分の部屋を案内しなさいね」
と言われたので、梨田を自分の部屋へと案内することにした。
自分の部屋のドアを開ける瞬間
「そ、そういえば……」
と、ここであることに気づく。
そう、俺の部屋はというと、女子が好まなそうなオタク部屋である。
冴えない彼女の育てかた、とらドラ!、やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。……お小遣いとお年玉を溜めて買った様々なB2タペストリーやフィギュアが飾ってある。
また、本棚には邪神ちゃんドロップキック全巻が置いてある……
萌えアニメのタペストリーやフィギュアだらけの俺の部屋を見て梨田さんがドン引きしないか、心配だった。
ああ、あの時、母さんが言ってたな……自分の部屋を掃除しておけと……やらかしたか……タペストリーあたりはしまうべきだったか……いや……また取り出すのもめんどくさいし、いいか。
若本は恐る恐るドアを開けて、
「お邪魔しまーす」
と梨田が小声で言いながら若本と一緒に若本の部屋へと入る。
「すみません、ちょっと散らかってますけど……」
と若本が申し訳なさそうに言い、梨田をチラッと見る。
梨田はきょろきょろと周りを見渡していた。萌えアニメのタペストリーやフィギュアを見るや、
「す……すごいオタクっぽい部屋だね……」
と梨田がすごい驚いた表情をして言った。真面目で野球一筋そうな若本の、意外な一面を見て驚いているようだった。
「な……なんかすみません……こんなキモオタ上等な部屋で……」
若本は申し訳なさそうに梨田に謝ると
「いいよ、大丈夫大丈夫。私、こういったアニメが嫌いなわけじゃないから……」
と梨田は言った後、
「それより、私的には教える生徒が若本くんだったことに驚いているよ」
「た、たしかにそっちの方が驚きですよね……まさか、俺の家庭教師が梨田さんだったとは……」
若本と梨田は今起きている状況に驚きを隠せないでいた。つい最近まで変なプロジェクトに巻き込まれ、バッテリーを組まされ、相手チームと戦った身だ。
地元栃木にある白足大学の学生だから、もしかすると、見かけることがあるかもしれんな……とは思っていたが、まさかこんな形で再開するとは……俺の家庭教師で訪問してくるとは、完全に予想外だ。
「さてと、早速、家庭教師の私が英語を教えますか!」
と梨田が英語を教える準備をし始めようとしたときに、若本が何かを思い出し、
「ゆうさん!ちょっと待ってください!」
と若本がストップをかけた。
「ど……どうしたの急に……」
と梨田が若本の急な発言に驚いていた。
「あのプロジェクト……のことなんですけど、ちょっとだけ話してもいいですか?」
「私は別に構わないわよ……ここで会ったのも何かの縁だし……相談できることがあったら何でも言って」
と梨田は笑顔で言い、若本がどういったことを話すのか疑問に思った。
「俺、あの後よくよく考えたんですけど……俺たちとの試合に敗れた阿部さんと板野さん……あの2人、もしかしたら死んでないかもしれないんです」
そう若本が言った時の梨田の顔は目を丸くしており、あまりの発言に驚きを隠せないでいた。