表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

約一年前に爪切りを卒業した話

作者: たなか

 世の中の人間は二つに大別することができます。爪を切る人間と爪を切らない人間です。私は一年程前、とある出会いから爪を切ることを卒業し、爪を切らない側の人間になりました。


 事の発端は私が5歳の頃、ピアノを習い始めたことまで遡ります。ピアノを弾くときには、邪魔にならないようある程度爪を短く切らなければなりません。爪を伸ばしたままでも弾けないこともないのですが、鍵盤にぶつかりカチカチとした音を立てずに、なおかつ正しいフォームで弾くためには、指の腹側から見て爪が見えないように切るしかないのです。


 当時は母親に爪を切ってもらっていたのですが、私は生まれつき皮膚にくっついているピンクの部分が長く、先端の白い部分を全て切っても、カチカチ音が消えませんでした。深爪を繰り返すうちに自然と短くなる(所謂チビ爪状態)そうなのですが、当然かなり痛いので毎回死に物狂いで逃げ回っていました。


 結局ピアノは飽きて1年ほどで辞めてしまったのですが、それ以来爪切りへの苦手意識は消えないままでした。自分でするようになっても割と伸ばし気味の状態で服に引っ掛けたり、肌を傷つけたりなど痛い目に遭いながら暮らしていました。テレビやネットでも爪の切り過ぎは良くないと言われているし、まあいいかと思っていたのですが……。


 ある時、ふとAmazonで爪やすりを眺めていて、ある一文に目が釘付けになりました。


「一度使用したら爪切りには戻れません」


 えっ……爪やすりって仕上げの道具ではないのですか!? てっきり爪切りを終えた後に角を丸くするためだけに使うと思っていましたが、もし、そんな夢のような爪やすりがあるのならば全てのストレスから卒業できるのでは……!!


 光の速さでポチった私は体育座りで商品が届くのを待ちました。


 そして実際に使ってみた結果……看板に偽りなく、驚くほどに早くシャリシャリと気持ちよく削れました。今まで短く切り揃えようとすると冷や汗をかきながら震える手で何度もチキンレースのようにパチンパチンと爪切りをしていたのが嘘のようです。


 一方向に削ること、爪の両端部分は割れないように慎重に削ることなど不器用な私にはスムーズに爪やするために少々コツを掴む必要がありましたが痛みなく、素早く爪の手入れを終えることができるのは至福の喜びでした。


 注文履歴を眺めている途中で爪やすりを見つけ、爪切りを卒業してからの一年を振り返りながら、ひょっとすると手に汗握りながらインポッシブルなミッションを繰り返している同志がいらっしゃるかもしれないと思い、エッセイを書くことにしました。どうか、あなたに素敵で快適な爪ライフが訪れんことを祈ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] わかります!! 私は近眼と老眼が進んで足の爪がよく見えなくなり、爪切りでうまく切れなくなったので金属研磨用のやすりで削り始めてから、快適すぎて爪切りはほとんどやってません。手指も削りだしたら…
[一言] 皆さんはご存じだろうか、あずきバーのモース硬度を。 何とロビンマスクの鎧と同等、ダイヤモンドに次ぐ硬度8なのである。 いくら工業用ダイヤモンドとはいえお高いんでしょう? であれば、あずきバー…
[良い点] 15年か20年くらい前、ダイヤモンド入り爪ヤスリを初めて使った時、従来の溝だけの爪ヤスリと全く違う感触に「考えた人天才!」と1人喝采をあげたことを思い出しました。 まあ、めんどくさがりな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ