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知らない男の子

語彙力壊滅です。




私は精一杯怖い顔をした。


男の子は私の顔を見てぽかんとしている。おそらく私の恐ろしい顔を見て驚いたのだろう。


どうだ恐れ入ったか超美形男め!!!


私は思わず心の中で男の子に褒めてるんだか貶しているんだか分からないことを叫んだ。


ついでに自分のことを褒め称える。


さすが私!!大女優も夢じゃないっ!!!


心の中で自分の演技力を自画自賛していると、突然男の子が声を上げて笑い出した。



「あははっ!!」


「???」



なんなんだこの男は、突然笑い出すなんて。


もしや…一度にとどまらず二度まで乙女を笑いおったな!許すまじ!



「なんで笑うのよ!か弱い乙女を笑うなんて!!」



信じられない!


一度目はまだ許せた。でも二度目まで許してやれるほど聖人君子では無い。


どうしてくれよう。



「だって、僕にそんなことをしたのは君が初めてなんだもの。面白いね、君。」



ムキーーーッ!!!!


こ、こいつッ!!


私はその場で地団駄を踏む。


何が面白いんだ!ひとつも面白くない!


そんな私に気づいていないかのように男の子は話しかけてきた。



「僕はセシル・ブランシュ、君の名前は?」



こいつ…いつか殺してやる。


最大限悪印象になるように睨みつけながら答えようとしたところで気づいた。


おそらく記憶喪失と言うもののたぐいだろうが、名前や今までどこにいたのかという記憶だけ綺麗に抜け落ちていて、いくら思い出そうとしても靄がかかったようになってしまい思い出すことが出来なかったのだ。


つまり名乗れる名前がない。


私はそのことを伝えた。



「自分の名前が分からないの。気づいたらここに居てモコと出会っただけ。」



今まで使っていた敬語はもうとった。


こんな失礼極まりない奴に使う敬語などない!


男の子…セシルは驚きに目を見開いている…かと思ったらパッと笑顔になって詰め寄ってきた。



「じゃあ、僕が決めてもいい?名前」



は?


なんて言ったこいつ?


私の名前を決めたい?


言っていることが理解できない。


何がどうなったらそういう事になるのか。思わずぽかんとしてしまった。


その間にもセシルはどんどん話を進めていく。



「身寄りが無いならいっそ僕と結婚という手も…ブツブツ」



ん?今なんだか聞き捨てならない言葉が聞こえたような。


うん、きっと気のせいだ。


気のせいでないと困る。


気のせいだよね!という私の考えは見事に打ち砕かれた。



「これから君の名前はラフィネで、僕と結婚して妻になって欲しい。」



「絶対に嫌」



我ながら素晴らしい即答だったと思う。


でも、こんなの考えるまでもない。


誰が好き好んでこんな失礼な奴と結婚なんてするのだ。ということを心の中で言っているとセシルが黒い微笑みを浮かべて話し出した。


嫌な予感しかしない。


もちろん予感は的中した。



「ラフィネはここがどこか分からないんだよね?」



「?、そうだけど」



何でそんなこと今更。


名前は決定なのね…。



「実はここ僕の家の庭なんだよね。つまりラフィネは不法侵入。」



「!!!」



まさか脅すつもりなのか。



「僕、結構いい所のお坊ちゃまだからラフィネは見つかったらどうなっちゃうんだろうね?」



「?!!」



私は一気に青ざめた。


まずい……これは命の危険が。



「衛兵っ!!!って呼んだらすぐに来るんだけどなー。」


こいつ…いつか絶対に呪ってやる。


私は逃げ道を潰され苦渋の選択をした。


乙女の夢である結婚をこんな奴とするなんて…


目から水が…。



「ゔぅ、わかった。結婚して、も、い、いけど私はセシルのこと一生恨むわ。」



「えっほんと?やったーー!!!」



こいつ話聞いてた?私恨むって言ったよね?



「後から嫌だとか言っても知らないからね?」



自分で脅しておいてなんなんだ。



「女に二言は無いの!嫌だと言ってもどうせ聞かないでし…。」



「ほんと!?僕この国の王様だからラフィネは王妃様になるって言ったら逃げちゃうと思ったんだけど、女に二言は無いんだよね?あぁ良かったー!」



今度こそ開いた口が塞がらなかった。この際話を最後まで聞けと言うのは置いておこう。


セシルが王様?


私が…王妃?


バタンっ!


この時私は初めて人間は理解出来る範囲を大幅に上回ってしまうような状況に陥ると気絶するのだということを知った。





ーーーーー




目覚めると、ふかふかなベッドに寝ていた。


とても不思議な夢を見ていた気がする。


失礼極まりないセシルという男の子が王様で私が王妃様になりそうになる夢。


…夢でよかった。


王妃様なんて絶対無理だも……



「やっと起きた?」



…夢じゃなかった。


知ってたけどさ!希望ぐらい持ちたいじゃない!


無駄に豪華な部屋に私が今着ている服はとっても肌触りがいい。絶対に高級品だろう。


ここがお城なのは何となく想像がつく。


本当に……


声の主が何も言わない私に近寄って来る。



「大丈夫?特に頭とか。」



カッチーン!


は?…こいつ絶対に呪う。



「絶対いつか呪ってやる。」



心の中で言ったはずが声として出てしまった。




頑張れラフィネ!!!

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