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89話 来訪者

その翌日、アル達と"烈火"の面々は【空間転移(テレポート)】によりアルテミスへと戻ってきていた。


アルとシオン、ガルムの三人、そして"烈火"の四人、加えてエルサ。計七人と一匹だ。こんなにも大人数を一度に転移させた事は無かったので、二度ほど間の街を中継して魔力補給したが、それでも多少の気分不良を感じるほどには魔力を持っていかれた。



セシリアさんは"竜の翼"亭の一部屋を長期間貸してもらう事として、そこでイザベラさんが面倒を看る事になった。セシリアさんにとってもアルテミスの雰囲気が回復に良いかもしれないとの事でだ。


ちなみにエルサはアルテミスで売っている錬金術の素材に興味があるらしく、今日一日は観光して明日帰ると言い出した。エルサ御指名のリアムさんとスキップで街に繰り出して行った。



アルの気分も午後からは多少落ち着いたので、"古の咆哮(エンシェント・ロア)"は冒険者ギルドへと向かった。


受付にはいつも通りミアさんがいて、一際(ひときわ)行列を作っていた。

ミアさんの顔を見ると幾分かほっとして、気分も良くなった気がする。


彼女がいつも通り"専属対応中"の看板を取り出すと、ギルド内が大きくざわついた。


「ミア様の専属パーティって確か…」

「おい見ろよ、"古の咆哮(エンシェント・ロア)"だ…!」

「噂の"竜殺し"か?」

竜人(ドラゴニュート)なんて初めて見たぜ。おっかねぇ」

「なあオイ、"寄生"パーティだぜ」

「お前この前の張り紙見てねぇのか?半年前に死んだって言うテンゴールのダンジョンをあいつらが甦らせたとか…」

「バカ野郎。ガセだよ、んなもん。それなら今こんな所にいるはずねぇだろ?速すぎだろ、飛んで来たってのか?」



いつも通りザワザワと騒がしくなるギルド内で、注目されたり中傷を受けたり等はかなり慣れてきた。しかし、今回はそれよりもさらに一段階、面倒な事になった。



「オイオイオイオイ。てめえが"竜殺し"か?」


挑発的な言葉と共にアル達の前に大男が立ちはだかる。

ガルムと同じくらいの身長に加えて、筋骨隆々の巨漢だった。この寒いのにわざわざタンクトップ一枚。防具はわざわざ脱いだのだろうか?それとも、もともと着ないのか?


「おぅ、まじかよ!竜人(ドラゴニュート)が竜を殺ったってのかよ!?こりゃ面白れぇ!まぁそんな事もあるよなぁ!?竜ってのは怒ると見境が無くなるって話じゃねぇか!おーい!全員気を付けろよ!?いきなりケツから火を吹くかも知れねぇぞ!?」


男はガルムをネタに、大声で周りの笑いを誘っていた。



「手前は関わっていない。竜を倒したのはこっちのアルだ。ちなみに尻から火は出ない。口からだ」


別に大声を出した訳でもないガルムだが、その声はギルドの端まで響き渡っただろう。大笑いをしていたその巨漢ですら言葉を途切れさせてしまう。


しかし引っ込みがつかなくなったのか、その男のターゲットはアルへと向いた。


「あァ!?こっちの僕ちゃんが倒したってのかよ!?なんだ?竜人のユーモアは分かりにくいな!?」



アルの頭の上に手が乗せられる。

我慢の限界だった。


その太い腕をがっちりと掴み、捻る。


「げえあああぁぁぁあ!!??」


男の肩から、ごきっと鈍い音がする。おそらく上腕骨が折れた。いや、肩が外れただけかもしれないがどっちでもいい。アルはさほど気にならなかった。


驚くほど冷静な自分にアル自身も少し驚くが、それよりも怒りが勝っているのだと分かった。



「ガルムに無礼な事を言うのは絶対に許さない。早く謝ってください」


「ぐううぅぅ…わ悪かった!悪かったよ!早く放してくれぇ!」



手を放すと、大男は腕を押さえてうずくまる。その姿はなんだか先程よりも一回り小さく見えた。

アルはエルサ製の回復薬を取り出すと男の目の前に置き、最後に男を一瞥してから、ミアさんの所に向かった。


「アル、あやつのレベルは26じゃ。初級ダンジョンしかないここでは天狗になっていただけであろう。あそこまでする必要はない」


「悪いのはあいつだよ。それにアルテミスであれだけやればそこそこ噂が立つでしょ。好き勝手言われるのも、もううんざりだよ」


「無用なトラブルを巻き込みかねんと言うておるのじゃ」


「分かったよ。ごめんって。もうしない」




個人相談室に入ると、ミアさんが先に入ってお茶を出してくれていた。


「え?何?何かあった?」


ミアさんはどうやら先に部屋に入っていて、先程の騒動は見ていなかった様だ。


「いえ、少し絡まれただけですよ」


努めて何も無かった様な声を出す。

肩の上から(とが)める様な目線がびしびしと伝わってくるが、見ないようにした。




「セシリアの事聞いたよ。大変だったね」


全員がソファに座ると、ミアさんが選んだ最初の話題はそれだった。

それはそうだろう。ミアさん自身も、セシリアさんとは友人だと聞いている。知らせを受けてどれだけ気に病んだことだろうか。



「えぇ。とりあえず今の様子は落ち着いていますので、ミアさんも安心してください」


「ありがとう。あぁ、そう言えば聞いたよ?テンゴールのダンジョンを甦らせたそうじゃない?また報告書が全ギルドに通達されて、ここのギルドスタッフも、"また古の咆哮(エンシェント・ロア)かっ!"って皆噂してたよ?」


「えっ、あぁまぁ………。僕が何かしたと言うか、なりゆきでと言うか、シオンにさせられたと言うか…。何にせよテンゴールの人達が困ってたので、力になれて良かったです」


「ふふん?いつまで経っても謙虚なのね?まぁそこが好きなんだけどね。それで?これからどうする?"烈火"の皆と動くの?」


「え?今…あの、す、す痛っ!シオンやめてってば!………すみません、いえ、僕もリアムさん達に協力したかったんですが、シオン達に止められまして…。リアムさん達はミアさんの目を覚ますためにユグドの葉を探しに行きますが、僕達はまだお手伝いできるレベルにないので今まで通りレベルアップに(いそ)しもうかと思ってます」


本当は彼等についていきたい。

積極的にユグドの葉を探したい。こうしている間にも、セシリアさんの身体は弱っている。その分、冒険者として復帰するための期間も延びていっていると言う事だ。

だがシオンとガルムに(さと)されてしまっては、一応は納得するしかない。


しかし内心では、アルは微塵も諦めていなかった。

ユグドの葉がどこにあるか分からないと言う事は、逆に考えればどこにあっても不思議ではないと言う事だと思う。つまり、次のレベリングで向かった先に、何か情報がある可能性もあると言う事だ。

きっとシオンにはこんな魂胆はバレているだろうが、別に悪いことではない。



「ところでミア。風雷石が手に入る場所を知らぬか?」


そこでシオンが唐突にそう言い出した。

ミアさんもいきなりで驚いている。風雷石?アルは聞いたことがない。


「風雷石?って何?」


「聞いたことがある。魔力を宿した魔石の事だな?推測だが、シオン自身が元の姿に戻るのに必要なのではないか?」


「御名答じゃ。良い勘しとるのガルム。クープで無理をした時に失った魔力はほぼ戻ったと言ってもよい。あとはきっかけが必要なのじゃ。妾が元の姿で戦いに参加出来れば、妾が倒した魔物の経験値はアルの経験値と合算される。つまりより早くレベルアップできると言う訳じゃ」


「え!?シオンが戻ってくるって事!?それなら最優先で探しに行こうよ!」


それはここ数日の暗い雰囲気を吹き飛ばす朗報だった。

経験値は別にしても、シオンとまた一緒に戦える。それだけで、よりパーティとして強くなれる。それは間違いない。そして何より、心が踊った。


しかしそこからの流れはシオンも予想してはいなかっただろう。

ミアさんは風雷石の場所を知っていた。問題はその場所だった。



「風雷石?の事ならリアムさんに聞いた方が良いんじゃない?」


「む?何故(なにゆえ)、あのエルフなのじゃ?」


「だって風雷石って言ったら、エルフの里に奉納されてる石じゃなかったかしら?」


「な、なんじゃと?む?まさか………むぅぅうう………」


シオンが曖昧な声を出す。何故ならば、エルフの里は()しくも、リアムさん達がユグドの葉を探すために次に向かおうとしている目的地だったのだ。

シオンはリアムさん達と別行動を取らせたがっている節があるため、それは芳しくない知らせだったのだろう。


ミアさんからその他に目的地にとして提案されたのは、サラン魔法王国の北にある魔術都市、ユノドラだ。魔術の向上を目的とした魔法使いや冒険者が訪れ、魔術都市に隣接したダンジョンで日々研鑽を重ねているらしい。


ダンジョンのレベルは25~40と幅広く、階層は30層もある巨大なダンジョンだ。アル達ならばクープまで【空間転移(テレポート)】で飛んでから馬車で行けば五日程で着くとか。


アルとガルムの意見ではシオンが元に戻る事が先決だと言う方向で一致しているのだが、シオンは渋っていた。









「うるさいうるさい!とにかくこの話は一度宿へ持って帰るのじゃ!リアム達も出発はまだであろう!それならば時間はある!」


シオンはまるで子供のように駄々をこねて見せた。

アルとガルムに困ったような目で見られたとしても、このままエルフの里に行くには不安な事があった。


結局その場では決定に至らせず、強引に一度話を持ち帰ることにした。


単純にエルフの里に行きたくないと言う理由もあるし、このままリアム達と同行するのも気に食わなかった。


シオンは、セシリアの事があってからアルの様子が少し変わった様に感じていた。強くなることを焦っている様な気がするのだ。


先程のギルド内の一件にしてもそうだ。

強さにこだわりすぎると、人は視野が狭くなり、傲慢になり、無謀な事もする。


アルにはそんな風になって欲しく無かった。

もっと彼らしく、今のままの強さを追い求めて欲しい。



しかしこれもある程度は覚悟していたはずだった。

数日前。セシリアと再開した時。彼女が眠る部屋の扉をアルが開ける時に。


あの時、シオンには部屋に入る前から分かっていた。

彼女の普段と違う匂いから、彼女が自らの身体を動かせなくなっている事は容易に想像できていた。そんな彼女の姿を見てアルが今まで通りでいられる事などあり得ない。しかし、それでもアルを止めることは出来なかったのだ。


そんな不安もあって、尚更元の姿には戻っておきたい。

しかしリアム達に同行するのもいかがなものかと思う。シオンは頭を抱えていた。



「エルフの里に行っておくべきだよシオン。リアムさんと一緒の方が絶対に入れてもらいやすいって」


「入れてもらいやすいからと言って、風雷石を使わせてくれるとは限らんであろう?それこそ強行手段となれば"烈火"に迷惑をかけるのじゃぞ?」


「う、それはそうだけど…」


「それに冬のブルドー帝国がどんな寒さか知らんであろう。お主等の想像を絶するぞ?」


「寒いと言うのを忘れていた!それは少し困った事だな………。他の場所に風雷石を探しに行くと言うのはどうだろうか?」


「それも考慮に入れなければなるまいの」




そんな曖昧な答えをしながら、シオンは完璧な風雷石がエルフの里以外には無いだろう事も、予想がついていた。



三人は冒険者ギルドから直接、ガブリエルの防具店にやって来た。

目的はアルとシオン二人の防具の更新だ。


「お久し振りです。"古の咆哮(エンシェント・ロア)"の皆様方。御依頼の品、用意できております」


「ガブリエルさん、そんなにかしこまらなくても………」


「そうですか?いえ、活躍の噂を耳にしておりますと、遠い存在の様に思ってしまいましてね」


「僕達の活躍は全てガブリエルさんの所の防具があってこそです」


「そう言ってもらえると防具屋冥利に尽きますよ」


「ええから早う出せ」


「そうでしたね。えーっと、………こちらです」



ガブリエルが取り出したのは、今アルが装備している物と良く似ているハーフアーマー。胸や肩、腕、脛など部分的に硬い素材を使っている、機動性重視の防具。


「今の物とほとんど形は同じですが、魔桜石を使っている分、今の物より防御性能は上がります。レベル50の魔物が相手でも大丈夫です。また魔桜石の特性としてスキル【軽量化】が付与されているので、使用感も今までと同じだとは思います。あと、こちらは一緒に御注文いただきました、シオンさんの分です」


アルに手渡されたのは同じ防具だが、一回り小さい物。

シオンが人の姿に戻った時に、使えるようにと言う事でだ。



金額は両方で五十万ギル。

今回は素材を持ち込んだので、費用が抑えられた。

この魔桜石は、メタルギガースが使っていた棍棒が素材となっている。ダンジョンから逃げ帰る時に、運良くまだ取り込まれていなかったので持って帰ったのだ。



ここ数ヵ月はあまり収入が無かったが、クリスタルゴーレムの素材でガルムと半々にしてもそれくらい入ったのでトントンだ。貯金は残り九百万ギルといった所。

今のところお金が必要な予定もないので問題はない。




ガブリエルに礼を言って、隣のマルコムの武器屋で修理に出していた武器を受けとってから宿へと向かう。



「装備も整ったし、シオンが早く防具を使えるようになるためにも、エルフの里が先決だね?」


そのアピールを無視する様に、シオンはそっぽを向く。

子狐の姿では人型の時とは違って、冬の風も冷涼で気持ちいいくらいだ。アルテミスは今日も、シオンの憂鬱などとは関係なく騒がしい。それは以前召喚された時からも変わっていない。



同じ喧騒に、同じ風、同じ匂いも………。


「………む?」


「どうしたの?シオン?」


まさか…な。

微かに、風に乗って漂ってきた、あの時と同じ匂い。

あの人と同じ香り。


その時、シオンは見た。遠目に、建物に隠れながらこちらを見ている人影を。

シオンが気付いた事を察知したのか、その人影はすぐに隠れてしまった。しかし身を(ひるがえ)した時に、流れる様な黒髪がなびいたのをシオンは確かに見た。


自身に【風鎧(ブースト)Lv2】を付与すると、アルの頭をジャンプ台に最寄りの建物へと跳び移った。そして屋根伝いに全力疾走で()()へと向かう。


まさか………そんなはずは……………!



見間違いであって欲しいと願いながらその場に到着する。

人影が隠れていたそこは暗い路地だった。既に誰もいない。

見間違いか…?


シオンは路地に飛び降りると、未だそこに取り残された痕跡を確かに感じ取った。残り香だ。


いや、間違いない。


この死怨(しおん)の花の香り。


遠い記憶が呼び覚まされる。





「お主なのか…………………アリア」











「シオン!どこ行くの!?」


アルが大声で叫ぶが、シオンは全く聞こえていないようで、建物の屋根を走って行ってしまった。追いかけようにも大通りは人混みがすごく、到底走って追い掛けられない。


「すみません…!通ります!すみません、ガルム!いる!?」


「あぁ!だが、もう追い付けない!シオンなら大丈夫だろう!」


アルは仕方なく足を止めた。

シオンがあれだけ焦っている姿は初めて見た。嫌な予感がする。




「やーっと見つけたよ!探したんだからー!」



喧騒の中でそんな声がした。

しかしその言葉が、まさかこの状況でアルに向けられている物だとは思いもよら無かった。


「おーい!アルフォンス君ー?」


「…え?」


その声で初めてアルは自分が呼ばれていた事に気が付いた。

振り返って辺りを見渡すが、ぱっと見て知り合いはいない…。


「嫌だなぁ。僕の事忘れちゃったの?」


アルの視線を捉える様に陽気に手を振っていたのは、痩せ細った中年の男だ。しかし彼の言葉遣いは外見に対して強い違和感を覚える。


「だ、誰ですか?」


「あれ?ほんとに忘れちゃってるよ。悲しいなぁ、…これでどう?」


アルは驚愕した。

その男は左顔面をアル達にしか見えないように隠した。そして次の瞬間には、左顔面だけが青白く、若返った様に変化したのだ。



「なんでお前がここに………リヴァル!」


そいつはロウブの森でアルと対峙した魔人だった。

秘密組織"適合者(サバイバー)"が獄炎石を手に入れるために放った刺客だ。

アルは武器屋で修理したばかりの双剣を抜きかけるが、すんでの所で止めた。


「うーん賢明だね、止めておいた方がいいよ。僕は別にここで殺り合っても構わないんだけど、この通りを歩いている人達を巻き込まない保証はないからね」


リヴァルは陽気に、そしてその一言でさりげなく、この場にいる大勢の人達を人質に取った。

すぐそばを親子連れが歩くのを、歯がゆい気持ちで見送る。


「何が望みなんですか…?」


「あっはっはっは!望みはね。君だよ。アルフォンス君。僕達はね。君をスカウトしに来たんだ。いや、スカウトは少し違うか。君には僕達の組織を率いてもらいたいと思ってるからね」


アルはリヴァルの言っている意味がさっぱり分からなかった。


………率いるだって?

アルが?自身の経験値のためならば殺人やテロも厭わないような組織を?

話が飛びすぎて、アルも笑えてきた。


「面白い冗談ですね。何とかって言う組織は冗談のセンスも必要なんですか?それなら僕には素質はありませんよ」


「…冗談か。ぼくも"プレデター"に言われた時はそう思ったよ。しかし聞いたよ?君は人を殺める事での恩恵を誰よりも受けているそうじゃないか?」


「なんの事ですか?」


アルはまたしても彼が何を言っているのか分からなかった。

今までにアルが人を殺めたのは、初めて盗賊に襲われた時だ。きっとその分の経験値は入っていたのだろうが、それは他の人と同じだ。誰よりもとは言えない。


「君は殺した対象のスキルを奪えるそうじゃないか?」


その言葉にアルは絶句する。

何故、こいつがそれを知っているのか?

誰かが話した………?いや、今はそれはどうでもいい。リヴァルと、リヴァルの組織にそれが知られてしまっているという事が問題だ。


「人を殺す度に、新たなスキルを得られるんだろ?さぞ快感だろうね?人から"命"と。さらにはスキルを奪い取れるなんてさ………?」


「なんの事か分からないですね」


「おやおや、とぼけても無駄だよ。君の能力については、ある書物があってね?僕も拝見したよ。"魔物からのスキル吸収は種族に対して一度のみ。しかし人族とそれに類するものに対してはその限りではない"とか書いてあったかな?つまり殺人ではスキルも際限なく手に入るわけだ。そりゃ………人も殺したくなるよね?」



それは、アルの知らない事実だった。

スキルの【吸収(ドレイン)】は、魔物の種類に対して一度のみ。しかし人に対しては何度でも可能?そんな話はシオンからも一度も聞いたことはない。


あのシオンですら知らない?いや、そうとは思えない。シオンはあえてアルに言っていなかったのだ。

そしてリヴァルが見たと言う書物について。それの存在自体は以前に聞いたことがある。リアムさんが言っていた。エルフの里にあったが、ナディア教国の侵攻で失われたと。


「おやおや、知らないことが沢山あるみたいだね?君の友達の子狐ちゃんは教えてくれなかったの?まぁそれは良いか。さて、今回の僕の目的は果たしたから、帰るとするよ。別に君を拉致しようと思ってきた訳じゃないんだ。君が自主的に僕達を率いてくれないと意味ないからね?そのための準備は他にいろいろとしてるから。楽しみにしててね」



リヴァルは言いたいことだけ言って人混みの中に消えていった。

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