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79話 テンゴールの現状

四連休なので予定外up!

閲覧数伸びるといいな!

「ふぅ、やっと帰ってきたね~。もうこんな時間だよ」


「お主が魔力を使い果たしたせいで、【空間転移(テレポート)】も使えず歩いて帰ってくるはめになったからの」


「う、ごめんって。ついついやり過ぎちゃって。ごめんねガルム」


「なに!?何故ガルムにだけ謝るのじゃ!?」


「だってシオンは僕の頭の上にいるだけで歩いてないじゃん」


「うるさいぞ!アルのくせに生意気な!」


「いでっ!」


「手前の事は気にするなアル。手前も今日は良い体験ができて、少し風に当たりながら歩かねば、興奮が冷めぬ所だったのだ」


「いや、ガルム、フォロー上手すぎ」



三人がダンジョンの外に出た時には、既に陽が落ちかけていた。そしてそこから歩いて帰ってきたら、すっかり暗くなってしまったのだ。



そして結局、今日は合計四回ものロックリザードの集団とやり合ったおかげで、アルの魔力も体力も気力さえすっからかんだ。久々にこんなに疲れるまで魔物と対峙して、疲労困憊ながらも達成感を感じていた。


「さっさと帰って寝るとするのじゃ」


「だからシオンは何もしてないでしょ?」


「何!?常にお主の戦闘を間近で見届け続けた妾にかける言葉がそれか!?」


「ごめんごめん。確かに言い過ぎたよ」



そんな軽口を叩き合いながら、三人は冒険者ギルドまでたどり着いた。そして中に入ると、昼間とは違って何組かの冒険者達が酒盛りをしていた。中には何やら見覚えのある面子(メンツ)もいた。



「あ!さっきの!」


思わず叫んでしまった。

その四人組は、今日ロックリザードの集団を(なす)り付けられた人達だった。ロックリザードを一匹ずつ担いで逃げていったパーティだ。


「おぉ!お前ら今日出会ったな!まさか無事だったか!」


あれを出会ったと呼ぶには少々腑に落ちない所があるが、ぐっと言葉を飲み込んで笑顔を返す。

わざわざ席を立って近づいてきたのは、四人の中でも一際体格の良い中年の冒険者だ。背丈はアルよりかなり高く、体重は三倍はありそうだ。ぼさぼさの髪の毛と立派な顎髭はまるでドワーフの様に顔を埋め尽くしている。その隙間から覗く目は意外と(つぶ)らで、何となく憎めない所があった。



「貴方がたも無事だったんですね。結局ロックリザードは連れて帰れたんですか?」



「あぁ!俺達は逃げ足だけは早ぇからな!お前達も悪かったな、巻き込んで。俺等以外にまだここのダンジョンに入ってくる奴がまだいるとは思わなくてな。俺の名前はアントンだ。そこに座ってるのが同じパーティのギルバートとジェイク、ディエゴ。パーティ名は"鉄の鎧(アイアン・アーマー)"だ。ランクはCランクだ」

「よろしくな」

「さっきは悪かったな!」

「ここの事なら何でも聞きな!」




髭についたエールの水滴を撒き散らしながら、アントンは豪快に笑った。他の三人も杯を持ち上げながら声をかけてくれる。

アルはアントンと握手を交わしながら、何だか憎めない人達だと思った。


「いえ、お互い無事で何よりです。僕はアルフォンス。アルで良いです。こっちがガルム。それでこいつがシオンです。"古の咆哮(エンシェント・ロア)"と言うパーティで活動してます」



アルの自己紹介に、アントンさんの円らな目がさらにクリッと丸くなる。アントンさんの後ろでは残りの三人が何やら額を合わせて囁き出した。



「お前ぇら、もしかして、サラン魔法王国のクープから来たのかっ!?」


「え?えぇ、まぁ。何でご存知なんですか?」


「お前ぇら!まさか"竜殺し"かっ!?」


その言葉に飛び上がった。

声が異常にでかかったのもそうだが、まさかこんな離れた土地で、アル達の事を知ってる人と出くわすとは思ってもみなかったからだ。


「ぼ、僕達の事、何で知ってるんですか?」


そのアルの言葉を聞いて、アントンはきょとんとした後、思い切り笑い飛ばした。


「ガッハッハッハ!馬鹿言えお前ぇ!自分等がどれだけの事をしちまったのか、少しは自覚した方が良いってもんだ!オイ!お前ぇら聞いたか!?こいつ等、噂のスーパールーキーだってよ!」


「スーパールーキー…?」


「お前ぇらの呼び名はもう沢山あるみたいだぜぇ?"古の咆哮(エンシェント・ロア)"以外にな、"竜殺し"、"スーパールーキー"、"詐欺師"、"寄生ルーキー"なんかってな?まぁ、中傷のやつは気にすんな!最初の内はいくらかは叩かれるもんなんだよ!」


「はぁ………」


「この歳で新人扱いされるとは興味深いな」


「つまらん"やっかみ"が増えそうじゃの…」


ガルム、気になったのはそこなんだ………。

しかしどうやら、アル達の話は冒険者ギルドから多少は広まっているらしい。なんだか少しだけ有名人になった様な気がしてむず痒いが、喜んでばかりもいられない。シオンの言う通り、今後はその内容を曲げて解釈した人達から何をされるか分かったもんじゃない。気を付けないと。



「喋る魔物を連れてるって事は、お前ぇら本物なんだな…」

「なぁ!?竜ってどのくらいでかかったんだ!?」

「俺の知り合いに赤毒病の奴がいるんだ。治療薬作ってるんだろ?どこまで進んでるんだ?」


残りの三人が立ち上がり詰め寄って来ようとした所で、アル達の前に立ちはだかったのはアントンさんだった。

目の前に立たれるとアルはすっぽりと隠されてしまって何も見えなくなってしまう。


「よさねぇかお前ぇら。困らせんじゃねぇ。ほーら、座って飲んでろよ。

………悪ぃな。最近じゃ俺ら以外にこの街に冒険者なんていなくてな。こいつらも話題に餓えてんだよ。あんたらはまさに"飢えた竜(ドラゴン)に肉"って奴だ」


「い、いぇ。今日は少し疲れてるので、また日を改めてもらえれば………」


「あぁ、そうか?ありがとうな。ただ、その言いぐさだと、明日以降もここでダンジョンに潜るのか?ドロップアイテムなんか出ねぇだろ?」


「うむ、やはりドロップアイテムが落ちないのは周知の事実か。一体いつからじゃ?何が起こったのじゃ?」


「さぁな。こっちが聞きてぇくれぇだ。まぁどうしても知りてぇなら受付のアナに聞きな」



そう言われて受付をチラリと見ると、たまたまなのか、こちらを見ていたアナさんと目が合う。彼女はいきなり目が合った事でビックリして、少し離れたここからでも分かるくらいに跳び上がった。


「ありがとうございます。明日以降もここにいるかどうかはまだ分かりませんが、もしダンジョンに行く時にはアントンさん達の邪魔をしない様に、違う入り口を使うようにしますね」


「ガッハッハッハ。そりゃ逆だ。普通は魔物引き連れて逃げ回る俺等みたいな奴の方が迷惑なんだよ。まぁでもそうだな"十五番"はもうやめときな。もしも手っ取り早く深く潜りたいなら"三番"がおすすめだ。この街から真っ直ぐ北に行った所にある入り口だ」


「わざわざ丁寧にすまんの」


「感謝する」



やっぱりアントンさんは好い人そうだった。パーティメンバーの三人も、悪い人達では無さそうだ。折角なのでまた話してみよう。


しかし彼等の口ぶりでいろいろ気になることもあった。だがそれはアナさんに聞いた方が詳しく教えてもらえるだろう。


そう思って、アル達はカウンターにいるアナさんに声をかけた。



「おい小娘」


「ちょっとシオン?何で攻撃モード?」


「狐が喋ったのですます!?まさか魔物!?」


「え?今さらですか!?あぁ、そう言えば午前中来たときにはシオン一言も喋らなかったんだっけ?大丈夫ですアナさん。この狐は魔物ですけど、僕達の仲間ですから。噛みついたりしません」


「必ずしもそうとは限らんがな」


「シオンは黙ってて!」


アナさんはすっかり萎縮してしまった様だ。

ガルムにはほとんど無反応だったのに、ミニシオンにビビるとは………。



「しかしアル。考えてもみろ。午前中この娘は何と言ったか覚えておるか?"ドロップしたものがあればギルドまで報告して欲しい"。そう言ったのじゃ。つまりこやつはここのダンジョンで、魔物からアイテムがドロップしないと言う事実をあえて妾達に黙っておったのじゃ。内心では妾達を嘲笑っていたに違いないぞ」


「そ、そんな事はないのです!ここのダンジョンからアイテムがドロップしなくなったのはもう数ヵ月前で、既に噂はかなり広まっているのですます!だからてっきり御存知なのかと思ったのです!」


「それも本当かどうか怪しいものじゃ。こんな()()をして、口だけは達者そうじゃからの」


「シオンがそれを言う…?」


「アナ殿、ドロップアイテムについてなのだが、手前達も今日ロックリザードだけで三百は狩ったはずだ。それでも一つもアイテムは落ちなかった。いつからこんな状態が続いてるのだろうか?」


「三百!?まさかなのです…!」


「嘘ではない。手前等竜人(ドラゴニュート)は、嘘を嫌う」


なんか似たような文句、どこかの狐も言ってたような…。



「ええっと、その………すみません疑った訳ではないのです。あーその、ダンジョンについては、一体どこから話せば良いやら。もちろん前はこんなんじゃなかったのです」



そこからアナさんに詳しく教えて貰った話では、もともとこの街はダンジョンからの鉱石や宝石等のドロップアイテムが豊富に取れたため、冒険者や商人にかなり人気の街だったらしい。しかし約半年ほど前から、ドロップアイテムが徐々に減り始め、街からはみるみる人がいなくなり。ついにはドロップアイテムが全く落ちないと言う事になってしまったのが三ヶ月前。


今はファレオ、ロザリオ間を往来する人達の落とすお金で、街人はなんとか最低限の生活は出来ている程度だとか。



「アントンさん達は昔からこの街で冒険者をしてくださっている方々なのですが、今この街でアイテムを納品してくださるのは"鉄の鎧(アイアン・アーマー)"の皆さんだけなので感謝しています。あの方達がいなかったら、ここの冒険者ギルドなんて、もうとっくに潰れちゃってますから………」


「その方法が魔物の行進(デス・パレード)でも…か?」


「シオンちょっと待ってよ。さっきも言ってたけど、魔物の行進(デス・パレード)って何なの?」


「何!?お主知らぬのか!?」


「手前も知らぬ」


「何じゃと!?」


「その言い方は最近では使われませんです。最近では魔物列車(トレイン)とかって呼ばれますです。冒険者が魔物から逃げる際に、他の魔物をどんどんと引き連れてしまい、まるで列車の様にダンジョンの中を走り回る事です。とても危険な行為で、他の冒険者がそれの巻き添えをくらう事もあるので、冒険者ギルドが指定する禁止事項(タブー)の一つとなっています」


「あやつ等は故意に魔物の行進(デス・パレード)を起こしておる。何故なら、ダンジョンに取り込まれるはずの魔物を強引に持ち帰ろうとしておるからの。あのダンジョンからアイテムを得るにはそれしかないのは確かじゃが………」


「だがシオン。彼等も逃げているうちにロックリザードに絡まれるのであれば、故意と言うのは言い過ぎではないだろうか?」


「いや、ダンジョンでは取り込まれるはずの魔物を無理やり持ち帰る事も禁止事項(タブー)なはずじゃ。何故ならそうしようとした直後に、周りから大量の魔物が湧く(ポップする)からじゃ。そうなれば魔物を担いで逃げる必要があるのじゃから必然的に魔物の行進(デス・パレード)になる」



なるほど。

つまりアントンさんたちは、最初からロックリザードを持ち帰るつもりで四体倒し。そんでもってさらには、最初からロックリザードの魔物の行進(デス・パレード)となる事も分かってやっていた、と。


恐らくは自分達以外に冒険者がいない事を分かっているからやっているのだろう。そして今回たまたま巻き込まれてしまったのが、僕達だったわけだ。



「そもそもダンジョンを何とか元に戻す方法はないんですか?」


「もちろん当ギルドにおきましても、緊急調査依頼を出して冒険者の皆様に協力を仰いではいるのです。この街が廃れてしまう事はファレオ、ロザリオ共に損害となりますので。ただ、過去の文献からも、ダンジョンが人の手で甦ったという記録は無いのですます………。一度死んだとされるダンジョンが、数百年後に復活したと言う話はいくつかあるのですが」


「人の手で無理にあれこれしても無駄じゃろうの。ちなみに緊急調査依頼とやらの報酬はどんなもんじゃ?」


「ダンジョンが修復された後、運営再開により生じる冒険者ギルド及び商業ギルドの利益の三パーセントを十年間お支払いしますですます」


その三パーセントと言う数字に、アルは頭を傾げる。

三パーセントって聞くと、なんだか少ないような気もするけど、冒険者ギルドと商業ギルドの利益ってどんなもんなんだろう?


「それは思いきった事をしたものだな」


横でガルムがそう言うんだから、まぁまぁしっかりした額なのだろう。



「なるほど、それは面白いことになっておるの。言ってみれば出来高と言う訳か」


「もちろん、何かしら物証は必要です」


「何か事前に依頼書にサインなどが必要なのではないか?」


「はい、こちらの…ちょっとお待ちください。うー…ん、あった。こちらの書類にサインをお願い致しますです」


ガルムに目で促され、アルが代表して名前を書く。

シオンの事だからきっと何かしら考えがあるんだろうけど。大丈夫かな?でも別に、失敗したところで誰の迷惑にもならないから良いか。


「ちなみにこのダンジョンで一番金になる魔物は何じゃ?」


「あーそれでしたらクリスタルゴーレムですかね。ほとんど出会う事は無いそうですが。ドロップする魔力を帯びたクリスタルには一つで何十万ギルの値がつきますです。単純な買取額では迷宮主の素材よりも上です」


「全身がクリスタルのゴーレムであるな?話を聞いたことはあるが、手前も是非会ってみたいものだ」


「気が合うの、ガルム。妾もじゃ」



なーんか………嫌な予感しかしないんたけど。

"古の咆哮(エンシェント・ロア)"の、欲にまみれたテンゴールダンジョン復活作戦が始まる。

文字数がもう少しで500000に到達しそう!

隙間時間での執筆が主なのでスマホで執筆してますが、スマホの液晶に文字パッドが焼け付いてしまってます!スマホの使いすぎにはご注意下さい…。

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