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66話 生存確認

累計PV40000越えました!ありがとうございます!

引き続き応援よろしくお願い致します!

今回のアマゾネス編はそんなに長くはならない予定です!

結局、その日の狩りにはアルは参加せず、彼女達の戦闘を見学しただけだった。半日でミニチュアガリーラを始めとして数種類の魔物を十体ほど倒したが、その連携は見事の一言だ。レベルとしては彼女達よりも上の魔物ばかりだったが、誰一人怪我をした人はいなかった。


アルには集団戦闘の経験と言うのはあまりない。

クープの調査隊の時には、連携というよりも個々が自由に戦っている様な感じが強かったし、敵の数も多かったので連携を取るどころではなかった。



彼女達と村に帰った時、昼間と比べて、村にはかなりの人数が戻ってきていた。しかしその人達を見てアルは衝撃を受ける。


全員が女性なのだ。

メリッサさんがこの村には二百人くらい住んでいると言っていたが、全員が女性だ。


彼女達は村の中心にある広場、そこに火を焚くと、今日の戦果をその前に並べ始める。アルも【保管(ストレージ)】から肉やら途中で採った山菜やらを並べた。


その後はやんややんやの宴会だ。

みんなが好きなだけ飲んで食べての大騒ぎ。


女三人よれば姦しいと言うが、女性ばかり二百人だ。

どんちゃん騒ぎである。そして何故か男一人となってしまったアルは、やはり好奇の目でみられる事になった。


「ほらアルフォンス!食ってるか!」

「え、えぇありがとうございます」

「なんだ!もっと食え!でかくなれねぇぞ!?」

「アルフォンス君?私の剣捌きどうだった?ねぇねぇ君も剣使うんでしょ?」

「あ、勉強になりました」

「ちょっとあんた等何してんのよ!」

「まだ何もしてないでしょ?」

「まだって何よ!」

「ねぇ?アルフォンス君?メリッサより私の方が良いと思わない?ほら胸だってちょうど良いサイズだし?」


そんな感じでくっついてくるのは、剣で戦っていた確か名前はペトラさんだったと思う。メリッサさんより僅かに慎ましやかな胸元を見せつけてくる。


「えっとペトラさん?、その、僕にはどちらももったいないですので………」

「うわぁ!名前覚えてくれたんだ!それに男にフラれるのってなんか新鮮!でもちょっとイイかも………」

「次あたし次あたし!」

「もういいから!」


この村ではお酒も作れるらしく、酔っ払った女性達が延々と絡んで来る。理性が持たないと感じたアルは早々と寝ることにした。

つまり逃げ出したのである。





「ここ使っていいよ。今一人空いてるし」


メリッサさんに寝床へと案内してもらった。

そこは沢山ある家の内の一つで、中は思ったより綺麗だった。ベッドもちゃんとしており、ふかふかとまではいかないが十分寝心地が良さそうだ。


「今日はありがとうございました」


「うん、また明日ね」


アルは一人になるとステータスを開く。

特に変化はない。と思われたが、よく見れば共通スキルの所にスキルが増えている。【筋力上昇Lv2】だ。確かシオン達とはぐれる前には無かったはず。


となるとやはりシオン達は無事だと言うことだ。

しかし同時に、戦闘の必要がある状況と言う事でもある………か。


いや、違う。

シオンが【吸収】スキルでスキルを得られるのは戦闘に参加した時のみ。シオンは今、狐の姿だ。攻撃手段は魔法のみ。しかしよっぽどの事がない限りは魔法を使わないだろう。ただでさえアルから魔力を補充出来ないのだから。


ステータスを見る限り、そんなに切羽詰まった状況だとは思えない。なのできっと、アルに無事を伝えるためだ。魔力に余裕が有ることと、無事だと言うことも伝えてきている。


問題は二人がどこにいるかだけど………。

そこまではこのステータス上では伝えようがない。


何か通信できる手段が有ればいいのだが。

共有(ユニフィケイション)Lv1】での意志疎通は見えている人としか出来ないらしいし、【空間転移(テレポート)】はダンジョンの中だから出来ないし………。


なんとかアルも余裕のある状況だと言うことだけでも伝えられたら良いんだけど………。



「アル?」


「うわぁっ!」


耳元での声に飛び上がる。

アルのすぐ近くにはいつの間にかメリッサさんがいた。ここの人達は歩く時に音が無さすぎて気配が全く読めない。


「驚かさないで下さいよ!もうちょっと足音立てて歩いてください!」


「なんかね、皆がアルを取り合ってるのみたら、ちょっと嫉妬しちゃったみたい」


「え?いや、その。まだ僕はあなたの物じゃないんですが?」


「もう!【マーキング】が効かなかったのもキスだけでしょ?だからね?もう少し試させてよ」


「いや、ちょっと待ってください!」


「だーめ」


「ストップ!ストーップ!」


これは本気でヤバイやつだ!

メリッサさんの目がマジなのだ!朝と同様に、力でメリッサさんに抵抗できるはずも無く………?


あれ?

いや、なんとかなる………?

あ、そうか。【筋力上昇Lv2】のスキルを獲得したからだ。


「え?な、何で?朝は本気を出してなかったってワケ!?この…ッ!おとなしくッ………!」


メリッサさんの力技を力で押し返そうとするが、やはり6レベル差。メリッサさんが本気を出し始めて劣勢になる。メリッサさんの顔が近付いてくる。


「く………!【(シールド)】!」


すんでの所で回避。

メリッサさんは思い切り【(シールド)】にキスをかましていたが、驚いて力が抜けたところで体勢をひっくり返す。


そして【瞬間加速】まで使って脱兎の如く逃げた。


「待てーっ!」


その声に待つはずも無く、村の端まで逃げる。

支配者(ドミネーター)】を入れて後方を索敵すると、諦めずに追ってくるのが分かった。しかしその距離は百五十メートルはある。スピードもなかなかの物だ。


その時目に入ったのが、御神木の階段だった。

普段使われていないと言っていたことを思い出し、全力でかけ登る。そして見えないところに立ち止まって隠れた。



「やばい!見失った………!」


息を潜めていると、足音がすぐ近くで止まる。


大丈夫だ………まさか上に逃げたとは絶対思わない。

こんな所で貞操を捧げるつもりはない。


まぁ絶対と言う訳でもないけど?メリッサさんはとびきりの美人だしスタイルも抜群だし、お相手としてはこの上ないんだけど?


ただ、シオンに隠し通せる気がしない。

シオンにこんな状況でそんな事をしてたなんてバレれば、絶対言い触らされる。一生言われる。それは間違いない。


「んー………?、男の匂い………」


ヤバいバレた!

階段を駆け上がってくる音がする。


アルも全力で上へ上へと逃げる。

上へと登るにつれて、最高の逃げ場所だと思った事が間違いだと思い知らされる。どんどんと逃げ場が無くなっていく。


上に到着した時、目を奪われた。


満天の星だった。


森の木々のどれよりも高い位置にあるため、周りには何もない。

三百六十度どこを見渡しても星々が輝いていた。


こんな星が綺麗なの見たことないな………



「追~いついた!」


危うく階段を踏み外す所だった。

背後からの声に飛び上がる。


あわてて祭場へと、逃げ込む。

そこは円形の足場があるだけの場所だった。


完全に行き止まりだ。


「いやぁ、あんたの"何か"と、あたい達アマゾネスの【マーキング】。どっちが勝つのか………って感じだね?それにしてもここ良いね?ロマンチックで。今までここでなんて考えたこと無かったけど。………すごいときめいちゃう」


近付いてくるメリッサさんの目は、どこか正気に思えない。

まるで何かが乗り移っている様にも見える。


アルは最後の賭けに、詠唱を始めた。

これでダメなら諦めるしかない。


メリッサさんはアルの雰囲気が変わった事に足を止める。

いつも背負っている大盾に手を伸ばすが、そこには今は何もない。


「あ、あんた何する気?まさか戦うの?」


アルは詠唱をやめない。


「そんなに。………そんなに、私じゃ嫌?」


今度は泣き落とし………。

何で僕がこんな目に………。


「メリッサさんは魅力的で、僕も男としては我慢するのに必死です。でも、僕は出会ったばかりの人とはそう言う事は出来ません。それに、今のメリッサさんは様子がおかしい。助けていただいた恩は必ず返します。ただ、こう言う形ではない」


アルはまっすぐメリッサさんの目を見て言った。

僕の理性グッジョブ…!



「【空間転移(テレポート)】」


一秒足らずの浮遊感の後、ゆっくり目を開ける。

するとそこには巨大な建物があった。木造ではなく、煉瓦調の建物。


アルテミスの冒険者ギルドだ。

辺りは暗く、既に冒険者ギルドは閉鎖されている。アルの周りにはきっと酔い潰れてつまみ出されたのだろう、意識のない冒険者が何人か横たわっていた。


「まさか、うまくいくとは………」


アルも彼らと一緒に横たわる。

空は狭く星の数も少なかったが、ひどく安心したのだった。












「おはようございます」


「あ、アル君!」


アルは昨晩、竜の翼亭で一泊した。

そして冒険者ギルドが始まる時間に合わせてミアさんの所に来ていた。

すぐにミアさんは相談室へと通してくれる。


「今日はシオンちゃんは一緒じゃないの?」


「いえ、それが………」


アルはソファに座るなり、二人とはぐれた事の経緯を話して聞かせた。当然の如く、かなり怒られた。


「まさか………ロウブの森に入るなんて………。いえ、ちゃんと伝えなかったのは私のミスでもあるのよね………」


「いえ、僕達が近道しようとして入ったんです。僕達の情報収集が足りなかったのが原因です。幸い、今のところシオン達は無事みたいですし、僕の安全もシオンに伝わってると思います」


「何故そう言えるの?」


「シオンのステータスは見えますから。僕からは朝イチで神殿に行ってレベルアップしてきました。これでシオンには僕がアルテミスへと【空間転移(テレポート)】出来る程度には安全だと伝わります」


レベルは二つ上がって32。

これでシオン自身の危険も僅かに減ることだろう。


「それよりも問題がありまして………」


ミアさんに伝えるのは何だかとても怖かったが、アルの抱えている問題について相談した。


「アマゾネス!?【マーキング】!?一週間で恩を返せないと下僕になる!?何なのそれ!?また女!?ゴールドナイツよりもひどい!だいたいアル君はね!女性と関わりを持ち過ぎだよ!クープでもアレクサンドリア伯爵の令嬢に唾つけたって聞いたよ!どうして君はそう………」


ミアさんの説教が止まらない。先程よりさらに怒られる。

これに関してはアルは悪くないと思うのだが、何故か先程以上に説教に熱が入っている。


もしもアマゾネスの人達に身体を許してしまって、それがシオンにバレた時の事を考えると、それだけで背筋が凍り付く。


アルの理性がより固まった瞬間だった。


「でもアマゾネス達は男に関しては執念深いって聞くからね。何か必要よ。このままアル君をアマゾネス達の下僕にされてたまるもんですか!

こうなったらこのアル君の能力を存分に使って貢ぐしかないわ!アルテミスとルスタンの美味しい物を全部持ってくのよ!それから前に言ってたルスタンの錬金術士の回復薬とか!あとは必要ならマルコムさんガブリエルさんとこの武器防具も持っていきなさい!お金はあるんでしょ!?」


「………はい!」



それしかない。

今はお金ならある。


一刻も早くアマゾネスの人達から解放されて、あわよくばシオン達を捜索するのを手伝ってほしい。



目標が決まったらすぐ行動だ。


まずはアルテミス。

マルコムさんのところに言って、槍と剣、それから大盾を合わせて二十ほど購入する。どれも有能なスキルがついたものばかりだ。アマゾネス達が使っていたのはスキルなど付いていない武器ばかりだったため、これは絶対響く。間違いない。


しかしこの出費が一番痛いのも確かだ。


そしてアルテミスのレストランを回り、料理をできるだけ買って回る。この際大皿も一緒に買い取る。



次はエルサの所。

時間がないので店の前に直接【空間転移(テレポート)】する。

入店するや否やすぐにどたばたと走ってくる音がした。


「やっと来た!マンティコアの毒!出せ!毒出せ!」


「毒は分かったから!エルサ!回復薬出来るだけ売って!」


そして百個ほど回復薬を買い占めたアルは、次にルスタンの街中へと向かい、アルテミスと同じ様にレストランを回って魚料理を買い占めて回る。


そうしてようやく食べ物も目処が立った。

二百人だと一食分にしかならないが、昨日食べた限りでは魔物の肉を焼いただけの簡単な料理ばかりだった。きっと目から鱗に違いない。


さぁ準備は整った。

あとは向こうに行くだけだ。


向こうからこちらには【空間転移(テレポート)】できたが、こちらから向こうには行けるか?


そもそもダンジョンの中なのに何故出来たのか?

あれだけ高い場所だとダンジョンの中だと判定されなかったと言う事か?もしもそうだとしたらこちらから向こうにも行けるはずだ。


アルは一瞬悩んでしまう。

昨晩の事があって、メリッサさんと顔を合わせづらい………。


しかしアルは行かなければならない。

ガルムとシオンのために。あの魔の巣窟へと挑まねばならない。


となんだかんだ言っているが、結局はあの集団に戻ることに腰がひけているのだ。


「ふぅ。いや行くしかない。時間もないし」


アルは詠唱を始める。


「【空間転移(テレポート)】」







やはり、【空間転移(テレポート)】は可能だった。


アルは再び、ロウブの森ダンジョンへとやって来た。その場所は祭場だ。ここなら【空間転移(テレポート)】による他との移動が可能みたいだ。


まだ午前中の柔らかな陽の光を浴びて心を落ち着けてから下に降りる。


降りたはいいものの、誰もいない。

と思いきや、また村の中心の広場で皆で食事を取っていたらしい。全員で円になって朝食を摂っている。


アルが早起きしたのもあるが、意外とここの人は起きるのは遅いらしい。



アルが姿を見せると、昨日話した人達が何気なく挨拶してくれた。

メリッサさんはと言うと、なんだか昨日とはまるで別人のようにおとなしい。


アルはまずエヴァさんの所に行く。


「おはようございます」


「おはようさん。人気者だね」


「命を助けていただきました代わりと言ってはなんですが、彼女達が使える武器を持ってきました」


「………見せてごらん」


アルは【保管(ストレージ)】からマルコムさん製の武器をドサドサと取り出した。

明らかに彼女達の持っているそれらよりも高性能な武器の数々を見てアマゾネス達がざわつく。



「なるほどね………確かに良い武器だ」


「それなら」


「半分だ。あんたの命半分。寿命換算するなら三十年ってところかね?」


「え!?半分!?でもこの武器スキルが付与されてるんですよ!?装備すればその付与されてるスキルが使えると言う物です!」


「なるほど?それなら六割分だね。残りは二十四年。あと武器はもう要らないよ。ありがとう。これを皆で使い回すからね」



はたして、残りの二十四年を食事だけで賄えるのだろうか………。

アルの前に暗雲が立ち込める。

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