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5話 セシリアとの出会い

新しい話を投稿後に確認がてら読んでるんですが、いざアップしてから文章的に気になるところがちらほら…。

更新直後はちょいちょい文章変わります。


※今回、途中からセシリア視点です。


唇に伝わる感覚は、とても柔らかかった。

女性の唇ってこんなに柔らかいのか、今まで知らなかった。

目の前には、綺麗な長い睫毛を伏せて閉じられた目。

先程感じた花の様な香りが、鼻腔から脳内まで広がる。

脳が溶けていく。そんな錯覚に襲われる。

何も考えられない………。


「オイ早く探せコラァ!大通りの奴等にも連絡して探させろ!」


それは間違いなく、先ほどのスキンヘッドの声だった。反射的に飛び上がりそうになった。アル達を探している声と足音が近付いてくる。

気付けば二人の顔は離れていた。目の前に、神が創ったかの様な美貌がある。そんな彼女の頬はやや朱く染まって、目は潤んでいる。そっとアルの頬に彼女の手が添えられる。


「奴らが来たら顔を見られないように、私の後ろに隠れるようにしなさい」


表情とは裏腹に、彼女の声はしっかりとしていた。

そして、足音がこの路地の角を曲がってくる直前で、彼女は再度アルを引き寄せた。

どたどたと数人分の足音が近くまで来て、止まる。


「オイそこの…」


その声にアルは咄嗟にそちらを向きそうになるが、アルの頬に添えられた手はビクともせず、それどころか強引に身体ごと反対側を向かせられた。そこで先ほどの彼女の言葉を思い出す。フードをしっかりと引き下ろし、彼女の陰に隠れる。


「何だ?私達に何か用か?」

「あぁ………そこのローブの奴はオメェの知り合いか?いや、もうそんなことはどうでもいいな。なぁ姉ちゃん。俺達にちょいと付き合わねぇか?」


どうやらスキンヘッドは彼女の容姿を見た途端に、ターゲットを変更した様だ。それも仕方ない事だと思うが、彼女はかなり強い。四人がかりでも分が悪い事を、アルは知っていた。


「おい、あの鎧。もしかして"烈火"のセシリアじゃねぇか?」

「あの容姿に細剣。間違いねぇ。Aランクパーティだぞ………」

「あいつ噂じゃレベル50近いって話だ」


チンピラどもが何やら怖じ気づいている。

この人はセシリアさんと言う名前らしい。そしてどうやらこの街では有名らしい。冒険者の中で世界の中心と謳われるこの街で名が通っているという事は、もしかするとかなりの有名人なのかもしれない。

それに聞き捨てならない数字があった。

レベル50………。その若さで…?


「どうやら自己紹介は要らないようだな。レベルの事は答えられないが、その身で感じてみるか?

君達が誰を探しているのか知らないが、この人は無関係だ。先程から私と二人きりの時間を過ごしていたんだからな。

さて……………。せっかくの時間を邪魔された所だ、やるというなら容赦はしない。纏めてかかってくるがいい。私の経験値にしてやろう」


彼女の啖呵は見事だった。

なに?その私の経験値に…ってやつ。シビれるんですが。

腰の剣こそ抜いていないが、彼女自身が抜き身の刃だ。そう思わせる様な威圧を放っている。まるでそれ自体に物理的な何かがあるかのような威圧。チンピラどころか、アルまでも身動きが取れない。


「い、いや………その。ね、猫だ!そうだ!俺達は依頼で飼い猫を探してただけなんだ!ここいらで猫を見なかったか?」

「猫は見ていない」

「そうか。それなら良いんだ…!おい、お前達!行くぞ!」

「そうだな!あっちの方を探さないと」


四人は命からがらと言った様子で、路地の奥の方に去っていった。

良かった…一時はどうなることかと。あ、僕の銅貨と鉄貨………。まぁあれくらい安いもんか………命と貞操が守られたと思えば。ファ、ファーストキスは何故か最高の形で奪われてしまったけど…。


セシリアさんは、チンピラが去っていった後を十数秒警戒していたが、戻ってこないのが分かると、こちらに向き直った。改めて対面すると、本当に綺麗な人だ。こんな薄暗い路地にも関わらず、その金髪と美貌はくすむことなく、まるで絵画のような神秘さを放っていた。【美貌】というスキルを持っている。そう言われても疑わないだろう。


「私の事情に巻き込んでしまって、すまない。

しかし、君にも落ち度はある。現在神殿の近くの裏路地は、あぁ言った輩の猟場となっている。ステータスを確認しに行った後をつけ、身ぐるみを剥いで奴隷商に売り飛ばす。知らなかったとは言え、君のような可愛い子が一人で路地裏に入るなど、少し不用心だろう」


あぁなるほど………まさに良いカモだったと言うことだ。

にしても、()()()()か…。

確かに年下ではあるんだろうけど………。


「いえ、自分が悪いんです。レベルアップが嬉しくて、急いでステータスを確認したくて………」

「あぁ、その事なんだがな。君のステータスは非常に興味深

「セシリアー!」


―――ドサッ!

叫び声と同時にまた人が上から落ちてきた。しかし着地に失敗して、腰から落下している。今度はパッと見て、白っぽいふわふわした人だ。


やっぱり建物の上から降りてきたのか?と上を確認すると、そこには更に二人の人影が見えた。そしてその影もこちらに向かって飛び降りてくる。いや、普通に飛び降りるとか言ってるけど、そこ四階くらいはあるからね?


ストッストッ。そんな音を立てて、今度は二人が鮮やかに着地する。いやいや、それも四階から飛び降りた音じゃないから。ガアァン!もドサッも、ストッもおかしいから。いや、アルが飛び降りたらドサッってなるからそれが正解か。


「もぅ!勝手に走っていったと思ったら!何が任せろよ!」

「何よ?ちゃんとこの子は助けたし、奴等にも不審には思われてないでしょ?ただ昼下がりの情事を目撃しただけかと思うわよ」


セシリアさんに詰め寄るのは、白色の髪をした、これまた美人な女の子だ。横からしか見えないが多分、いや間違いない。………獣人だ。耳…、耳がある。ひょこひょこ動いているし、おまけに尻尾も。尻尾は白くモフモフそうであるが、今はすこし立っている。怒ってるからかな?犬っぽい?いやなんだろう、もしかして狼か?

しかし彼女の一番の特徴は獣人という点ではない。その何というか………。はっきり言ってしまえば、かなり胸が大きい。顔もくりっと童顔ぽくてファンが多そうな感じだ。


「…情事?情事とは何をしたんだ?」


その落ち着いた声は、後から飛び降りてきた二人のどちらかだったが、多分背の高い方だ。と言うか二人の伸長差がすごい。

片や百八十センチはあろうかという痩身のイケメンだ。こちらもかなり驚嘆(びっくり)。エルフだ。ここから北東の方にあるサラン魔法王国と、その西にあるエルカ教国に挟まれた森に住んでいる種族。寿命が五百歳を超える長寿な一族である。身体(フィジカル)ステータスが低い分、強力な魔法スキルを持つと聞く。

もう片方は打って変わってかなり小さい。百センチ程しかない身長の男の子。男の僕から見てもかなり可愛らしい顔立ちをしている。誰かのお子さんかな?

え、もしかして、セシリアさん?それか獣人の御方の…?

いやでも待てよ。この男の子。さっき上から自分で飛び降りてきたよね?着地もドサッじゃなくてストッの方だったもんね?頭が混乱してきた。


「何って、キスよ?」

「なっ!?」

「…え?キ、キス………?しちゃったの?」


驚きのこもった声は、男の子からだ。獣人の御方もかなり驚いている。男の子はキスと聞いて顔を真っ赤にしている。可愛らしい。いや、多分僕もそれ以上に顔赤いんだろうけど。


「えぇ、イザベラ、あなた言ってたじゃない。その年でキスの経験もないなんてって。女の子とならノーカウントとも言ってたわ。だから彼女には悪いけど、練習してみたのよ」


あぁ………嘘だろ神様。何て事だ………。あれ?これ僕マズい?ちょっとそこの男の子、武器をしまってください。

セシリアさん以外は状況が解っている様だ。そこのイザベラさんとやら、頼むから口にしないで下さい。


「セシリア。この人、男の人なんだけど」

「…え」


セシリアさんの得意気な笑みが固まる。ゆっくりとこちらを向く。


「う、…嘘よ。だってあの悪人達が、実は女、とか、男装してるとか言ってたもの。それに確かに顔立ちだって………」


四人の視線が痛い。お前が言えと暗に伝えてくる。確かに本当の所は僕しか解らないけど、この状況で喋るのはかなり勇気が必要で。

ええい、どうにでもなれ…!今なら死んでも後悔はない!いや、できたらもう一回くらい………。


「えーっと、初めまして。アルフォンスと言います。一応、男やらせてもらってます」







遡ること十分前―――――


「だからさぁ、セシリアはどんな人がタイプなの?」


いつもの様に、イザベラの言葉を適当に流す。セシリアは、このアルテミスに"本拠地"を置く冒険者だ。年齢は今年で二十二歳となる。現在は"烈火"というパーティに身を置き、半年前にパーティのギルドランク、個人のギルドランク共にAに上がった。少し前までは、サラン魔法王国のダンジョンに行っていたのたが、つい一週間前にアルテミスに帰ってきた。約一年振りである。

もともとの出身は、ロザリオ王国の王都であるアデルなのたが、冒険者の多くはここアルテミスを"本拠地"に活動することが多い。


その理由は、神殿によるレベルアップだ。人が初めて神殿で祈り、レベルアップした時。その神殿はその者の"本拠地"として登録される。そしてそこ以外の神殿ではレベルアップできなくなってしまうのだ。これが何故なのかは未だに解っていない。実は神殿ごとに御座す神様が違うのではないか。等の説が有力ではあるのだが、それを立証する術はない。


「っていうかさぁ。二十二にもなって今どきキスもしたことないなんて、もはや化石だよ?」


一つ、レベルアップのためには"本拠地"の神殿に帰らなければならない。

一つ、ダンジョンには適正レベルがあり、適正レベル外でのレベリングは効率が悪いため、世界中を飛び回らなければならない。

一つ、レベルアップによるステータス上昇の恩恵等により、レベリングの効率の観点から、可能な限り細かくレベルアップする方が良い。

これらの理由によって、世界のほぼ真ん中に位置するこのアルテミスが、"本拠地"とするには絶好の場所なのである。


余談であるが、その"本拠地"を変更するアイテムもある。否。()()()。"コカトリスの尾"。真っ黒の鳥の尻尾から取れる素材だ。このコカトリスという魔物はSランク。しかしこいつがまた、めちゃめちゃ()()。何故ならもともとはEランクの魔物だったからだ。しかし神殿の"本拠地"変更に"コカトリスの尾"のアイテムが使えると広まってから乱獲され、絶滅的に数が減った。それにより希少度が大幅に上がったのだ。今ではほとんど手に入らない。


「ねぇねぇ?私と練習してみる?

女の子同士はね、ノーカウントなんだよ………?」


セシリアは一週間前に、約一年振りに神殿で祈った。

レベルアップは四つ。その分ステータスも上がったのだが、まだ身体が馴染んでいない心地がある。


そんな時にあったのはこの街のギルド長からの直接依頼だ。内容は、この街で活動する不法な人身売買組織を潰す事。ただ単にトップを潰すだけでなく、下っ端から小間使いに至るまで全てを捕らえることだ。よって依頼の難易度はA。私達"烈火"のパーティに白羽の矢が立ったと言う訳だ。


依頼を受けると、私達はまずスラムに向かった。

この手の違法奴隷商の大抵はスラムの孤児等を売っている事が多い。誰も気付かないし、困らないし、助けないからだ。しかし今回は外れだった。そこには既に、子供や労働力になりそうな若者はいなかったからだ。


次に向かったのはこの街の近くにあるダンジョンだ。

この街のダンジョンは適正レベルが17~23と低く、初心者向けだ。つまり、拐う側にある程度の力か頭数があれば、相手が冒険者と言えども力ずくでなんとかできる。ましてやダンジョンから出てきて疲労した所を狙えば尚更だ。しかしそれも外れだった。過去にそういう事が多くあったのだと言う。既にこの街の保安部隊である騎士達が配置されていた。


では、違法な奴隷商は一体どこで人を捕まえているのか。

目をつけたのは神殿だった。この街の神殿は、かなり混み合う。単純に、祈りに来る冒険者の数が他の街と桁違いに多いのだ。しかし、ここに祈りに来るのは冒険者だけではない。女や子供達も神殿にはやってくる。誕生日を迎えると経験値は貯まる。それに加えて日々の何気ない動作でも経験値は貯まると言われている。ステータスが上がって悪いことはない。そのため、冒険者以外でも神殿には人は訪れる。

その中で一番の狙い目は、近くの村からレベルアップのために出てきている子供だ。いずれ冒険者になることを夢見て、この街へ来る。そしてレベルアップの鼓動を感じると、すぐに確認したいがために、近くの路地裏へと走るのだ。


神殿を遠目に見ていたセシリア含む"烈火"のパーティ。その視界に、神殿からこそこそと出てきた一人の少年が映る。


「あの子供、行くな」


四人の予想を代表して言ったのは、エルフのリアムだ。セシリアはその男の子をこっそりと【鑑定】する。レベルは8。いくらなんでもダンジョンには早すぎるため、近くの村からレベルアップのために出てきたのだろう。そして、スキルの欄を見てしまった。


なにこれ…。

【空間魔法】………。


―――――レアスキル見っけ!

セシリアの背筋にソクゾクとした感覚が走る。

そして、その男の子の後ろからいかにも怪しい四人組が後をつけていくのが見えた。


「おい、あれじゃないか?」

「皆、ここは私に任せて。クレイは男達の方に【追跡】を」


少年が入っていくのは、十字通りを挟んだセシリア達とは反対側の裏路地だ。セシリアは手前の建物を素早くよじ登って、屋根の上に立った。高さは四階建て。通りを挟んで三十メートルくらい向こう側にも同じ建物。


助走をつけて―――飛んだ。


そして二度。()()()()


浮遊感の後、建物の屋上に音もなく着地した。

下を覗き込むと、男達の四人が少年に声をかけている。


「おい……ラ。

だか………ガキ大して………言………。

それよ…………綺麗な顔……………女じゃねぇ…か。男装して………………じゃ………か?

まぁ………良……か。おい………ら………連れ…け。適………遊ん………マッド………連れ………」


断片的にしか聞き取れないが、アタリらしい。マッドとは情報にある、裏の奴隷商の名前だ。それにしても、あの子は女の子だったらしい。短髪だったから男の子かと思ったけど。冒険者を目指す女性は短髪の事も多いからそれでかな。男の子ならこいつらの隠れ家まで行ってから助けようかと思ったけど、女の子なら却下だ。きっとかなり怖いはずだ。すぐにでも助けよう。


セシリアは"魔力袋"を広げ、そこらの商人がよく着ている茶色のローブを念じる。反対の手の中に実際に現れたローブを羽織り、フードも頭から被る。それから同様にして鉄の剣も取り出す。男四人のレベルは16、17、17、18。セシリア一人でも敵ではない。


位置を調整しつつ、スキンヘッドの男と()()の間に飛び降りた。

ここまでお読み下さり、本当にありがとうございます!


もしも、続きが少しでも気になる!おもしろい!まぁもうちょっと続けて頑張ってみたら?と思っていただけたのであれば、感想、レビュー、評価など応援をお願いします!


評価の方法は下の☆☆☆☆☆を押すだけです!

あなたのその清き1ポイントが、筆者のモチベーションとなり、ひいてはなろう全体の活性化にどうたらこうたら。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直な感想で構いません!

是非ともよろしくお願いします!

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