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おまけ

  

お酒が入っていて、結婚式の余韻もあり、暴露合戦が始まった。


「おい、林、お前のせいで、俺達がどんなに苦労したかわかるか!」

 と、突然、クラスの協力者、渡辺君に名指しされたのは、友人こと林さん。


「知っているわよ。その事は、もう謝りまくって、和解済みだし、こうやって二人が結婚したんだからいいじゃない。ぶり返さないでよ!」


「何!!俺らは、こいつがどうしても佐倉さんに直接想いを伝えるんだって聞かないから、彼女に知られないように、慎重にセッティングしていたんだぞ。それなのに、お前が伝えないから、毎回断られてると勘違いして、俺たちは、佐倉さんを、アウトドアが嫌い、人混みも嫌いで、極度の人見知りって言う人物像になっていってたんだぞ。全然違うじゃねーか。」

「そんなの知らないわよ。むしろ、私に協力者を募れば、拗れなかったのに。」


「あ、確かに。」

 ふふんと、勝ち誇った顔の林さん。

 その手があったかと、ざわつく周囲の者たち。


「まあ、あの時の失恋がきっかけで、私もこうして幸せを手に入れたのだから、何とも言えないけれどね。今は林じゃなくて森よ。」

 そう言って、友人は少しポッコリしたお腹をさすった。


「林から森。旦那は大学の助教授だっけ、八か月だったよな、男か?女か?ちきしょう、みんなして幸せかよ~。」

「女の子よ。ふふふ、幸せ過ぎよ~。」

 周りが和んだ。


「あれ?お前、クラス会の時に付き合っている奴がいるって話していただろう?あれは助教授のことじゃなかったのか?二股か?」

「あ~、二股じゃないわ。あれは、佐々木君が私と付き合っていると匂わせる、私の作戦だったのよ。まぁ、あなた達が周りにいたから、名前が出せなかったっていうのもあったんだけどね。」


「何!!作戦か。マジ怖いなお前。あの時は、佐倉さんが知らん男の告白をOKするって話に乗り気になっていたから、ヤベーって焦って、直ぐに諒に連絡したんだよ。」


 ん?


「そうだったの?佐々木君は、私のメールを見て来たのかと思っていたわ。ていうか、あんた達、私達の話に聞き耳立ててたの?気持ち悪いわね。」


え?


「だって、お前が、佐倉さんから情報聞き出そうとする俺達を邪魔するから、仕方なかったんだ。」

「そうだぞ、鉄壁の守りだった。」

「君達、どんだけ協力的なのさ。」

 協力者たちに呆れる林さん。


 思い出したのか、協力者たちは讃えあい始めた。

 酒を飲み過ぎているのか、感動して泣いている奴もいる。

 ドン引きである。


「思い出すな~。こいつらが念願かなって、付き合うことになったって報告受けた日、みんなであいつを胴上げしたな。」


 胴上げ……。


「祝賀会もしたな。蕎麦屋の山ちゃん家で、酒と大量のつまみをおばさんが差入れしてくれて、蕎麦屋なのに蕎麦食わずに、飲んでてすみませんって、祝ったな。」


 祝賀会……。


「俺は一生、梨乃を離さない!とか、諒が夜中の三時に窓開けて叫ぶから怒られたな。」


 …………。


 私と彼の前で話される暴露トークは、正直キツカッタ。

 私より彼の方が……。


「ちょっと、暴露するの、やめてくれないか!」

 堪らず、彼が止めに入った。


 そんなの事はお構いなしと、

「佐倉、もっと聞きたい?聞きたいよな~教えるよ~。」

と、続けていくのである。


 話は高校時まで遡っていた。

「高校と言えば、卒業式だな。あの日は荒れたな。」

「そうそう、卒業式に、告るはずが、佐倉さん休みだったから、それ聞いた諒が泣き出しちゃって、まだ式も始まってないってのに、そんなに卒業が悲しいのかって、教師共に生暖かい目で見られ、周りの生徒にちょっと引かれてたな。」

「うるさいな、やっと想いを告げられると思っていたから、会えないって分かって、感情が抑えれなかったんだよ。それに、直ぐ泣き止んだだろう。」

「泣き止んだはいいけど、家まで行くって聞かなくて、止めるのが大変だったな。」

「あぁ、行っても寝込んでるから絶対に迷惑だって言っても聞かなくて、卒業後に場を設ける手伝いを約束して、ようやく治まったんだったな。」


 しみじみ語る皆様、卒業式、休んでしまって、本当にごめんなさい。

 そして、止めてくれてありがとう。

 かなり高熱だったから、来てもらっても、うなされていて、それどころではありませんでした。


「そういえば、佐倉はいつ、進路変えたの?俺、一緒の大学に合格したと思ってたから、ガイダンスの時に居なくて、すげぇ焦ったんだよね。」

 話し掛けてきたのは、クラスでそこそこ話をした男子の南城君です。


「えっと、進路を変えたのは、2年の3学期かな。受かるか分からなかったから、ギリギリまで先生にしか伝えていなかったけど、なんで私がガイダンスにいないと南城君が焦るの?もしかして、ボッチだった?」

「いやいや、実は、大学でのお前の監視とセッティング役をかってでていたから、お前が大学に居なくて焦ったんだよ。教務課に聞きに言ったら、そんな奴居ないっていうし、落ちたのかと林に確認したら、別大に通ってるって分かって、お前の大学、レベル高くて、俺らの仲間で行ってる奴がいなかったからさ。佐々木が、かなり落ちこんでたわ。」


「諒、めっちゃ、素振りしてたな!」

「あいつ、落ち込むたびに素振りしまくるから、手の豆が粒れて、コーチにスゲェ怒られてたな。」


 横を見ると、もはや彼は遠い目で部屋の隅を眺めていた。


 しばらく聞いていた彼は、楽しんでいるなら、もうそれでよいと諦めようだ。

 お開きの時間がくるまで、笑い声は絶え間なく響いていた。




結婚式二次会会場にての暴露大会。

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