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約束したファミレスに入って行き、友人の座っているテーブルまで行くと、友人は勢いよく立ち上がり、緘口一番に、すみませんでした!と大声で謝罪された。
とりあえず落ち着かせ、座らせてから話を聞く。
友人は、噂を流したことを額がテーブルにくっついているかの如く謝ってきた。
そして、私が彼を好きなことは、全く気付いていなかった、むしろ嫌いなのだと勘違いしていたと、グループの友達が言っていたことと同じことを話し始めた。
邪魔をしてしまってごめんなさいと、彼にも泣いて誤っていた。
私も気持ちを隠して、あんな態度を取っていたのが悪いのだと同じ勢いで謝った。
彼には、このお人好しがと、呆れていたが自分の行動も悪いのだ。
それから、彼が友人に質問を始めた。
「何であの日、時間がないから渡したてくれって頼んだ砂を、梨乃に全部渡さなかったんだ?渡していたら、こんな誤解は生じなかったのに。」
え?あの砂は私に全部渡すように、預けたものだったの?と思っていると。
その問いに友人が、
「だって、私も甲子園の砂、欲しかったんだもん。」
と答えた。
隣で、深いため息が聞こえた。
彼はあの日、学校へ報告に来ていて、少しだけ時間が空き、私の靴が下駄箱にあるのを見つけ、私を探して方々を駆けまわってくれたらしいが、見つからず、それでも砂を早く渡したくて、友人に頼んだのだそうだ。
***
この騒動から5年が経ち、私と野球部の佐々木君は、私の職場の近くでマンションを購入し、同棲をしている。
そして、来月頭に、結婚式を挙げる予定だ。
「出来た!」
今日は二人とも休日で、結婚式の準備の大詰めを迎えていた。
出来上がったウエルカムボードを色々な角度から観察し、よしよしと、ご満悦な私。
「なにこれ、絵?砂?手がこんでるな。どうやって作ったの?」
「これ、手作り工房で働いている母さんの友達に教わって、写真見ながら細かく作ってみた。なかなか私、手先が器用でしょ。ムフフフフ、これは、砂だけれど、ただの砂ではないのですよー。なんと、あの甲子園の砂なのです!」
彼が、マジか‼と言う顔をむけて、
「あの砂、まだ持っていてくれたの?」
と、聞いてきた。
「うん、大切な思いが詰まった砂だったからね……なんて、実はクローゼットの奥に封印してあったのを、引っ越しの時に見つけたんだよね。ちなみに、他の持っていた友達も、これを作る話をしたら、探し出してきてくれたのよ。みんな、行き場がないとかで、快く譲ってくれたよ。」
「ははっ、そうなんだ。ありがたいね。しかし、これはすごいな。」
「へへっ、想いがこもっていますから。」
結婚披露宴も終わり、多くの高校の同級生が出席予定となっている二次会会場、その入り口に、ウエルカムボードを設置する。
この砂に想いをこめる。
みんなに幸せが訪れますように、願っておりますと。
砂に願いを。
大学、社会人で、
本編は終わりとなります。