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喫茶店で、コーヒー、カフェオレとオレンジジュースを注文し、カウンターで受け取り、席に着くと、調度、先輩が店に入ってきた。


 私の事を見つけてやってくると、私の隣の席に腰を下ろす。

 私は先輩に、さっき受け取ったコーヒーと砂糖2つを渡す。

 その様子をジッと野球部の彼は見つめ、肩眉をあげていた。

 そして、彼が先輩に話し掛けた。


「あの、2人は、どんな関係ですか?付き合っているとか?」

  私と先輩は顔を見合わせる。


「いや、今はまだ、付き合っていないよ。僕が彼女に、お付き合いを申し込んでいるところ。だからまだ、僕と彼女はゼミの先輩、後輩という関係。まぁ、すこぶる仲はいいけどね。」

 と、先輩が答えた。


 私は少し気まずかった。


「ふーん。今は、まだ、付き合ってない、ね。」

 と、彼は言ってカフェオレを飲み干した。


「君と梨乃は、どんな関係なんだ?」

 と、逆に質問される。


「今はまだ、ただの高校の同級生です。」

 と、彼が淡々と答えた。


「今はまだね。」

 と、先輩は呟き、ゆっくりコーヒーに口をつけた。


 彼は、ジロリと先輩を睨んだ後、私へと視線を移し、問いかけた。


「佐倉は、林さんから俺の事、何て聞いてる?」


 あれ?瞳のことを林さんって、苗字で呼んでいる?

 彼女だよね?


「えっと、高校の時からの友人関係だったけど両片思いで、ようやく最近想いが通じ合って、お付き合いを始めた。彼氏だと聞いてます。」


 そう、誰とは言っていなかったけれど、先程のクラス会で友人が仲良しグループ内で嬉しそうに話していた内容だ。

 結構お酒が進み、私も先輩の事を話してしまった後、トイレから返ってきた友人が迎えに来る彼氏の話をしたのだ。

 誰とは言わなかったから、その時はみんな、昔からの知り合いかな?くらいに思っていただろう。

 私は、彼氏が駅まで迎えに来るという友人の言葉を聞いていて、野球部の彼が迎えに来ていたから、彼が友人の彼氏であると知り得たのだ。


「それは、全部、嘘だ。」

 彼がワントーン落として言い切った。

「へ?」


「俺は、林さんの彼氏じゃないし、高校から、あいつじゃない別の人をずっと想っているからな。」


 なんだ、結局、失恋ではないか……。


 その想い人は誰なのかと聞きたくなったが、聞いてもどうにもならないだろうと、聞くことはなかった。

 これ以上、傷つきたくない。


「そうだったんだ……。」

 下を向き小さく呟いた。

 私の精一杯の言葉だった。


 沈黙する。


 次にどう切り返せばよいか分からない。

 そんな沈黙を破ったのは、先輩だった。


「その想い人って、梨乃の事?」

 と、私に視線を向けて言った。

 その言葉に私は驚き、先輩の顔を見た。


「ああ、あーそうだ。俺はずっと佐倉のことが好きだ。」

 と、彼が続いた。


 へ?


 私は一瞬何が起きたのか分からなかった。

 混乱し固まった。


 しばらくして、視線を感じ、2人が自分をジッと見ていることに気がついた。

 私の言葉を待っているのか?

 我に返り、オロオロする。

 突然のこと過ぎて気持ちの整理がつかず、何て話してよいか分からない。

 どうしよう。

 けれど、早く発言しなければと焦る。


「いやいやいや、可笑しいでしょ。だって、佐々木君は瞳に甲子園の砂を渡してたじゃない。だから私は佐々木君が、瞳の事を好きなんだって、その時知って、合宿で砂の話した時に砂をあげる意味も聞いていたから、想い人が誰なのか分かって……あなたの邪魔をしたらいけないと思って、応援しようと……自分の気持ちは諦めようと、あなたのことを思うのをやめようと……したのに。」

 私は早口で捲し立て、支離滅裂に声に出した。


 言いたかったことは言ったと思う。

 言い終えるにつれて、少しばかり冷静になっていく。


 その言葉を聞いて、驚く彼と、顔をゆがませる先輩。


「諦めたってことは、俺の事を好きだったのか?」

 と、野球部の彼が呟く。


「えっ……うん。」


 沈黙する。


「はぁ~、もっと強引に攻めておけばよかった。俺が教室に会いに行くと、君はいつも、用事があると言って居なくなったり、一瞬で、どこかへ行ってしまったりしていたから、俺の事を嫌っているか、気にも留めていないのかと思っていた。」


 それは、違う。

 言わないと!


「違う。佐々木君と瞳が両思いだと思っていたから、邪魔したくなくて、そんな2人を近くで見ているのが辛かったから。逃げていたの。」


「そうか、そっか、そっかー、好きでいてくれたのか。俺は、卒業式に、最後だから嫌われて散る覚悟で、告白するつもりでいたんだ。でも、君が体調を崩して休みだったから、想いを告げられなかった。でも、どうにかして告白するチャンスを作ろうと、卒業後に色々と手を回して、君に会えるようにセッティングして貰っていたんだけれど、君に一度も会えなくて、やっと今日、君に会えたんだ。」


 私に会えるようにセッティング??

 お誘いって事かな。


「卒業してから、一度もそんな話は無かったけど……どんな誘い?」

  驚いた表情で彼は私を見た。


「えっと、君のクラスの渡辺が主催した。BBQや花見、花火大会。あと、飯田カップルの主催した遊園地、スノボ旅行とかだけど?」

「スノボはクラスの友人から聞いたけれど、用事があって断ったよ。その他は全く聞いていない。」

どういう事だろう?


「ああ、なるほど、あいつが話を止めていたのか。あいつはすべてに参加していたのに、君がこのことを知らないのはおかしい。あいつは、集まりに君のグループの子達も一緒には来ていなかったから、知り合いがいないからと、俺達とよく話しをしていたよ。俺も君の情報が知りたかったから、利用していたけれど、まさか、あいつに邪魔されていたなんて、分からなかった。みんな、あいつと君が仲いいのを知っていたから、あいつに連絡をすれば、君に伝えてくれると思っていたんだろうな。迂闊だった。」




大学時代。

誤解が解けた。

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