穏やかな日々
白色の潮騒が
遠くから聞こえてきて
重く豊かに打ち寄せる波の音が
暗灰色で鳴り始め
一際高いオフセットでもって
明るい空が広がって
そして
私は現実に回帰する
美しい人の
誰に向けたのでもない
純粋な涙
音もなくはらりとこぼれる
それのように
雪が降っている
音はなく風はなく
雪だけが降り
私を満たす
たんすの引き出しの
裏に落ちてしまった
宝物たち
たんすの引き出しには
たくさんの重たいものが入っていて
それらを全部取り出して
たんすの奥の宝物たちを
拾ってあげることができない
けれど確かに
宝物たちは
たんすの奥で息づいている
その微かな息づかいは
私の気持ちを穏やかにしてくれる
波打ち際、ちゃぷ、だぷ、
がぽん、ぴしゃん、ぴんしゃ、
絶え間無く、寄る辺なく、
いつも同じに、いつも違って、
響く音。寄せる波。
世界の始まりから
いつか終わる時まで
変わらないもの
凪いだ海
逢魔が時の
どこか優しく
なぜか侘しく
世界から切り取られたような時間
髪から雫を垂らし
脛までを海に浸けて
君が振り返る
あどけない表情の隣を
溶けて落ちる太陽が飾る
紫の浸食が始まる橙の世界に
溶け込む様に存在する神聖なもの
胸が詰まる
この一枚は僕の中で永遠となる
君という思い出を僕の中で積もらせて
やがて来る死の旅路への伴としよう
僕に残された生はすべて
君の為に捧げよう