表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼女転生  作者: デブリ
八章・渡航編
187/203

第百二十三話 『祭りに潜む影』

 

「これは貴様の招いた結末だ、デヴィン」


 そこそこイケメンな青年がメタボな中年親父に剣の切っ先を向けながら断言する。両者はまるで対照的で、片や薄汚れた軽装鎧に身を包み、片や豪奢な礼服と王冠を被っている。


「余の自業自得だと? 戯けっ、政治を理解できぬ愚か者が!」


 国王デヴィンの叱声は野外劇場に大きく響き渡った。

 役者の演技力はかなりのもので、後ろの方の席にいても緊張感が伝わってくる。半円のすり鉢状になった円形劇場の客席は満席で、後ろの方には立ち見している人もいる。


「余は王としての務めを果たしてきたっ、国をより強く美しくすべく骨身を削ってきた! だというのに貴様等のような愚物はそれを理解せぬどころか、余の邪魔をして国家を危機に陥れておる! 恥を知れっ、反逆者共!」

「貴様が民のためを想い、正しく力を揮っていれば、俺たちも立ち上がりはしなかった。貴様がしていることはただの独り善がりの暴走だ!」


 ローレルを訪れて四日目、翠風期第三節二日の本日は朝から快晴で、昼近い現在は結構暑い。この劇場だけでなく街はどこも人混みなのが体感温度の高さに拍車を掛けている。カラッとした低湿な暑気なので、不快感は少ないのが救いだ。


「国とは民であり、民なくして国はない。民を蔑ろにする貴様に、王たる資格はない!」

「お前も貴族とはいえ所詮は最下級の端くれか……これだから下賤の輩は何も分かっておらぬな。国とは民なぞではないっ、余のことである! 王なくして国は成り立たぬ! 余は王であり、すなわち国家そのもの! 余は余のためにすべきことをしたまでよっ!」


 朕は国家なりって、お前どこの14世だよ……。

 『エミルク王国誕生物語』という何の捻りもないド直球なタイトルのこの劇は、その名の通りここエミルク王国が如何にして興ったのか、大衆にも容易に理解できるノンフィクションものの劇作だ。

 建国記念祭ということで無料上演しているようだが、なんかプロパガンダ臭い。旧王国の王様は如何にもな悪役だし、主人公のエミルクは絵に描いたようなイケメンの好青年だ。まだ建国から百年も経たない国で、反逆者が初代国王だったもんだから、現政権の正当性を主張することで治世を安定させようとしているのではないか。

 心の穢れた俺はそういう見方をしてしまって、いまいち劇に集中できないが、心の清らかな子たちはかなり見入っている。リーゼもルティもサラもウェインも釘付けだ。まあ劇としての完成度は高いと思うし、無理もない。


「その結果がその有様か。それほど醜く肥え太り、無駄に着飾ることがすべきことだと?」

「王とは斯く在るべし。余の姿こそが富国の象徴である。それを諸外国に知らしめねばならぬ。外交を知らぬ下等な愚か者共には理解できぬであろうがな」


 あの王様の一家、パンがなければケーキを食べればいいじゃないとか言ってたんだろうな。だから革命フラグが立っちゃったんだよ。


「もういい。せめて最後に懺悔させてやろうと思った俺が馬鹿だった」

「王は懺悔などせぬっ、王の行いは全てが正しいのだ!」


 玉座にふんぞり返って傲慢に言い放つ王に、追い詰められた者の焦燥感は見られない。堂々とした振る舞いは、そこはかとなく王者としての威厳が伝わってこないこともない。


「やはりこれは貴様の招いた結末に他ならない。貴様はその歪んだ思想に溺れ死ぬんだ。覚悟しろ、一撃では殺さん。これまで民が受けてきた痛みと苦しみ、死ぬ最後の瞬間まで味わってもらう!」


 この革命軍、結構残酷なこと言うし、やるんだよね。さっきも土下座して命乞いする王女に投身自殺を強要させてたもん。そのくせ『ざまぁみろ』としか思えないような性悪王女だったから、旧王家は絶対悪って構図が強く感じられた。

 これがプロパガンダにしろ何にしろ、子供の教育にはちょっと悪いよ。

 そんなことを思っていると、舞台上に大勢の兵士たちが現れた。どいつもこいつも雑兵とは一線を画する壮麗な全身鎧と立派な槍を装備しており、強者のオーラを醸し出している。


「ふはははっ、馬鹿が! 余が時間稼ぎをしていたとも知らず、どこまでも愚かな男よ! 親衛隊っ、そこの不届き者を誅殺せよ!」

「かしこまりました」


 一人だけマントを羽織った鎧の男が恭しく応じ、片手を挙げると、全身鎧たちがエミルクを半円形に取り囲んだ。実際はぐるりと全周を囲ってるつもりだろうけど、客席側にまで兵士がいると主人公の姿が見えなくなっちゃうからね。舞台演出上の都合ってやつだろう。

 周囲から一斉に槍の穂先を向けられ、さしもの主人公も絶体絶命といった様子に見える。


「お前の先ほどの言葉、聞こえていたぞ。私も簡単には殺さん」

「いいぞゴルドーッ、そこの愚か者に身の程を弁えさせてやるが良い! いや、そうだっ、やはり殺してはならぬぞ! じわじわと追い詰めて、ボロ雑巾のようにしてやるのだ! 虫の息となったところで磔刑に処し、民の前で火炙りにしてくれるわっ!」


 ゲスい王様の言葉を背に受け、鎧マントの隊長ゴルドーは槍を部下に預けて、包囲網の中に入っていった。

 あの隊長さん、実はいい奴なんだよね。これまで合間合間に王様サイドの描写があって、あの隊長は国を憂う善良な騎士として、このまま愚かな王に付き従っていていいのかと懊悩していた。俺を含めて観客たちはそんな裏事情を知っているから、主人公が追い詰められてもあまり危機感はない。


「いくぞ! お前の覚悟が本物であれば、見事私を打ち倒してみせろっ!」


 ゴルドーは叫びながら腰の剣を抜き、真正面からエミルクに斬りかかっていく。

 あの隊長は自分を倒して欲しいのだろう。しかし、手加減はできない。それは騎士としての矜持が許さないし、エミルクが王を討つに足る男でなければ、国が一層混乱して民が苦しむことになる。だから一騎打ちという状況を作り出すことで、エミルクを試すと同時に、あわよくば自分が死ぬ展開を――騎士として殉じる結末を期待している。

 そんなことがこれまでのゴルドーの言動から、容易に想像できた。なかなかいい脚本だと思う。子供には少し難しいだろうが、あくまでもゴルドーは敵サイドだから、敢えて大人にだけ分かるような演出にしているのかもしれない。不器用な憂国の騎士といった味のあるキャラは子供より大人に受けるだろうしな。


「あ、あああぁぁぁっ、頑張れエミルクー!」


 隣で観劇するリーゼは立ち上がって応援し始めた。が、後ろの人の迷惑だから、サラがすぐに座らせた。それでもリーゼは「いけっ、やれっ、そこだー!」などと劇に夢中だった。きっとこの子はゴルドーの真意を理解していない。

 リーゼだけでなく、あちこちからエミルクを応援するような声援が上がり始めた。多くは子供や女性たちで、みんな劇に見入って盛り上がっている。それも無理からぬことだと思う。


「凄いわね。真に迫ってて、本当に戦っているみたい……」


 などとクレアが感嘆するほど、エミルク対ゴルドーの戦闘シーンは凄まじいのだ。前世ではあり得ないレベルの剣戟で、時代劇のチャンバラが子供のお遊びに見えるレベルのクオリティだった。俺から見てもガチのマジで殺し合いをしているようにしか見えない。


「お前の力はこんなものかァ!?」

「うおおおおおおおおおおおおっ!」


 台詞に込められた感情は生々しく、緊迫感ある必死さが伝わってくる。剣と剣がぶつかると、甲高い音と共に火花が散って、それが連続して何度も、緩急を付けて行われていく。動きも変化に富み、飽きさせない。何よりリアリティを感じさせるのが、エミルクの傷だ。手足や頬に小さな傷が幾つも刻まれ、実際に血が流れているものだから、本当に死闘を繰り広げているようにしか見えない。まあ、あの程度の傷なら中級の治癒魔法一発で全部一気に完治するレベルだから、演出なのは分かりきっている。

 あの常人離れした身体能力の剣戟シーンは、演技とはいえ一流の戦士にしかできない芸当だろうから、賞賛に値する。ただ、ユーハの戦いを見たことがあると、少し物足りなさを覚えるけどね。


「ユーハさんから見て、あの剣戟はどうです?」


 後ろの席に座る本職の剣士を振り返って尋ねてみた。

 眼帯のオッサンは顎に手を当てて観劇しており、「うむ」と感心するように何度か頷いている。


「なかなかのものであろうな。両者共に良い剣士である」

「ユーハさんから見ても演技には見えないほどってことですか?」

「それなりに実力ある武芸者であれば、あれが実戦的な立ち回りではなく、見せるための演武であると気付けるが、逆にそれ以外の者には真剣勝負にしか見えぬであろうな。現に実剣を使用し、傷まで負わせておる。あれほど高等な演武となると、相応の実力者同士でも大変な危険が伴う」

「なるほど。それなら、どちらか一方でもしくじれば大惨事になりそうですね」

「うむ。ただ、演武は事前に決められた手順通りの動きで進行していく故、よほど呼吸が乱れぬ限りは大丈夫であろう。あれは互いの実力を熟知し、信頼し合っておるからこそ可能な芸当のはず」


 ユーハは説明してくれながらも舞台からは目を逸らさず、真剣に観劇している。プロも認める凄い剣戟なら、いつまでも目を逸らしているのはもったいなく思えた。今がこの劇で最も盛り上がるシーンだろうしね。


「――っ!?」


 舞台に目を戻そうとした直前、ユーハが不意を突かれたように息を呑んで目を見張った。俺は決着の瞬間を見逃したかと焦りつつ急いで舞台を見遣る。

 青年の首元に剣がめり込んでいた。

 致命的なまでに、明らかに刀身が首に埋まっていた。


「え……?」


 一瞬、目の錯覚かと思った。

 おそらく水平斬りのような一撃だったのだろう。ゴルドーの剣はエミルクの首を半ばほど切り込んだところで静止している。観客たちは決着と見て「おおおおおおっ!」と歓声を上げかけたが、何やら不穏な気配に気付いたのだろう。今し方までの盛況っぷりが嘘のように静まり返り、唖然と舞台を見つめていた。エミルクもゴルドーも硬直していて動かない。

 高度な演出による迫真の演技だ……と思いたいが、主人公の方が致命傷負っちゃってるし、劇場全体の凍り付いた空気が不安を煽る。だから俺は見間違いかと思いたくて、よく目をこらしてみた。

 なんか血が流れ始めてるのが確認できて、余計に目の錯覚だと思えなくなってしまった。


「エミルク負けちゃった……?」


 リーゼが呆然と呟くと、その言葉を証明するかのようにエミルクの首ががくりと落ちた。既に頸骨まで断たれてしまっていたのだろうが、残りの皮膚や筋組織のせいで、ぶらりと奇怪に項垂れた格好となってしまっている。

 かと思えば、すぐに身体全体がばたりと倒れ込んだ。真っ赤な血が見る見るうちに舞台上に広がっていく。


「――きゃあああああああああああああああああっ!?」


 どこかで甲高い悲鳴が上がると、それを皮切りに観客たちが一斉にざわめき出した。

 

「な……な……なんでお芝居なのにエミルク死んじゃうんだぁ!? ゴルドーぶっ殺してやるぅっ!」


 リーゼが飛び出そうとしたので咄嗟に〈霊引ルゥ・ラトア〉で引き止めた。

 芝居だと認識しつつも不幸な事故だと思えないあたり、多分に私怨の混じった義憤だと分かる。それなりに感情移入して見入っていただろうから、あの死に様は去年の一件を強く想起させられたはずだ。冷静さを欠くのも無理はない。


「あ……あ、ぁ……」


 サラが心配になって様子を窺ってみると、取り乱してこそいないが危うい感じだった。愕然と目を見開いて喘鳴のようなか細い声を漏らしている。案の定、それはすぐに過呼吸となり、背中を丸めて苦しみ出した。


「サ、サラ、大丈夫!?」

「おいしっかりしろっ、トレイシーこれどうすんだ!?」

「まあまあ、そう慌てずにねぇ。落ち着くためにも、まずはこの場を離れなくちゃねぇ」


 メルとウェインは狼狽しているが、トレイシーは余裕がありそうだ。あっちは任せて大丈夫だろう。


「このぉっ、ふざけるなぁ! エミルクの仇はあたしがとってやるっ!」

「リーゼ落ち着いて! あれは事故だからっ、わざとじゃないの! 仇なんて取らなくていいから!」


 〈霊引ルゥ・ラトア〉で前に進めずその場で暴れるリーゼをクレアが抱き留めている。

 幸いにも前の人が立ち上がっているおかげで、幼女の背丈では既に舞台までの視線が通らず、状況を確認できない。もしゴルドーを視認できていればリーゼは魔法を使おうとしたかもしれないので、客席の混乱は有り難かった。


「ふむ、果たして本当に事故かの? 小僧はどう見る?」


 目深く被ったフードの下から紅い眼差しを向けられ、ユーハは悩ましげな面持ちとなった。


「一瞬、エミルク役の方に不自然な硬直……否、動きの乱れ……いずれにせよ何か違和感があったように思う。事故にせよ、人為的な事件にせよ、痛ましいことであるが……」

「んなことより早くここを離れるわよっ」

「アタシが先頭を行くわっ、みんなはぐれずついてきてね!」


 セイディの的確なツッコミに続き、ベルがその立派な肉体で先導を始めた。客席の人たちは野次馬根性から前に行こうとする人とこの場を離れようとする人でごった返しており、身動きが取りづらい。女子供ばかりの俺たちは魔法を使わなければろくに移動できないほどだ。が、今ここで魔法なんか使って悪目立ちしたら犯人扱いされるかもしれないので、ベルが道を切り開いてくれなければ人波に揉まれるだけとなっていただろう。


「みんな手を繋いでっ、イヴはローズを抱えて!」

「あ、はいっ」


 クレアの指示を受け、イヴが慌てたように俺を抱っこしてくれた。俺は片手だから、みんなで鎖みたいには繋げないからね。申し訳ない。

 先ほどまで暴れていたリーゼは一転して大人しくクレアに抱えられていた。というか眠っている。先ほどクレアが〈誘眠撃タス・ピリィ〉を行使していたので、然もありなんといったところだ。


「なんだか大変なことになってしまいましたね……」

「ええ、本当に……あの様子だと天級の治癒魔法でも治らないでしょうし、可哀想ですね」


 イヴの痛ましげな呟きに同意しつつ、俺は嫌な予感を覚えていた。

 ゼフィラではないが、もしあれが当人たちのミスによる不幸な事故でないとしたら、非常に危険だ。だからこそ、今は目立たず人波に紛れて、一刻も早くこの場を離れるべきだった。

 俺たちは喧噪を掻き分け、どこか一息吐けるところへと向かっていった。




 ♀   ♀   ♀




 エミルク王国の港町で最も栄えているローレルは立派な港湾都市だ。

 だから建国記念祭という国を挙げてのお祭りともなれば、どこもかしこも人だかりとなる。よほどの小道でない限りは露店が軒を連ねているし、広場や公園は様々な催し物によって人混みになっている。曲芸集団の巨大テントが張られていたり、即席の闘技場として鉄柵と結界魔法に囲まれた中で拳闘が行われていたり、移動遊園地なのか普段は見掛けない大掛かりな遊具が設置されていたり、とにかく人と物に溢れている。

 ちょうど昼頃なせいで酒場や喫茶店や食堂は満席で、開きっぱなしの扉から覗き見えた酒場の中では床に座り込んでメシを食っている人も大勢いた。近隣の小さな町や村からお祭り目当てで訪れる人は多いだろうし、それを商機と見た商人も集まって来て、普段より人口密度は何倍も高くなっているはずだ。


「うぅ……なんか気持ち悪い……」


 ひとまず宿泊先の高級宿に避難し、ロビーで一息吐いていると、ルティが弱々しい呟きを零した。俺は歩み寄って茶髪の頭を優しく撫でながら特級治癒魔法を行使する。


「大丈夫ですか?」

「うん、ありがとう……でも、ぼく……人多いところ、もう嫌だ……」


 あの劇のショッキングなシーンの直後に人混みに揉まれれば、気分も悪くなって当然だろう。見るからに疲れた様子だ。今日のルティはツインテールなのに、元気がないから可愛さが半減しちゃっている。

 俺はイヴに抱えられていたので割と元気だが、他のみんなは程度の差こそあれ疲労感が見られた。泊まっている部屋は四階なので階段を上がる気力も乏しいのか、みんな広々とした一階ロビーに設置されたソファに腰を預け、小休止している。


「……ったく、何だったのよアレ」

「事故ならいいけど、事件だったら少し不味いかなぁ」


 ぐったりと溜息を吐く美天使に対して、ダウナー姉さんは普段通りのユルさで応じている。さすがは見かけによらない肉体派だ。あの程度では疲れないらしい。


「あの……事故でも良くはないと思いますけど……」

「んー、メルはいい子だねぇ。まあ確かに良くはないんだけどさぁ、事件よりはマシって意味でねぇ」

「さっきのアレ、観客か誰かが何かしたから起きたのか?」


 ウェインが誰に向けるでもなく疑問を呈したので、俺は考えを纏めるついでとして口を開いた。


「可能性としては十分あり得るでしょうね。特に結界魔法は張ってなかったですし、みんな劇に夢中でしたから、客席の人混みの中で詠唱しても気付く人はそういないでしょう」

「ローズは何も感じなかったのか?」

「まあ、感じなかったといえば感じなかったですし、感じたといえば感じましたし……」

「は? なんだそりゃ?」


 魔動感のことは公共の場であまり口にしたくはなかった。が、幸い今この宿の一階には他の客の姿はない。先ほどまでの人混みとは対照的なまでに閑散としていて、ゆったりと落ち着いた雰囲気だ。ここはローレルで最もグレードの高い宿であり、現在は入場制限が掛かっているおかげで、部外者は入ってこられないのだ。

 受付の人の説明によると、この宿には普段から見物客がよく来るという。実際、俺もこんな立派なホテルはこの世界では他に知らず、八階建ての宿とか初めて見た。ローレルにおける観光名所の一つになっているという話も納得の高級ホテルだ。

 普段から正面玄関には常に守衛を配していて、身形さえまともなら一階ロビーに限り誰でも出入り可能としているらしい。が、現在は建国記念祭の期間だ。この時期は街の外から多くの観光客が来ることに加え、街はどこも人ばかりで落ち着ける場所が少ない。そんな状況で入場制限も掛けず解放してしまえば、観光客の休憩所となってしまうのは想像に易い。だから現在は宿泊客とその連れしか入れないようになっている。

 俺たちは祭りの期間前にローレル入りしたが、そのときには既に宿はどこも一杯だった。しかし幸いにも、この高級ホテルで予約のキャンセルがあったらしく、八人までの大部屋を一室だけ借りることができた。ホテル代はかなりお高かったが、お高いだけあって従業員の質は良く、内装も綺麗で、サービスも充実している。現に一階ロビーのあちこちには〈氷盾ド・スア〉の氷壁が幾つか立っているおかげで、屋外とは一転して涼しく、先ほどまで掻いていた汗も今は引いている。

 とにかく、今この場には俺たちとホテルマンしかいない。それでも念のため、魔動感や魔力波動といった単語は使わずに、言い訳めいた説明を続けることにした。


「いえ、ただでさえ街中だとあちこちから微弱なのを感じるのに、今はお祭りで色々やってるじゃないですか。特に魔法体験とか、魔法具を利用した遊具とか。もう普段の数倍あちこちから感じて、よほど強力なやつじゃない限り、いちいち気にしてなんていられないんですよ」


 魔法体験というのは、その名の通り魔法を体験できる有料イベントのことだ。魔法の使えない庶民にとって、魔法がどんなものか実感できる機会はほとんどない。だから安全に魔法をその身に受けて体感できるイベントは人気らしい。危険度の低い魔法として、幻惑魔法や〈霊斥ルゥ・ルペリ〉や〈影縛ドイ・ドゥシ〉などの一部の闇魔法が体験できるそうだ。


「お前それ大丈夫なのか?」

「まあ、気疲れはしますけど、大丈夫です」


 不意に襲われるんじゃないかという不安が全くないといえば嘘になる。しかし、みんなと一緒にいれば幾らか心も落ち着くので、問題になるほどではない。


「それより、事件だったら本当に不味くないですか? 街を旧王国派みたいな連中に占拠されたり、覇級以上の魔法をぶっ放されて大量虐殺とか、何か大事になったりしないでしょうか?」

「……どうして?」

「ローズもやっぱり疲れてる? もしさっきのアレが事件だったとしても、そこまで心配することないよ」


 ルティは小首を傾げ、メルが穏やかに気遣ってきた。幼女は仕方ないにしても、メルはちょっと平和ボケしすぎてるな。いや、メルはこれでいいのか。


「いえ、メルさん、ローズさんの懸念は強ち間違っていないと思います」

「え? どういうことですかイヴさん?」

「あの劇は旧王国を悪、現王国を善として、分かり易い勧善懲悪ものとなっていました。既に建国から百年近くが経っているとはいえ、旧王国の残党や現王国に面従腹背の諸侯が皆無とは言えないでしょう。そういった者たちからすると、先ほどの劇は決して面白くないはずです」


 もう百年近くとはいえ、まだ百年近くだ。当時生きていた世代の人たちはほぼ全員亡くなっているだろうが、国家や民族への恨み辛みってのは子や孫へと伝わり、世代を超えて受け継がれていくことが多い。特に二世や三世はその傾向が顕著だろうから、その点で考えれば建国から九十年という時期は非常によろしくない。

 現王国を憎む旧王国派が存在して、そいつらがテロを画策していても何も不思議なことはないだろう。建国記念祭など旧王国派からすれば屈辱の極みだろうし、蜂起するには絶好の機会だ。ローレルは国内最大の港町という経済の要衝なので、ここを押さえることができれば、現王国にとっては大きな痛手となる。


「じゃあ、そいつらがエミルク役の奴に何かして、わざと失敗させるようにしたっていうのか?」

「単純に失敗したってよりかはそっちの方が納得できるわね。あの役者だって、ああいう事態にならないように死ぬ気で練習してきたはずだし、途中まではめっちゃ順調だったし」

「そうね……〈霊引ルゥ・ラトア〉や〈幻墜ルー・ムァフ〉みたいな魔法を使われて、失敗を誘発させられたと考えると、どうしてもしっくりきてしまうわね」


 セイディに続き、クレアも頷いている。

 尚、リーゼはまだ眠っていて、クレアに膝枕されている。サラはすっかり落ち着いて今はソファにぐったりと腰掛けている。憔悴とまではいかないが、ルティより元気がなさそうで会話に入ってくる様子はない。


「ローズは分かんなかったらしいけど、ゼフィラはどうなのよ? 誰かが魔法で何かやった感じあった?」

「妾もそこの小童同様、普段はさして気に掛けておらぬからの。この祭りのせいで〈霊引ルゥ・ラトア〉やら〈幻墜ルー・ムァフ〉やらも断続的に少なからず感じ取れる」

「じゃあアンタの目で見た感じの所見としてはどうなのよ?」


 セイディの続けざまの問い掛けに、ゼフィラはどっかりとソファに腰掛けて腕組みした状態で、肩を竦めてみせた。


「ま、少なくとも当人の不始末とは思えなかったの。何らかの外的要因が働いたのであろう。それが魔法なのか、故意によるものか、何者の仕業なのかまでは知らぬがな」

「うむ……某もゼフィラ殿と同意見である。何度思い返してみても、どうにも不自然に思えてならぬ。しかし、知覚外から不意打ちを喰らったのだと思えば、あの一瞬の硬直も得心がいく」


 知恵袋と専門家が揃って証言している以上、あれは事故ではないのだろう。

 みんなの間に緊張感が漂うのが分かった。みんなといっても、お祭り二日目の今日はミリアとツィーリエとライムとソーニャが船で留守番している。当然、アシュリンとユーリも。


「クレア、どうするぅ?」

「……ローズの言うように、本当に街が占拠されたり、大量虐殺が起きるとまでは思わないけれど、何か不穏な感じがするのは確かね。早めに出港した方がいいかもしれないわ」


 予定では第三節八日目に――六日後に出港することになっている。既に食料品など必要物資の手配は完了していて、あとは船に届けてもらうだけだ。これは出港の前々日を指定している。長旅に備えて、前日はゆっくりしておきたいからね。


「そうなると、キロスさんたちに事情を説明してお願いしないといけませんよね。それでもあまり繰り上げられないでしょうから、早くといっても食料品の届く四日後くらいですか?」

「ええ、そうね……あまり変わらないかしら? セイディはどう思う?」

「うーん、まあ用心するに越したことはないですからね。出港を少し早めた上で、用心して過すのが良さげだと思います」

「そうだねぇ、何かあってからじゃ遅いしねぇ。なるべく催し物や人混みには近付かずに、あとはのんびり街を散策したり、美味しいもの食べたりして、大人しくしておくのが無難だろうねぇ」


 大人たちは悩ましげにしつつも互いの意見に頷き合っている。このままフェスティバルをエンジョイしない方向で話は纏まるだろう。

 俺が言うのもなんだが、少し心配のしすぎと思わなくもない。しかし、トレイシーの言うように、何かあってからでは遅いのだ。去年あんなことがあったばかりで、またぞろ何か不幸が起きては目も当てられない。最近はようやくみんな調子が戻ってきて、順調に新天地シティールへと近付けているのだから、警戒しすぎるくらいでちょうどいいはずだ。


「はい。というわけで出港を早めて、残りの滞在期間は大人しくすることに決まりました。異議ある人は挙手してー、聞くだけは聞いてあげるわ」


 大人たちの話し合いが終わると、代表してセイディがそう宣言した。

 相変わらずお姉様想いの美天使だ。ないとは思うが、万が一誰かから文句が出た場合、クレアの代わりに言いくるめてやろうとでも思っているのだろう。

 しかし案の定、誰も反対したりゴネたりはしなかった。最もそうする可能性の高い幼狐が寝ちゃってるからね。ルティもウェインもサラも、もちろん俺も、あまり我が侭の言わない物分かりのいい子たちだ。

 だからこそ、大人としては余計に心苦しいのだろう。クレアがみんなの顔を見回して、申し訳なさそうに言った。


「みんな、窮屈な思いをさせてごめんなさい。どうしても全員で無事にシティールまで行きたいから……明日からのお祭りも楽しみにしていたと思うけれど、我慢してね」

「べつに俺は我慢とか思わないからいいけど、リーゼは何か言いそうだな」

「ぼく、人いっぱいいるところは、しばらく行きたくない。だから我慢にはならない」

「……わたしも、少し疲れたわ。もう出港までこの宿でゆっくりしてたいわ」


 ウェインとルティに続いて口を開いたサラも、不服そうな様子は皆無だ。三人とも本心からの言葉だろうし、それを伝えることがクレアたちの心を安くすることになると分かっているのだろう。だからこれまで沈黙していたサラもここにきて発言したはずだ。

 みんないい子だね。

 こんな姉妹や友人に恵まれている俺は幸せ者だよ。


「ローズは大丈夫? 最近はずっと船でお留守番だったから、街を出歩くの楽しみにしていたけれど……」

「大丈夫です。あんなことが起きた後だと、さすがに微弱なのでも感じると、警戒せずにはいられませんからね。みんなで大人しくすることにならなくても、私は一人で船か宿に引きこもってたと思います」


 本心からの言葉だが、後半は微妙なところだ。みんなと一緒なら少しは気も楽になるので、みんなが街に繰り出すなら、俺も同行しただろう。だが所詮はたらればの話だし、嘘というほどでもない。クレアが愁眉を開いてくれるなら、こまけぇこたぁいいんだよ。


「リーゼは少し心配だね……ちゃんと納得してくれるかな?」

「リゼットさんなら、美味しいものをたくさん食べさせてあげれば、割とすんなり納得してくれるでしょう」


 憂色の滲んだメルの呟きにはイヴが反応した。が、その口調は冗談めかしたものではなく、表情まで生真面目な声で真剣に言うものだから、何だか少しおかしかった。みんなも少し笑っている。


「ウフフ、そうね。リーゼちゃんも賢い子だから、きっと分かってくれるわぁ」


 ベルが慈母の笑みを浮かべて眠るリーゼを見つめながら穏やかに頷いている。他のみんなも決して暗い様子ではなく、むしろ雰囲気は和やかだ。

 予期せずして不安を煽られる事態にはなったが、みんなと一緒なら何が起きても大丈夫だ。素直にそう思えたおかげで、俺もあまり不安になることなく微笑んでいられた。


「よっし、んじゃちょっと宿の人におすすめの店とか聞いてくるわねー」

「あ、私も行きます」


 もうすっかり普段通りの快活さを取り戻したセイディと共に、フロントに向かう。

 こうして、俺たちはローレルでの予定を変更し、大人しく過すこととなった。ミリアたちの意見は聞かず勝手に決めちゃったけど、事情を話せば分かってくれるだろう。




 ♀   ♀   ♀




 俺たちは金持ちだ。

 《黄昏の調べ》の装備品を売却して得た大金だけでなく、多くの魔石や魔法具を船に積んでいるので、いざというときは換金できる。旅費に余裕はたっぷりあるので、特に倹約する必要には駆られていない。

 とはいえ、浪費は避けるべきだ。金があるからといって、ぽんぽん使っていてはすぐに底をつく。高級ホテルしか空室がなかったのなら、諦めて船で寝泊まりするのが正しい判断だろう。ブルジョワな金遣いは子供たちの金銭感覚を狂わせかねず、教育にも悪い。

 クレアたち大人組だってそう考えてはいるはずだが、船旅生活ってのは何かと窮屈で、無自覚のうちにストレスが溜まっていくものだ。特に船内のベッドはどれも館で暮らしていた頃のより格段に狭く、船体の不規則な揺れもあるせいで、なかなか快適に安眠できない。


「あー、やっぱりふかふかでいいですねー」


 就寝準備を終えると、俺は広々としたベッドに飛び込んだ。

 さすがは高級ホテルだけあって、程良い弾力のふかふかベッドは大きく、セミダブルくらいある。それが壁の両側に四つずつ、ずらりと並んでいる。館のベッドにも負けず劣らず寝心地が良いので、この街に来てからは良質な睡眠が取れていると思う。


「うむぅぅぅぅぅぅっ、旧王国派とかいう奴は許せんぞぉー!」


 リーゼも自分のベッドに勢い良く飛び込み、枕を抱えてゴロゴロ転がり始めた。予定変更については一応受け入れてくれたが、まだ不満たらたらだ。だから俺も明日の予定はまだ言えていない。

 というのも、明日は長距離転移の実験として各地を訪問しようと思っている。みんなが警戒しつつ大人しく過してくれるなら、俺も安心してみんなの側を離れられるからね。これも良い機会だ。

 とりあえずフェレス族の央郷トバイアスを訪れて、メリーに会う。その次は館に行って、婆さんたちのお墓参りをする。最後にエノーメ大陸で最も長期間を過した街リリオに行き、ガストンやテレーズに挨拶する……なんてことをリーゼに知られたら、間違いなく羨ましがられて、挙句の果てには拗ねられそうだ。

 今はまだ時期じゃないので、機を見計らって言うしかない。


「寝る前になっても元気な奴だな……」

「ぼく……もう、すごくねむぃ……」


 ウェインの呆れた眼差しには少々の眠気があり、ルティに至っては既に目蓋が落ちかけている。最年少の幼女はメルに促されてベッドインすると、まだ消灯もしていないのにすやすやと眠り始めた。


「はい、もう明かり消すわよー」

「セイディとクレアは今日も夜更かしなのか!? ずるいぞーっ!」


 まだ大人が就寝するには少し早い時間なので、クレアとセイディはベッドに入らない。

 この高級ホテルの各室はワンルーム構成にはなっておらず、寝室とリビングにスペースが分かれている。隣のリビングにはソファやテーブルの他に本棚やボードゲーム、ダーツなどの娯楽用品があり、先ほどもみんなでダーツをして遊んでいた。


「はいはい、大人はずるいずるい。子供はさっさと寝なさいな」


 セイディも慣れたものなので適当に言い返すが、今日のリーゼはフラストレーションが溜まっているせいか、枕に幼狐神拳を叩き込みながら我が侭を言い始める。


「ずるいずるいずるいーっ、アタシも夜更かしして美味しいもの食べながら遊ぶんだーっ!」


 昨日までは『明日に備えて早く寝なさい』という言葉を素直に聞き入れていたが、もう明日からはお祭りを楽しめない以上、早くも娯楽に飢えを感じ始めているのだろう。


「アンタねぇ……夜更かしすると背が伸びないのよ? 大人になっても小さいままでいいわけ? 将来はアルセリアさんみたいに大きくなりたいでしょ?」

「なりたいに決まってるだろー!」

「じゃあ大人しく寝ときなさい。夜更かしは大人になったら好きなだけできるから」


 パチッと壁際のスイッチを押して魔石灯の明かりを消し、セイディは寝室をあとにした。低質な光魔石による常夜灯は点いているため、うっすらと視界は利く。


「背が伸びたといえば、最近サラは結構大きくなってきたよね」


 メルが自分のベッドに入りながら微笑ましげに金髪美少女を見た。注目された当人も今まさにベッドに入るところで、「そう?」などとあまり興味なさそうな反応を返している。

 来期で十二歳になるサラの背丈は既に百五十レンテを超えており、これから更にどんどん大きくなっていくだろう。胸元はまだ全然だけど……。


「じゃーみんなで勝負だーっ、将来は誰が一番大きくなるか!」

「まあ、順当にいけばウェインでしょうね」


 基本的には男の方が身体が大きいし、ウェインは特に華奢でも小柄でもない。たぶん将来は普通に大きくなるだろう。


「俺はべつにしてやってもいいけど、どうせ大人になってもリーゼが一番チビだろ。お前年下のルティよりチビだし」

「チビって言ったなぁ!? いつもあたしが一番いっぱい食べてるんだからっ、将来はあたしが一番大きくなるんだ! 大人になったらウェインのことチビって言ってやるから覚えてろー!」

「リーゼ、もうルティ寝てるんだから静かにしなさい」

「分かったー、じゃああたしも寝るー。いっぱい寝て一番でっかくなるんだ」


 先ほどまでの不満っぷりはどこへやら、幼狐はそそくさと掛け布団を被って大人しくなった。最近はルティという妹分のおかげで、リーゼも少しは落ち着いてきた気がする。といっても、まだまだ元気で、俺たち子供組の中では断トツで騒がしいが……。


「おやすみー」


 というリーゼの言葉に、みんなそれぞれ「おやすみ」と言い合う。

 それからは夜に相応しい穏やかな静けさが室内を満たした。リーゼは相変わらず寝付きが良すぎて、微かな寝息から早くも眠りに就いたことが分かる。

 俺もさっさと夢の世界に旅立つことにした。ベッドがふかふかで寝心地がいいから、リーゼほどではないが普段より微睡みに沈みやすくて、深い眠りに就くことができるんだよね。

 本当は昼間の劇のこととか、この国のこととか、今後の安全とか、色々と考えたいことはある。だが、成長を犠牲にするほどではない。明日起きてからでも問題はないだろう。今考えちゃうと、エミルク役の人が死んじゃったときのことを夢に見ちゃいそうで怖い。どうせ見るなら幸せな夢がいい。きっとこのふかふかベッドならいい夢を見させてくれるはずだ。

 というわけで、俺は早々に眠りに落ちていった……。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=886121889&s ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[気になる点] 無詠唱化は行使回数が増えるほど困難になる。 まだ無詠唱化できていない転移魔法の実験わ大丈夫ですか? [一言] 更新楽しみにしています! が作者様の無理のない範囲で頑張って下さい。
[良い点] 更新ありがとうございます。 ろぉず成分が補充できて嬉しい。 [気になる点] >ローレルを訪れて四日目、翠風期第一節二日の本日 >予定では第一節八日目に と書いてありますが、 第百二十二話…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ