エルフが現れた。2
馬車を走らせ急ぎエルスヴァンへと向かう。
なぜエルスヴァンなのかという問いに、補給線より火力とゴブリンは答える。
火力、兵力でなく火力と言うのだから、エルスヴァンの他を置いてないのだけど、何故かと尋ねる。
「奴、エルダーナに二つ名が存在しないのが気になる。」とゴブリン。
二つ名。この世界では名前と苗字の組み合わせではなく、名前と二つ名の組み合わせで人を認識する。
例えば私、ヒュートレッド・ワーガイア。ヒュートレッドが名前で、ワーガイアが二つ名。
だから二つ名のない人物、例えばレッドの様に、二つ名はなく名前だけで認識することもよくある。
とはいえ、王族ともなれば二つ名は苗字という認識に近いのかもしれないのだけど、それがないというのがそんなに気になるものですか。
「気になるね。」と、レッドはそっけなく答える。
ともあれ、エルスヴァン。
城の中は最低限の兵力をすらなく閑古鳥が鳴いている有様だ。
それでもレッドは突き進む。玉座に突き進む。すると、居た。
フレイ・エルスト三世であらせられる。
「よお。」とレッド。ニヒルに気取って片手なんかを上げて気安くそういった。
「事態は概ね把握している。」と、フレイ・エルスト三世。
「事態ね。って事は俺の睨んだ通りに事は進むって事か。」
「英雄よ。貴君がどのように臨んでいるのかまでは分からぬ。が、私はこうするしかないのだ。」
「半分は人間だもんな。」ご苦労なこったとレッド。詳細に言うならエルフの血は八倍に薄まってい居る。ともあれ姫は聞かねばならない。そのためにここにいるのだから。
「事態とは何ですか。」と、ヒュートレッド。
「エルフの登場です。姫。」フレイは答える。そして語る。
「人間と手を組んでまで守り通した魔法文明はやはりゴブリンの脅威からは守り通せるとまでは確信が持てなかったエルフは一度は人間にその行く末を任せる顛末までは?」
「知りません。」
「過去にゴブリンはその軍勢の、量で、エルフを圧倒したのです。」
「それに加えて人間の加速度的な魔法を使わない技術の向上。魔法文明は薄氷のごとくだった。」とレッド。
「そこで、エルフは人間とゴブリンを競わせた。」
「飽くまで上からなやり方をするが、結果的にゴブリンは人間を少数民族にまで追いやった。」
「そこでエルフは神のごとくに人間に手を差し伸べ、魔法文明の延命を成功させ、今に至る。」
「そこで終わってたらゴブリンの苦労が水泡ってもんだ。」
「そう、当然人間はゴブリンにも代償を支払わねばならなかった。」
「それがハーフゴブリンの存在だ。」
「エルフから得た技術を人間がゴブリンに応用する事で、ゴブリンは人間に匹敵する知恵を身に着けた。」
「結果ゴブリンの元来ある身体能力と繁殖力、それに加えて知恵。ゴブリンは間違いなくエルフを圧倒する存在となった。」
「そこで人間は落とし前を付けることにした。」
「それがゴブリンと人間の極端な線引き。お前だって身に覚えが在るだろ。ヒュートレッド。」
「覚えもなにも、その所為で親兄弟から離縁されたようなものです。しかし、落とし前を付けたくらいでエルフは黙っていたのですか。」
「エルフもゴブリンも結局のところ自分の子孫はかわいい。しかしそれが人種の壁を越えちまっていたら話は別だ。だから世界をくれてやる的な事をふかして旅に出た。」
「残されたハーフエルフ達は世界をわが物にしたと勘違いしたまま、言いつけ通りに王族として君臨していた。」
「それが今迎えている事態ですか。」
「阿保か。お前。」
「ハーフエルフに国を、世界を、預けた筈のエルフが今にして姿を現した。それが非常に逼迫した事態なのです。姫。」
「そこが分かりません。少なくとも私は彼に敵意を感じませんでした。」
「じゃあ、エルフの味方って事か。」
「解らないと、おっしゃるのだからそこまでいきり立たなくともともよろしいではないか。英雄よ。」
「もともとは人間の敵、ゴブリンの敵。それがハーフエルフなんてものを祭り上げて世界を支配してたんだぞ。影から操る程の影響力とかが無かったにしても、世界をわが物と勘違いさせるくらいのチカラがあり、すでに人間を何人も焼いている。町を焼いている。それでもエルフの味方するっていうならこの場で俺が……。」
「レッド、貴方では私に勝てません。」
「よーし、表出ろ。」
「冗談はさて置き事情は分かりました。そして私はこれまで通りに私の味方であり、レッドの主人です。」
「だから表出ろ、てめえ。」
「事情を踏まえて覚悟していただいたのでしたら、私の覚悟も受け入れていただきたい。」
「どういう事ですか。」
「城を焼こうってんだよ。魔法結晶の力でな。」
「なぜ。」
「城に引き入れたエルフもろともです。誤解の無き様に。」
こうして、レッドとヒュートレッドは城を離れた。




