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王になりなさい。

 最弱にして、一風変わった文化を持つ国。風説の国、風の国、フウガ。

 ここで足りないものと言えば、風。それくらいに何でもそろう豊かな気候と豊富な物資がある。多種多様な民族がある。それらを管理する文化もある。無いものと言えば、風というくらいに何でもある。

「開門せよ。」とヒュートレッドが命じるままに門は開き、謁見の間へ通された。いや、玉座の間なのかもしれない。ともかく、ミカドは現れた。

「降伏か。」と、そう言う。

「違う。停戦だ。協定だ。」とレッドが言う。

 これでヒュートレッドは落ち着き、話ができるまでになった。

「それで。」とミカド。何ゆえにフウガの攻撃と看破した。と、そういうのだ。

 なのでレッドも答える。風の魔法があれば……、と。

「風の魔法があれば、確かにもっと簡単だったかも知れません。しかし風の魔法、そんなものはもう廃れた。無いのです。それ故にフウガは発展した。魔法なんて無いと悟った我々は、魔法がある他国に負けじと、努力したのです。」頑張ったのです。とミカドは言う。

「それでジョヴァンニか。なぜジョヴァンニだ。」他にも在っただろうとレッド。

「単純に大地を生み出すチカラが恐ろしいのです。」

「そんなチカラは、もうありません。」ヒュートレッド。

「無いと知っていても恐ろしいのです。無限の力と言って過言ではない事を我々は知っています。」

「エルスヴァンだって……。」

「エルスヴァンの火の力も確かに恐ろしい。ですがエルスヴァンは王族同市の婚姻を、恋愛すら禁じています。やはり最初に打破しなくてはいけないのは、ジョヴァンニでした。」間違いが起こるなら最初はジョヴァンニでした。とミカドは言う。

 ヒュートレッドは驚いたのか。深くは追及しなかった。だからレッドが言ってやる。

「それにしたって亜人を弾に使うとは魂消たぜ。」アンタの仕業かとそういった。

「亜人にも賢者はいます。そして王もいる。統制が取れているなら利用も出来ます。」

「よく言うぜ。統制が取れていようと無かろうとそうしたクセによ。」

「貴方は、きっと賢者なのでしょう。」

「なんのこっちゃ。」

「謙虚で、冷静で、そういう考えを、賢者らしいと言うのです。」

 これを聞くと、はんと笑った。レッドは褒められる事に慣れていない。

「どうですか。」共に戦っては見ませんか。とミカドは言う。ヒュートレッドは何も言わない。ただレッドを見る。

「待遇次第だ。」と、レッド。「言って置くが今は公爵にしてやるって言われてもジョヴァンニの方がいい待遇なんだぜ?」

「では、王におなりなさい。」とミカド。ヒュートレッドは何も言わずにうつむいた。

「どうせ、ゴブリンのとか、仮初めのとか、そう言うんだろ。」

「いいえ、賢者よ。光の国エルフィランをまとめ上げて見せなさい。」

「そいつは無理難題だな。」

 そもそもエルフィランとは国ではない。抑圧から産み落とされた混乱とでも言おうか。

 四方を王国に囲まれた島が、勝手に王政を廃止した独立国家だと主張し出したのである。これを纏めろ。王になれと、ミカドは言う。

「無理ですか。ならばやはり焼き払うしかありませんね。」

「焼き払うって事はエルスヴァンと結託してんのか。」ミカドはうんともすんとも言わない。

「ていうか、待てよ?」

「待ったら何か変わるのですか。」

「何でそんなに焦ってやがる?」

「やはり。」やはり、あなたは賢者です。とミカドは笑う。

 いや、答えろよ。レッドの喉が唸りをあげる前にミカドは続けた。

「もう直ぐ百年なのです。」

「なるほど、ここでようやくってことだな。」

「なんの話ですか。」とヒュートレッド。そいつをこれから話すところだった。いや、ここでこいつって言うのもタイミングだ。と、レッドは思う。

「エルフです。」言った。言いやがった。

 エルフがこの地を離れてからもうすぐ百年。と、ミカドは語る。

 この大地を、世界を、惑星を、支配していたのはエルフだった。そしてそのエルフが、エルフたちが帰ってくる、かもしれない。と、風説の国の王が言う。

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