ハーフエルフの台頭。7
レッドが息を吹き返し、目を覚ました。
「おお、勇者よ。死んでしまうとは情けない。」
「うるせぇよ、黙ってろ。」
不意の一言にレッドは空かさず返す。そして辺りを見渡すとこういった。
「ところで、ヒュートレッドは何処だ。」
「恐らくはもう一人のレッドの所です。」
「何で。」
「何ででしょう。」
「デキてるのか。」
「情痴を思い浮かべるとはレッドも変わりましたね。死んでいる間に何があったのですか。」
「死んでる間というより、死ぬ前に、な。ところで、ヒュートレッドは本当に何してる。」
「さて、どういう事なのでしょうか。」
「知らねえって。」
「実を言えば、もう一人のレッドの方が生き返ってくれないのです。」
「そうかい。」
「あっさりですね。何か思い当たる事でもありますか。」
「あっちは冒険者アバターっていうシステムで、機械だ。魂とかの規格が違うとか、そういう事かと思う。」
「私の意見とは違うので驚きました。私はてっきり愛が足りないからだと思いましたけれど。」
「なんだそりゃ。」
「魔法の源の話です。愛と夢と希望の話です。」
「残念ながらレッドさんの方が正解ですよ。多分ですけど。」
「うん、誰だ。」とレッド。見知らぬ若いハーフエルフの男を指してそういう。
「フレイ・エルスト四世です。以後お見知り置きを。」
「傀儡って話じゃなかったか。」
「しかし私が居なければ今のあなた方は生きてはいないでしょう。」
「と言う事は。」
「カラーズ・ワーガイア様はお亡くなりになりました。」とミカドが継ぐ。
「想像は出来るがしたくないな。」
数多の精鋭に囲まれたヒュートレッドとミカドはアイコンタクトも無しにカラーズ・ワーガイアのもとへと駆けた。
死なせるつもりなどミカドには無かった。しかしヒュートレッドは違った。
「御覚悟を。」とミカドが言うが早いか、ヒュートレッドは真っ先にその頭蓋を粉砕したのだ。
カラーズ・ワーガイアは死んだ。同じ血統であるヒュートレッドに、無常にも殺された。
これを見た親衛隊は仇を取れと言わんばかりにわんさと向かい来る。が、その時だった。
「王は死んだ。」と声高らかにいう者があり、一斉にこれを見た。
そこに居たのはフレイ・エルスト四世だった。
「王は死んだ、諸君等は守る事が出来なかったのだ。仇討ちなど止めにして、兵を引け。」
「匿われている身でよくもぬけぬけと言えたもの。」兵の一人が言い返す。
「まずは収めるのだ。王の亡き今、それが出来るのは親衛隊を置いては他にあるまい。」
そうして隊長の命令が下った。
「全員、剣を収めよ。」動揺が走る。しかし隊長止まらない。止める事を止めない。
「あそこの坐はワーガイアの血を引く中で最も強いとされるヒュートレッド・ワーガイアである。ワーガイアを守る我等がワーガイアに剣を向けて良い物か。最強とされる者への敬いは諸君等には無いのか。」
それが決め手になった訳では決してない。むしろ数多くの男がたったの二人の女を相手に、守るべき者を守れなかった事実と、決闘なら受けよう。という、ヒュートレッドの言葉に気おされた形になった。
それでも、この形にするきっかけはフレイ・エルスト四世の言葉にある。
恩は、フレイ・エルスト四世にある。




