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ハーフエルフの台頭。5


 戦場の中心でエルフは叫ぶ。罵詈雑言でも愛でも何でも良い。とにかく叫んでは部隊をかく乱する。

 そうした動きの中でエルフは気付く。一枚岩ではない事。そう、部隊があるがそれが急ごしらえなのか何なのか、とにかくつけ入る隙があった。

 そして、逃げる。隠れる。叫ぶ。を繰り返して合戦場を火の海に変えていく。勿論罠や道具や嘘や真実を使いながら、火の海を作っていく。

 ドンと音がしたからと言って必ずしも火が付く訳ではない。

 剣を振るったからと言ってそれが攻撃になるという訳でもない。

 時には嘘なのか、真実なのかも分からないようなことも叫ぶ。

 それで分かるのは敵部隊が一筋縄ではないと言う事。一枚岩でも決してない。

 強いて言うならこれは競争。エルフを最初に打ち倒した部隊にだけ褒美が出るという事らしい。

 だから逃げる。だから隠れる。突然行動を変える事で標的を絞らせない様にしながら、叫び、一刻でも長く生きたいと、強く願う。

 ここに来て言うのもおかしいかも知れないが、思いは大事だ。死にたいと思っていれば生きている事に満足できない様に、生きたいと思えば死ぬことが遠ざかる。

 問題が生死に関するものだと分かりにくいので食べ物に変換してみようと思う。

 食べたいと思えばお腹が減ってきたように思ってしまう。実際食べてみると意外と食べれてしまう。

 食べたくないと思えばお腹は減らない。無理に食べると罪悪感すら生まれる。

 そういう物で、満たされれば人の思考は逆へ行きたがる。らしい。

 何が言いたいかというと、この時のレッドが何を思ったかと言う事。「もういい、もう疲れた。」だ。

 百戦錬磨、一騎当千、千人挽歌の実力を持つはずのエルフの冒険者という肩書でそれを思ってしまう程、疲弊していたと言う事は、つまりはここで終わると言う事に他ならなかった。

 希望は無く、生を見出す余地が無い。それが今のレッドの措かれた状況。覆す事はきっと無理で無茶で無謀で無為に無策な無駄なのだ。


 姫は剣を振るう。

 一心不乱というより無心で剣を振るう。

 相手は若い、男子と言えるが迷いはない。

 割り振られた仕事をただただ熟す。

 それが剣聖で在り、ヒュートレッドだ。

 相手は明らかに自分より弱い。

 弱いのにどんどんと押し寄せる。

 それはつまり数に物を言わせるゴブリンの戦術と同じに見えた。

 だから無心になった。

 弱さは蔓延ると強さを食らう大蛇となる。

 だから今は耐えて、切り伏せるしかない。

 耐えて? 違う、私は無心だ。


 流石に王族親衛隊。何を言ってみても聞く耳持たねえ。

 時間稼ぎというより標的集めになっているが、こいつらに感情の様なものは無いらしい。

 感情が無いのに何故戦えるのか。

 そんなのは簡単だ。楽しいからだ。王に仕えて弱者を討ち滅ぼすことに快感を得ているからだ。

 そこに付け込んで話をしても、奴さん聞いてはくれない。

 まあ、あとはミカドがうまくやるのを待つだけだが、肝心のミカドが寝返ったらこの状況はかなりまずい。いつの間にか信用してしまっている。それが何なのか今は考える時じゃない。

 今は少しでも死ににくい方法を実行していくだけだ。


 帝王カラーズ・ワーガイア。

 それがこの国の王であり、実際は王よりも上位の存在に当たる彼女だが、やはりハーフエルフだった。

 白い肌に流れる様な金髪はやはり何度見ても怖気が走る。

 今すぐに殺したいがそれも叶わない。何故こんな状況になったのだろう。やはりゴブリンを信用したのがいけなかった。とは言え手ごまとしては優秀だったのだからある程度は仕方がない。

 親衛隊を一人で引き付けるというのがどれだけ無茶な事なのかもっと吟味した方が良かったのだ。

 そして、もう死ぬかもしれないと思いながら、口だけは動かせる。

 カラーズの計らいだろう。もっと屈辱と恥辱にまみれた私を見たいのか。やはり権力者というのは、ハーフエルフというのはそういう物なのか。ため息も、出ない。

「たったの四人。」とカラーズ。

「されど四人です。女帝。」とミカド。

「たったの四人で、たったの一夜で、武力が此処まで来るのですか。」

「たった一夜と言ってもその準備は更に短く、一人の男が半刻ほどで考えた事。たったの四人とは言えそれぞれが精鋭です。」

「文武を合わせる事で国を治める君らしい。」

「文武を違える事で国を亡ぼす事になるのでしょうか、あなたは。」

 一問一答だった。

 カラーズに皮肉は通じないが言葉は通じる。通じるものがありルールと攻略法が分かれば負けない。ただし、まだ攻略法が分からない。

「ピンチはチャンス。」

「そうですとも、誰かのピンチは誰かのチャンス。今もこうしてあなたがチャンスを食いつぶしてピンチに陥る瞬間こそが、私のチャンスなのです。カラーズ様。」

「ブルーブは息災か。」

「ヒュートレッド様はお元気で在らせられます。」

「ヒューが元気。うん、いい事だ。」初めての感情はまさかの家族愛だった。


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