ハーフエルフの台頭。4
ジョバンニ近くの合戦場にて、火の手が上がる。
ドンと音がして、合戦場が燃えた。今は使われない合戦場なれど火の手が上がれば警戒しなくてはならない。警戒とは即ち軍を動かすと言う事だ。
トップの一存で決まるものではなく、統制のとれない事態でもあるがすべては愛国の意からの行動だ。誰も咎める者は無い。のだが、今回の事態はそうとも言えない物だった。
王であるカラーズ・ワーガイアの指示ではないのに大規模な兵力を投じる事が今後どれだけの不利益を生み出すのか、この時は誰も分からない。
分からないが、エルフが魔法を携えて戻って来たとなればこれも又やむなしと言った所。
そう、合戦場へ姿を現したのはエルダーナだった。魔法の剣を携え、炎に囲まれ声高らにジョバンニ許すまじと吠えている。これを放っておけば国が、以前は町を焼いた男が今度は王都を焼く事になると皆躍起になった。その結果が統制のとれない指揮系統での全軍出撃だ。
否、統制は取れている。ただしそれは部隊長レベル者に限られ、現場レベルに抑えられていた。結果として上層部にまで細密な情報が上がらないままの合戦となった。
去るひと時。
レッドの蘇生に成功し、エルフのレッドとゴブリンのレッドが初対面した時の事。
「私たちには手ごまと言う物が不足しています。そこで知恵者と呼び声高いレッドにこの事態を打開していただきたいのです。」とミカドは言う。
「さらに言えば、王を討つ役はヒュートレッドである必要がある。」とエルフ。
「そうする事で今後の政治がやりやすい事はありましょう、しかし、必ずしもそうである必要はないとも思います。」とミカド。
「いや、それは二人目の俺が言う通りだ。ヒュートレッドじゃなきゃまず王族お抱えの親衛隊に八つ裂きにされちまう。単純な戦闘力でな。」とゴブリンは言う。
「では、ヒュートレッド様には生きて、勝ち抜いて頂かなくてはいけない。それは大役ですね。」
「それを超える大役があるとするなら、コイツだな。」とゴブリンはエルフを指さした。
「まてまて、それは安直だ。」と焦る場面なのになかなかの落ち着きでもって答えるエルフ。
「いいから、話をお聞かせください。」と遮るミカド。
「コイツを囮にして大軍隊をおびき出して、俺たち小物はこそこそと侵入しようって手筈だ。」
「張り子のトラでなく野生のトラに軍隊を差し向けさせる作戦だろうが、それは奇策に搦め手、風が吹けば桶屋が儲かる方式の俺のやり方じゃない。そして犠牲にもなりたくはない。」
「野生のトラなんかより希少価値のある名前の在るエルフが単身で啖呵きって向かってくる。そうすりゃ寄せ集めのならず者たちは我先にと手柄を立てようとする。
働きはそれだけに留まらない。ならず者を食い物にする人権派の奴らの口を開かせない為に正規の軍も出動せざるを得ない。というのが今のジョバンニだろう。
後、厄介なのは頭でっかち共だ。実戦では未知数だが、頭が悪い訳じゃない上に若さも兼ねて備える軍師候補生たちは少なからず自分の弱い所、強い所をわきまえた動きをしてくるだろう。
それを各個撃破するのがヒュートレッドの役目、王族お抱えの親衛隊は俺が何とか時間を稼いでやるうちに王のカラーズ、だったかをミカドが討つ。
これが今できる最善の策だ。異存があれば言ってみろ。エルフの俺。」
「各自の生存率が低いのはどうにかならないかという話だ。加えて俺の役割だと確実に死ぬ。それも計算の内なのだろうが、フウガでは今、レッドと言えば俺を言う。いわば、俺こそがオリジナルだ。
そんな状況でゴブリンの俺が生き残る様な策を立てるのが気に食わない。」
「状況が終了したら身を隠せ。出来なければ死んで詫びろ。他に言いたい事はあるか。」
「エルフと言うだけでどうやって軍を動かす。そもそも魔法が使えないんだぜ。」
「威張るな。そんでその辺は目いっぱい気張れ。
投石器やら炸裂弾に火炎瓶、使える物は何でも使え。当然魔法の剣も所持してもらう。そうじゃなきゃ真実味が演出できないからな。」
「つまりは、俺にエルダーナを演じろというのか。」
「そうだ。エルダーナはフウガに加担した数少ないエルフだ。ジョバンニのお偉いさんはエルダーナを忘れちゃいない筈だ。それを利用させてもらう。」
「利用できるものは何でもですか。例えそれが既視感の様な物さえも。」
「生きるって事は戦うって事だ。そうじゃなきゃ死んでるのと同じなんだぜ。」
そして、大戦の火蓋は切って落とされる。




