ハーフエルフの台頭。2
世界の為と言われて立ち上がる程器量よしでは、勿論ない。
それでもやって貰わねばならない。どんな手を使ってでも、どんな忌まわしい方法であってもなさねばならない。それだけの覚悟を持って、ミカドはヒュートレッドを、そしてテコでも動かないであろうレッドを、説得しなくてはならない。
「ふざけるな。」とはレッドの言葉。「なんで俺が、俺たちが今更そんな事しなきゃいけないんだ。」
「ですからエルスヴァンのフレイ・エルスト四世が傀儡でジョヴァンニの王たるカラーズ・ワーガイアに操られているのです。私にはもう貴方たちに頼るしかないのです。」
「嘘つくなよ。お前だって元は高給取りで今は後継金とか発生してんだろが。その金で傭兵でも雇えばいいじゃねえか。」
「剣聖ほど腕の立つ兵が、そしてレッドほど頭の切れる兵が居ましょうか。」
「煽てたってなんにも出ねえぞ。とにかく嫌だね。俺にだってやる事があるんだ。いつまでも御守はごめんだぜ。」
「誰の御守ですか。」とヒュートレッド。
「ともかく。」と、一触即発の場面でこれ以上負傷者を出してはいけないと悟ったミカドが遮る。「レッドのやりたい事と言うのは何でしょうか。それは、私が雇う兵に暗殺を企てられるだけの価値が有る事なのでしょうか。」
「その意気やよし。だが、相手が違う。暗殺企てるならカラーズとか言う奴を狙えよ。」
「早々に躱すのは貴方のクセですね、レッド。貴方の目的を聞いています。」
「まあ、別に秘密にすることじゃねえが言う必要もねえ。」
「魔法を持ってすれば不可能は無いでしょうに。」と、ミカドは言う。レッドはエルフの体になっても魔法が使えないと言う事を看破し、同時にハーフエルフであるヒュートレッドが魔法を使えるかもしれないと、そういうのだ。
「魔法が使えないってのは、魔法を討ち滅ぼすより難儀な事だった。それは認めるが、魔法があれば何でもできるってのは言い過ぎだ。」
「少なくともレッド自身の望みを叶える一助にはなるでしょう。」
「一事が万事みたいに言うなよ。一事は一事だ。」
「つまり、罹った魔法をどうにかしたい、と。」そこまで把握したらあとは火を見るより明らか。ミカドはエルダーナになったレッドの顔をまじまじと見る。「なぜそのままではいけないのですか。」
「今の文脈でなぜ分かったのか解説して欲しい所だが、まあそういう事だ。今のままでは何も悪い事は無い。モテるし、強い。サイコーだ。だけど俺にも親が居て人情みたいなものもある。」
「聞き捨てなりません。」とヒュートレッド。
「は? お前、助けられた恩を忘れたか。」
「思い出したくもありませんが、そこで無く、私が魔法を使えるかもしれないと言う事。そしてそれが示す先には私の魔法で、一事を万事に出来るという事。貴方の一助となりその全てを担うという事。違いますか。」
「お前、変わったな。」とレッドが驚くのは無理もない事だ。確かに変わった。剣一筋の女ではなくなり、ミカドとの歳月がヒュートレッド変えたのかもしれない。しかしヒュートレッドは変わったとは思っていない。これは推理ではなく、素直になったと言える事だった。
「その通りです、ヒュー。」暗にあなたがレッドを救えると、そういう。
「いささか遠回りになりますが、そういう事ならまずはエルフの里、ですね。」とヒュートレッドが乗り気だ。いやな予感がする。




