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賢者と剣聖。


 賢者と剣聖、それが二人が王から貰った称号だった。

 これで当時の目標であった安泰な暮らしが出来るとレッドは燥ぐ。

 人間国宝同様に国から手当をもらいながら一生を食うに困らない生活ができるのがこの称号のすごい所だ。更に、弟子を取り奉公させる事まで出来てしまう。弟子は弟子で特典があるのだがここでは割愛。

 受勲式を無事に終え、二人は分かれる。


 賢者となるとレッドはまず家を買う。

 それから冒険譚を終わりにして日常系を面白おかしく生きて行こうと心に決める。


 一方、剣聖となったヒュートレッドはこれからの人生がどうなるのか、どうしたいのか、分からないでいる。レッドなんかに言わせれば、ラブコメSFファンタジー青春学園サスペンスホラーでもなんでもいいじゃねえかと、そんな事を言う。

 そう、何でもいいのだ。

 公序良俗に反しない限りは何をしたっていい。それが逆に枷となる。これまでは常に誰かの言いなりだった。ゴブリンにさえ言いなりだった。それが突然何もしなくていいと、寧ろ何もしないでほしいと、そう告げらた事で、迷っている。

 切っ先から炎を出す練習も十日くらいで飽きてしまったし、成果も無い。

 流儀を変えてから適当に肩慣らしをしようとも相手がいない。相手にされない。

 本当にいっその事、俺よりも強い奴に会いに行くとでも置き手紙をして、他国へ渡ってしまおうかとも考えたが、バカバカしいと気付いて止めにする。

 それで、レッドと話がしたくなる。バカバカしい事を言われたくなる。どうもおかしい。妙だし、変だし、終わってる。

 ずっとこんな感じだ。

 先の大戦が終わってから、ずっと終わっている。

 文字にしてみれば、なんとも不穏分子的というか、戦いの中でしか生きていけない人種だったのかと気付くが、その事をレッドに言っても、当たり前な事で悩むのも修行だとかそんな事を言う。面白くとも何ともない返答に、つまらない。と正直に言って出てきてしまう。

 なにせレッドなのにエルフなのだ。

 このちぐはぐ感はそんなに直ぐには消えそうにない。

 ちぐはぐしてるだけならばいいとして、不細工がイケメンに変身するなんて夢物語を実現した上にお金に苦労していないのだから遊び放題のレッドを軽蔑しながらも、なぜか誇らしい。

 その誇らしさの様なものが、苛立ちに変わる。

 おかげで酒の味を覚えることが出来た。男の良さも知った。ただ胸に開いた埋まらない何かがどうしても騒ぎ出す。騒いで騒いで気持ちが悪い。

 それでミカドを尋ねるに至った。

 ミカドはミカドで陶芸の真似事をしている。陶器に価値が有るのではなく、それを生み出す私に価値が有る。だから私の作った陶器はもれなく名品だ。とか、価値を作るという訳ではなく、価値を不随させる事で価値が上がる。とか、訳の分からない事ばかり教えてくれるのだけどそれは飽くまで陶器の話として、こう切り出す。

「花嫁修業、してみますか。」

 修行と名の付くものの中で恐らく一番険しい修行で、しかも一生かけても極まれる事のない修行だと説明を受けて、起つ。

 始める前にいろいろと約束をした。

 まず、男と無暗に寝ない事は大前提と言う事らしい。それからお酒も断たなければならない。この時点でかなり厳しいのだが、負けていられない。

 料理に掃除、土の調査に窯の修理、家事に手伝いに大忙し。

 おかげで着物の着付けを一人で出来るようになった。胼胝も引っ込み女性らしい手つきになった。今では踊りも出来る。生け花や茶の湯でも恥ずかしい思いはしないであろう女に育った。

 もともと才能に恵まれている上に根性も度胸も愛嬌もある。更に技術を教えてくれる人にまで恵まれている。運命がわが物の様だ。向かう所敵なしとなった私はそこから2年の歳月をミカドと共に過ごした。

 そしてついに、レッドの家に泊まり込む事になった。

 久々の男がイケメンだ。ミカドから意中の相手と教えられたレッドだ。

 大したものだなと褒められただけでもう心の中がぐちゃぐちゃだ。この男をめちゃめちゃにしたい。そこまで考えていた事は覚えているがその先はよく覚えていない。

 その実ハチャメチャだ。

 レッドと寝るという段階に来て私は暴れた。

 その為に家事手伝いを修行して来たというのに、実践してお役に立った証としての褒美だったのに、お前と寝たらお嫁に行けないとか、なんとか言っていた。お前の子だから責任を取れと言えばいいのに、だ。

 この段に来て初めて常々レッドに言われていた事を思い出し、同意した。私は莫迦だ。

 まさか本当にラブコメって来るとは思わなかったと煽り立てるからいけないなんて今更だ。もういい訳なんて出来ない。私はレッドを想い人にすることを諦めた。


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