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剣を振るう。


 戦え。

 目を覚ます。

 目を覚ましても夢の中なのはどんな古典だ。

 親父の声だと分かるし、親父の口癖だ。

 生きてるのか。生きているなら戦え。戦わない奴の人生は、死んでるのと一緒だ。

 なんて過激に無茶を言う。だけどそんな親父の事は嫌いじゃない。

「死んでんのか。」

 野太い声。親父だ。

「生きてるさ。」

 言ってゴブリンは起き上がる。

「何でお前は剣を振るわない。」

 親父の目線の向こうで兄弟たちが必死になって剣を振るっている。

「頭の中で戦うのだって戦いだ。」

「イメージトレーニングか。」

 初めてこちらを見る親父。久しぶりに見た、親父の真正面。

「違うけど、そんな感じだ。」

「じゃあ好きにしろ。」

 そういって親父は笑う。笑う時は実に楽し気だ。

「いいのかよ。」

「いいに決まってらあ。」

 こんな事を言うのは親父じゃない。分かってる。夢だと分かる。不思議な感覚だ。


 剣を振るう。

 予備動作を最小にして、間合いを測ると、また剣を振るう。

「精が出ますね。」

 振り返るとそこに黒髪の中年女性が立っている。

「御供が居ないのは、珍しいですね。」

 金髪の少女は当てつけの様に言ってやる。

「最近は供を連れ立つ事の方が少ないのですよ。これもレッドや、ヒュートレッド様の御蔭です。」

 治安が良くなっているのだという。

 関係ないと思った。だから、剣を振るう。

「ヒュートレッド様はもう、世界で一番強い剣士なのです。」

 その様に剣を振るうのは止めてほしいと聞こえる。

「だから、なんですか。」

「剣聖ヒュートレッド様。もうお声をかけても届かない所においでですね。」

「そんな事はありません。」

「私は、ヒュートレッド様が羨ましい。」

「そんな事はありません。」

「いつまでもお若く、いつまでも強くなり続ける事は、人間にはできません。」

 羨ましくて、妬ましいとミカドは微笑む。

「私の方も、ミカドさんの様になりたいと思う事がない訳ではありません。」

 無理なので、剣を握るのです。とヒュートレッドは答える。

「剣を振るうより剣聖として、象徴として過ごされたらいかがですか。」

「炎が出るまではそれも出来ません。」

「エルダーナ様が愛用していた魔剣の炎ですね。」

「いろいろ試しているのですが、なかなか出ないのです。」

「魔剣は度々持ち主を選ぶ事があります。」

「では、選んでもらうだけです。」

「なんの為に。」

「剣聖ですから。」

 視線と視線がぶつかって火花が飛んだような気がする。

 微笑むミカド。

「長話になってしまいましたね。」

 そう言うと引き下がろうとするので呼び止めた。

「たまには良いではありませんか。」

「逃がしてはくれないのですね。」

「レッドの見てくれが変わった事、どうお考えですか。」

「良いではありませんか、今はハンサムですよ。」

「私は、まだ慣れません。」

「魔法が使えるなら、元に戻せるかもしれませんね。」

「ロマンチックな話ですね。」

 私の見て来た魔法はもっと刺々しい。そんなメルヘンでロマンチックな事を考えられるミカドには勝てないとやはり思う。

「夢と、希望と、愛です。」

「魔法の根源ですか。」

「そういう事です。」

 言ってミカドは微笑む。


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