ゴブリン、三度エルフの里へ。7
エルフの王に会うにはまずエルフの里へ行かなければ話にならない。
エルフの里に着いたとして、王がドワーフの谷から帰って来たのかも分からない。
そんな状況で、ビビアンは「会える。」という。
疑わない方がどうかしてると思う。しかし、ビビアンには、最悪、ドラゴンという手段が残されている。どうやってドラゴンを呼ぶのかは不明だ。不明だからこそまだ殺せない。
レッドはそのように考えた。
ビビアンがレッドを恐れている以上に、レッドはドラゴンを恐れている。
この構図が分かるのは、今となってはレッドの他にヒュートレッドしかいない。しかし、ヒュートレッドはドラゴンを恐れてはいない。機会があれば今一度戦い、勝利したいとさえ思っている。
それだけの自信がこの女にはある。だから、レッドの考えまでは分からない筈だ。
一方ビビアン。こいつが食わせものだというのは考えの方向性から、言葉の端々から分かる。王をなめている様にさえ見える。だからきっと、レッドを王に会わせた先の事まで考えている筈だ。
レッドが王を殺す青写真を信じて疑わない筈だ。と、レッドは思う。
そして、エルフの里へは、ゲートを使って一気に行けた。
これで3度目のエルフの里だ。
事を成す前には下準備。という訳で、レッドは聞く。
「ゲートってのは便利だな。」と、それとなく放ってみる。
ビビアンとしては相手にしたくない奴からの言葉だ。出来るだけ無視を決め込みたい。しかし、命の危機とあっては返答せざるを得ない。
「と、言うと。」焦る訳でも、気分を害す訳でもない当たり障りのない返答。合格だ。
「ゲートってのはマナのある所ならどこだって開けるのかって聞いてるんだ。」
上から目線が気に食わない。なんて言える訳もなく、ビビアンは話を合わせる。
「マナとは限らない。ドラゴンがそうであるようにオドでも溜まった状態ならゲートは、開く。」
「オドとは。」
「生物があらかじめ持っている魔力の根源。」対して、マナは自然の魔力。マナの木が作り出す以外には根源と呼べるものは無く、なんの力なのかは未解明。
未解明にもかかわらず長年に渡ってエルフが魔力と言う物は大概がこのマナを指す。
魔法の根源はマナであり、愛、夢、希望、のそれらは詭弁でしかないのが実情だった。
「マナはマナの木で補充が出来るって事か。」
「分からない。マナの木もマナが豊富に無いと育たない種類の植物かもしれない。」
「オドってのは補充出来るのか。」
「分からない。生物が生まれる際にマナがオドに変質しただけかもしれない。」
「そうかい。」と、レッド。何か引っかかる気がするがもう時間は無い。
空飛ぶ絨毯でエルフの王が坐であろう城の玉座目掛けて衝突した。
そういえば、玉砕こそ至高とか言ってた奴も居たなと、その女を見る。こちらを見て、笑った。
意味が分からない。
空を飛ぶ魔法の本質としては防御的な分類だと言う事。加速して居心地が悪くならない様にそうなのか、バードストライクに備えてあるのかは分からないが、とにかく頑丈なのがこの空飛ぶ絨毯という訳だ。
流石は未来の武器職人の手掛けた不思議道具と言った所。ともかく、絨毯はダメになってしまった。
その代りにエルフの里の中枢に一気に飛び込めたのは、消費価値としては十分。
「さあ、戦争の始まりだ。」
言ってみたところで、王は居なかった。
代わりに大臣が出遭え出遭えと物々しい。
邪魔なので大臣を斬る。
それから、武器庫に急いだ。
隔し通路がある筈だと睨んでいる通りに事は進む。
目的は王ではなく、帰還だった。
ゲートを使ってオドの集中地点を探れるかと訊く。
「リスクはあるが不可能ではない。」と、ビビアンは答える。
操作は単純にエルフの里から通じるゲートの行き先をオドの一番高い所と繋げる。という事だった。
ドラゴンの巣か、群衆の只中か、二つに一つ。ええいままよ、と飛び込んだ。




