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ゴブリンは姫を追っていきます。

 険しい山道を登ってたどり着いたのは、谷であった。

 西の国、ジョヴァンニ。

 谷に囲まれた高台の国。

 属性:大地 を有するジョヴァンニでは王位継承権が女性にある。まつりごとも女性が決める。母なる大地、母の大地。なので大概の事を多数決で決める。そう、当然ゴブリンの来客なんぞ認められようもなかった。


「私を人質にして強行してください。」ヒュートレッドは言う。

「そのココロは。」と、呆れたゴブリン改めレッドが尋ねる。

「さすれば私は救われ、凶暴なゴブリンを処刑出来ましょう。」得意気に無い胸を張る姫。呆れるレッドは無言で空を見る。あんなに登ったのにまだ空が高い。

「それしか、ねえか。」と、レッドはつぶやく。

 やる事が決まれば早かった。

ヒュートレッドを人質に取り、こいつの命が惜しけりゃ云々を矢の届かない所から叫んで伝える。

しかしその返答がすごい。

「王位は既に決まったようなもの。今更ヒュー様の出る幕はない。」である。

「とは言え、王族だ。助ける気はないのか。」

「ない。」

 一応、向こうも王族だったと言う事なのだろう。そういったやり取りでヒュートレッドは泣き出してしまう始末だ。他に方法も無いので引く事も出来ないレッドはこの作戦で押し切るしかないのだが、それも難しい。一旦引いて作戦を練り直す必要があった。が、ヒュートレッドはブロードソードを手に取り、レッドの静止を振り切り一人で突っ込んで行ってしまった。

 泣いてしまったんじゃねえのかよ! 行ってしまって貰っては困る。エルスヴァンの騎士という称号がもらえなくなってしまう。人間として暮らす日々を必死で追いかけるしか無いレッドは名前通りの姿になって漸く門前に追いついた。


 ヒュートレッドは無傷でそこにいた。思えば王族なのだからこいつを盾にして近づけば矢は飛んでこなかったのかも知れなかった。が、そんな事はない。ヒュートレッドにも矢は飛んで来ていた。ヒュートレッドの剣の腕のみで飛んでくる矢を切り払っていたのだ。

 そこまで執拗にこの姫を国に返したくなかった理由は、人間でない可能性が高いからであろう。

 飛んで来る矢を剣で切り払うから人間じゃないとかそういう事ではなく、ゴブリンの子を孕んでいる可能性の方だ。

 ゴブリンは人ではない。ゴブリンに人間の血が混じろうともそれはゴブリンで、孕んだ人間もまたゴブリンとなる。この世界のことわりの様な風習がそうさせる。


 暫く降り続いた雨のように降り注いだ矢はピタリと止まり、門は開いた。

 中から現れたのは金髪の若い男である。

 現大臣、長兄の王族、ブルーブレス・ワーガイアであった。

「ヒューよ、よくぞ生還した。」と、言った。

「ブルーブ、この仕打ち忘れません。」と、ヒュートレッドは睨み返して、ブルーブレスの笑顔も凍りつく。一先ず手当を。と、ブルーブレス部下に命じてヒュートレッドの計らいでレッドも回復魔法をかけてもらうことで一命をとりとめた。

 それから、女王に謁見するにあたり体を磨かれ、民族衣装を着せられ、飯を食う。エルスヴァンとは違い残飯の様な飯を食わされた。文句もある所だが、ともあれ謁見。

 まさかの玉座にて謁見がかなう。左右に王族がずらりと並び扉の所まで総勢何人いるんだか分からない程の金髪だった。

「ご覧の様に」と、女王グリーンピース・ワーガイア。

「王族と云えど、ヒュートレッド一人居なくなった位で騒ぎになる程の事ではないのです。」

「それにしても穏やかじゃねえな。」とレッド。

「穏やかで無くとも褒美は出ます。例えゴブリンでも。」

「そうかい。それなら文句はねえ。」文句がない訳がないのだけど、嘘も方便という奴だ。

「では、望みを。」と、グリーピース・ワーガイアは言うが、これだけの王族を目の前にして出せる望みなんてものは、助けてくれ。に尽きるのではないだろうか。

 実際レッドの願望はエルスヴァンまでの安全が関の山だ。ところが事態が起こる。敵襲だ。

 レッドには関係のない事だし帰国間もないヒュートレッドも役目がない様子。二人仲良く玉座を任された。

「皇女が玉座離れて会議室向かうのか? この国は。」

「当然です。」アマゾネスですから。と、ヒュートレッドはしたり顔で受け答えた。

 それじゃあ仕方ねえか。と笑ってみるその時またも城が揺れた。

「ただ事ではありませんわね。」ヒュートレッドは何故だかレッドの方を向いてうなずく。

 そんな事された所でゲームのイベントじゃねえんだから徒党組んで敵将打ちに行くとか、そういうの無いからな。と返す。が、姫は止まらない。流石はアマゾネス。

「ともあれここは危険です。」

 城の玉座が危険ならどこ行ったって危険だろ。と返してみても姫はやる気満々だった。

「貴方はこの戦況どう見ます?」

「空襲だな。」

「と、なると?」

「東の国フウガってところか。」

「では、どうすればよろしいか。」

「そりゃおめえ、対空砲で撃破するしかねえだろ。北の国エルスヴァンの協力が得られたらの話だが。」

 母の大地ジョヴァンニでは対空手段が乏しい。これも魔法に頼っている憂いの一つだ。

「私の記憶が正しければ、レッド。あなたはエルスヴァンの騎士ですよね?」

 姫を受け渡した事をフレイ・エルスト三世に伝わったらの話だ。と切り返す。

 そこで三度揺れた。

「まさか成す術がないって事はないだろ。アマゾネス。」

「空を飛べる訳ではありませんので、現状指揮はブルーブ任せになる所ですわね。」

「は?」ハトが豆鉄砲食らったような顔とはこんな顔だ。

「ですから……」

「ブルーブレスは皇帝になれない王族だろ? 今回の襲撃だってソイツが絡んでると見るのが当然じゃないのか?」

 それで姫は納得した。

「敵は、本能寺に在り。ですわね。」とか言い残して走って行ってしまった。

 だから、行ってしまったじゃない! グリーンピース・ワーガイアがヒュートレッド・ワーガイアを受け取りましたっていうお受け取り印がないと、エルスヴァンのフレイ・エルスト三世から騎士の称号貰えないんだよ!

 叫んでみても帰ってくる気配のない姫を迎えに行くしかないレッドである。


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