魔法結晶を手に入れた。5
全員をドワーフの谷へ連れて行く。
それが出来るかどうかはやはりエルフの二人に掛かっている。
一人はエルフの王。もう一人はエルダーナ。
どちらかを置き去りにしておけば時間稼ぎが出来る。願わくば二人ともを置いていけたらと思う。
しかしそれは叶わない。王を置き去りにしたらばドワーフの谷を上下から挟み撃ちに合う。エルダーナを置き去りにしたらば効果が薄くやはりドワーフの谷を上下から挟み撃ちに合う。
だから、王を残すことは決まりだ。その上で如何にうまく立ち回るか腕の見せ所と言った感じだけど、相手が悪すぎて話にならない。そういう事だから、両方をドワーフの谷へ連れて行って、世界樹の部屋に王を残し、下から来るエルフ軍の一部を足止めしよう。上から来るエルフ軍に対しては成す術なんてものは無い。
まあ、それでも戦いには慣れている。何とかなる。幸いエルダーナはエルフの軍隊を相手にしてもかなりの打撃を与えるだろう実力者だ。何とかなる。きっと。
そこまで考えた所で取り囲みの軍隊に動きがある。ネゴシエーターを投入してきた。
そろそろ特殊部隊が人質を危険にさらしてでも、動き出す頃だと言う事だろう。事が事だけに寝る暇なんてなさそうだし、ええいままよ。と、ドワーフの谷への帰還を進言し、それは成された。
聞けば、ドワーフの谷にはエルフが入る事がないとの事。
秘匿すべき技術の集大成であるドワーフの谷は不可侵の条約があるのだと、ドワーフの王は言う。
まあ、信用できるかどうかは別にして、同じ未来からやって来た技術屋と軍隊、戦略家の対決は凄惨を極めるだろう事はなんとなくわかる。
という訳で、時間のない中ドワーフに無理を言って魔法結晶を要求する。
これはドワーフの王とのトレードで手に入れた。
ついでにエルフの王も置いて行くならと、魔法の絨毯を条件を付けて来たので、すぐに乗り、今はまさにその上に居る。
ドワーフの谷を、あれだけ苦労して降りて行った谷を、下に向かった洞窟をだ、易々と下に見えた時はなんと表現したらよい物かと悩む程の気分だ。
速度もあるし、高度もある。低い山なら三人を軽々載せて飛ぶ魔法に改めて恐怖を感じる。
そして、エルフの軍隊を何とかやり過ごすと今度は真っ先にフウガを目指した。
上空からなので森とか海とか山とかを道案内無しでやり過ごせるのは良い。ぼったくられる事も無ければ置き去りにされる事も無い。横になっていても勝手に前に進むというのはやはり良い。
フウガに着くと、ミカドに一報を入れる。
エルフ軍はどんな犠牲でもお構いなしで攻めて来る。と、伝える。
自然フウガは守りを固める陣形を模索する。
しかし、ただ守るだけでは勝てない。攻めなければやはり勝つことはできないと、意見するも検討も空しく守りが固くなる。どうやら、ミカドは俺の事を遊撃隊としての資質があると踏んでいるらしい。
「攻めるのであれば蟻の一穴を開けなさい。」と、言う事らしい。
御免被る。
ゴブリンの洞も、人間の城も、エルフの里も、ドワーフの谷も、湖の妖精や話をする動物も見て来た俺だ、今更俺より強い奴に会いに行く気なんて起きない。俺に遊撃して来いだなんて、恩があってもむざむざ死にたくはない。真面目になっても死にたくはない。
「ならば、エルフの要望をかなえる用意があると伝言してほしい。」
うん、それなら、って目的地一緒じゃないか。と、乗り突っ込みを決めても誰も褒めてくれない。
「本当に伝言が必要ならドワーフを橋渡しにすればいいだろう。報告の通り、ドワーフの谷からでもエルフの里は目指せる。それに、遊撃を頼んで置きながら断られたら伝言を頼むっていうのも気に食わない。伝言は伝言の部隊を編成すればいい。遊撃もしかりだ。」
「命の対価は貴方自身で決めたらいい。しかし、遊撃も伝言もやはりそれなりに強い部隊の編制になってきます。強い部隊には自然とあなた方の内の誰かが加わる事でしょう。」
「もし、私に出来る事でしたら私が。」と、申し出るのはヒュートレッドだ。強い上にハーフエルフだけにエルフとの関係もかなり良い。更に良い事に空飛ぶ魔法の絨毯も使える。
もってこいの人材と言える。
「エルフの里に行くのであれば、行くだけであるならば、俺も。」と申し出るのはエルダーナだ。強い、エルフ、魔法使える。うん、条件がそろってる。この二人でいいじゃないか。
「でしたらやはりレッド、あなたも加わった方がバランスが良い。」と、ミカド。
「待て待て、なんでそうなる。俺は他の方法をだな。」
「伝言と遊撃、どちらかではなく両方をするのであれば、バランスが良い方が良い。」とエルダーナ。
「他に方法があるのですか。」と興味津々に聞いて来るのはヒュートレッドだ。勿論キラキラした目で見るそれではなくどす黒い思惑に支配されたような面構えだ。本当にお前がメインヒロインなのかと言いたくなる。
「他の方法ですか。それも在りです。私たちフウガが守りを固める中で他の方法を模索する前向きな姿勢。やはりレッド、貴方には並々ならぬ才があるようです。」なんて、上手く使おうという意図が見え見えなセリフをミカドは言う。
まあ、並々ならぬ才がある。とか言われたらうれしいが、寄ってたかって俺をないがしろにするのは止めてほしい。
結局、分かったよ。と、言うまでこう言った差し引きゼロの口説きは続いた。




