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魔法結晶を手に入れた。4


 この世界には、魔法も奇跡も、ある。

 それは当たり前の事で、見失いがちかもしれないが、あえて言うと、魔法も奇跡も自分の物でなければ意味がない。他人の幸せを願って魔法を使った所で、あるいは奇跡を使った所で、それは自己満足感を味わえるただそれだけだ。

 だけど、人は一つの時代に、多様に存在して多数が生きている。

 当たり前の事はソイツの中の当たり前にしか過ぎないのだ。

 だから従う。王に従う。王の為だと言って外圧を持ち込んだりする。具体的には、他種族の中でも最も劣位であるゴブリンを連れ込んだりもしてみた。だけど、王はソイツを斬るなと言った。

 だから、従う。

 文脈がおかしいのは仕方がないが、とにかく従う事にしている。何故ならば、時代とか世界とかどでかい物相手に一人で立ち回れるほど器用ではないからだ。

 以上が行動原理だが、このゴブリン、少し頭が切れる。

 生かして置くのは危険だと思える程に頭が切れる。まるでこちらの内情を予め精査していたように物事を運ぼうとする。下手をしたら、自分が此処で斬られる事も計算に入れて喋っているのかもしれない。そう思える程に内情を把握した。確認は取らせてはいない筈だが、落ちはついた感じだ。

 変に考え込む事は無く、変に落ち着く当たりは流石だが、これから先。答えがどうなるかが重要なのだろうか。私には王のお考えは分からない。分かる必要もない。

 しかし、兵に囲まれた今、出来る事と言えば、ゴブリンを主犯にしてしまう事ではないだろうか。

 王には別の事をお考えの様だが、このゴブリンは、あまりに、危険だ。


「それでか。」とゴブリンは言う。レッドである。

「何か。」

「魔法結晶に類する武具を使わないのがだよ。」とレッド。

 確かにエルフの兵たちは見事なまでに魔法を使うような武具を持っていない。

「それが何か。」

「だからよ。え?」とレッドは此方を見て止まる。そうか、と言ってまたにやける。

「どういう事だ。何がだ。」

「いや、知らない方が良い事も在る。それでこれからどうする気だ。」

 これからの事なんて知る訳がない。そもそも魔法結晶が欲しくてドワーフの谷まで行って、そこから先に話が移るなんて考えもしなかった。

「いいから、言え。」

 レッドは舌打ちして、王たちを一瞥する。なんのサインがあったのか知らないが、それで話し出す。

「時代は変わった。簡単に変わるんだ。過去の時代なんてものは未来の時代からちょっと突けば簡単に変わっちまった。それも思いのほかうまく行った。うまく行きすぎて怖くなるくらいに代わる。

 だけど変えちゃいけない物もある。

 時代だ。未来からしたら、過去って事になるソイツは、変わりやすいクセに戻りにくい。

 変えるならその時代に合ったやり方じゃなくちゃダメなんだ。ダメになっちまうんだ。

 そういう事だから、無茶しない程度に昔の未来に近づける努力をしてきた。それなのに今じゃそういう手段でも後れを取っちまった。

 だからよ、これからどうするかって事だよ。」

 そういう事を言って一旦落ち着くがさっぱりわからない。

 もっと掻い摘んで、砕けた言い方はできないのかと窘めたくなったが、それをしたら負ける気がした。

「まず、話を整理しようじゃないか。」時代が変わる? 変わりやすくてうつろいやすい? どういう事だかさっぱりわからないが、レッドの奴はそういう事にしてと釘を刺して来たのでそういう事にしようじゃないか。

「それで、いつから。」何をして、どうすればいいのか。さっぱりわからない。と、ここまで言おうとしたら、レッドは答えた。先に答えた。

「いつからって、お前。最初にエルフが危機に陥った時だろうよ。

 存続の危機に置かれたエルフは禁忌に手を出した。それが時代改変で、いつかっていうのは、先の存亡の危機期。ゴブリンに攻め立てられた時くらいだろうよ。

 忘れる訳もないよな。栄光と苦渋の日々を。俺たちゴブリンはいつかまたエルフを攻める為にいろいろと手を尽くしているんだ。そっちが忘れてもゴブリンは忘れてないぜ。

 数の優位を活かした戦略がエルフ、いや、魔法使いに不利だ、なんて事は絶対にない。

 それは先のフウガ連合対ジョヴァンニの戦いで分かっている事だ。」

 なる程。それなりに具合が分かって来た様だ。しかし、魔法使いに魔法無しで対するのはいささか無謀が過ぎる。犠牲が多く出過ぎてしまう。それではこのエルフの兵隊を退ける事は出来ない。

「では、どうする。」

「本来の、なんて言うと運命信者みたいになるから、そうだな、過去の未来に対して今何ができるか。って所かな。まずは暴力でも政治でもない第三の手段が必要だ。それ以外が不要と言うべきだろうな。エルフの生きる道は、エルフが決めるのではなく、人類、亜人種が決める。その中で生きていけるやっさしい世界を作る事。それが出来なきゃどの道仕舞いだ。」

 それこそ奇跡ではないか。そんな世界が存在するなんて、在りえるのか。

「とりあえず。」とレッド。

 ヒュートレッドを揺さぶり起こし、ドワーフの谷へ戻る事を進言した。

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