魔法結晶を手に入れた。
ドワーフの王は自ら城内の案内を買って出た。
誰も止めないのでここに他の客が来た時なんかもこうするのかもしれない。止めはしないけど、威厳とか意地とかそういう目に見えないものに縋って王様やってる訳じゃなく、本当に駆け引き抜きで人付き合いするタイプの王様らしい。
それはともかくとして、地下なのに明るいのが気になった。聞いてみるまでも無く魔法結晶の様なもので光を生み出している様に見える。
ここは魔法文明の礎を築いた王国なのだから当たり前かもしれないが、ミカドが居たらきっとヒュートレッドに破壊工作を仕込ませるだろうと予想できてしまう。
なぜなら、魔法結晶は兵器だという認識だから。制御され平和利用されているからと言っても兵器は兵器。むしろ驚いたのはどうやって制御しているかだ。
魔法結晶はエルフの血族にしか扱えないという約束事がある。前提がある。
エルフではないドワーフが魔法結晶を扱えるという一種の矛盾が気になってならない。
そうこうしている内に目的地。なんと世界樹である。
一難去ってまた一難、ぶっちゃけ在りえない大冒険の末にようやくヒントを掴んで、ヒントだけではどうにもならない中で姥貝てようやく光の架け橋が編みあがってエルフの里にたどり着いた。あの、世界樹。
それが此処に在った。
「魔法結晶はこの先、地獄の蓋の向こう側。」王は言う。相変わらずの丁寧語。
「世界樹があると言う事は、エルフの里と繋がっているという事だよな。」とレッドはエルダーナに尋ねる。
「武器製造の現場とリンクをつなげて置きたいのは分かるだろう。」
「世界樹ってのはそういうシステムの総称って事か。」
「世界樹は飽くまで魔力計測器だ。マナを生み出すわけでもなければ魔力の泉を出現させる訳でもない。飽くまで、条件を整えるまでの計測器でしかない。マナの濃い所に生息し、魔力が無ければ枯れる。そういう物だ。」
「しかし光の架け橋とは密接な関係があるんだろ。」
「架け橋はゲート。門だ。密接と言えば、まあ密接、なのか。」
「どの道エルフの里に行かねばならないのでしょう。」
「本末転倒と笑うか。」
「最短の道を最速でぶっちぎってやろうぜ。」
「その意気やよし。しかし、それではミカドが黙っていないだろう。」
「ミカドの使える兵は以前の戦争でかなり参っちまってる。人間・亜人種軍対ハーフエルフ軍の時に相当の血が流れたからな。保証やら憲法の新設やら戦争廃止法案とかの対処しなくちゃならない事がてんこ盛りだ。ミカド自身も相当参ってるだろ。だから今回も事後報告でいいんだ。」
「レッドには前々から正しさが足りないと思っていましたが、はっきりわかりました。」
「なんだよ、いきなりだな。」
「生きている事が下らないのでしょう。」
「生まれも育ちも満足してないのは確かだ。それを変えていけたらいいとも思う。それが幸せって奴じゃねえか。生きる意味を自分で決めるってよ、かっこいいじゃねえか。」レッドは無表情でそんなことを言う。
「レッド、あなたの人生論は多分間違っていません。ただの受け売りを生死にまで発展出来る頭脳は認めます。あなたの孤独を認めます。だからと言って、あなたの死に方に私たちを巻き込まないでいただきたいのです。」
「巻き込まれろよ。」どの道母国を裏切ったお前とブルーブレスだけは他の兄弟たちは違って生き延びちまったんだ。死に場所くらい俺に預けろ。と、レッドは言う。
「死にそうになる時だけ本気になる軟弱者に死に場所を任せられる訳がないでしょう。これからは常に本気で、生きてください。」真っ直ぐに視線を向けるヒュートレッド。この意味が伝わらない様であればもう。
「門が開くのはいつだろうね。」レッドはヒュートレッドに気おされてエルダーナに逃げた。




