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エルフが現れた。13


「勝負してください。」

 それが第一声だった。

 エルフの里から世界樹に通じる光で編まれた橋を渡って帰って来ると、マナの森はハチャメチャで、その真ん中に立っていたのがヒュートレッドで、そういうのだ。

 対してレッドはいつもの様にあしらう。

「やだね。」と、気楽にあしらう。

 勝負になれば必ず負ける。それはジンクスでもなければそう言った事実も無い。だけども相手はヒュートレッドだ。勝てる訳がない。ナイフでブロードソードとどうやって渡り合えと言うのか。蟻が像を倒す程に難しい。

 さらに言うならレッドが得意とする戦術は回りくどいやり方だ。風が吹けば桶屋が儲かる方式とでも言おうか、ドミノ倒し的とでもいうようなそういう回りくどいやり方だ。

 けれども、それはレッドのやり方の話。

 周りには広場が広がり、フェアリーがレフリーをしており、尚且つ背後には世界樹だ。

 つまり、逃げ場がない。

 そこへさらにグローブを投げつけられる。くさく汚いそれは、いつか使わせない様にと盗んだそれだ。

 何故そんな物を今も持っているのかはさて置き、目が座った女の怖い事怖い事。

「勝負しなさい。」

 ヒュートレッドの二度目の挑発。何故だか、次がない気がする。

 いや、次までは時間がある。

 レッドは沈黙で答えた。

 鞘がと飛ぶ。ヒュートレッドはもう待たない。鞘が地面に着いたら、勝負開始となる。だからと言って鞘に気を取られればその隙を突いて来るだろう。いや、相手はヒュートレッド、そんな卑怯なやり方をするとは考えにくい、が、鞘が地面に落ちた。ええいままよ。

 レッドは砲弾の様に飛んで来るヒュートレッドを咄嗟に避ける。躱した。逃げれる。

 思うが早いか、剣が襲い来るが早いか、当然逃げられるはずなど無く出来た隙を突く、突く、突く。

 最後は足技だった。と、思う。何せレッドの持っていたナイフが掠めて、ヒュートレッドは負けを認めた。

 まさに一瞬の出来事で何が何やら分からない。只痛い。ズキズキする。が、剣は何とか避け切った。

「止めを。」と姫は言う。

「かすり傷だろ。何弱気な事言ってんだお前。」

「お前って! よぶなあああああ!!」それは姫の咆哮だった。木々は揺れ、鳥やネズミなどと言った小動物たちが姿を隠すような、そういう恐ろしい咆哮だった。

「私は、お前に、お前と、呼ばれる度に、イラッとしていたの!」

 相槌を打つ暇を与えずにヒュートレッドが言う。

「ペットのクセに偉そうで、太々しくて、可愛げのないお前に名前を授けた事を散々後悔したわッ!」

 珍しくライトノベルチックなセリフ回しだけどそんな事に構うほどの余裕など無く、ただ怒気を投げかけられる。ただただ怖い。駆け引きや搦め手、秘策や奇策など風が吹けば桶屋が儲かる方式の回りくどいやり方が通じない相手を怒らせるのは、それだけで怖い事を身に染みて味わうが、相槌を打つ拍は無く、ヒュートレッドは続ける。

「それでも、諸々の信頼を勝ち取っていく貴方を誇らしくも思った。だけどね、所詮ペットなのッ!」

 怒気から狂気に代わっていくとでも言い表そうか。只恐ろしい。が、明らかに反撃の意図はないようだ。

「剣で、私を、上回ってはいけなかったッ!」

 するっていと? つまり、どういう事だってばよ?

 ああ、そうか。止めをさせと言う事か。いやいや、だからなんでそうなる。

「お前、帰ってないな。」

 レッドのひねり出したセリフだ。

 お前、帰ってないな。まるでラブコメの一コマ。そんな積りはまるで無いのだけど、懸念していた事にはならなかったと言う事らしく、レッドは此度久方ぶりに笑った。

 話を遡ると、フウガに帰る、帰らないで揉めた二人だ。

 そして結果的に二人とも帰っていないと言う事を踏まえて、レッドは笑った。

 此度の不祥事、勿論ヒュートレッドの反逆をもみ消そうと言うのだ。

 反逆をもみ消す。つまり、立場が完全に入れ替わる事を指して笑うのだ。


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