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ゴブリンが姫様救って英雄になりました。

セリフだらけです。よろしくお願いします。


 高くなくとも壁は壁。掘りは掘りで意味はあり、似つかわしい丸太の架け橋は敵が攻めて来る時にはしっかりと上がる。

 北の王国、エルスヴァン。王の名は、フレイ・エルスト三世。


 ゴブリンはそこでは異物。人間の国なのだから当たり前だが、姫を救い出したというのに槍を突き付けられる始末だ。

「名乗れ、ゴブリン。」門番の兵は姫だけを手厚く持て成すと、ゴブリンに冷たく言い放った。

「名前なんて高貴なもんは持ち合わせてないね。」ゴブリンはそう言うと笑い、言い返す。

「しかし、姫を救った者には褒美が出るってお達しだぜ? そいつはデマってことか? てめえの主君は嘘つきか? 俺がゴブリンだから、褒美も褒章も、無しってことか?」

「そうです。」と姫は言う。

「私にあれだけひどい事をしておいて褒美を寄越せとそういうのが間違いなのです。」

「ひどい事したのは他のゴブリンだろ。」ゴブリンも言い返すが誰に聞こえよう。ゴブリンは全にして全。個という概念では語れない存在だ。

「ともあれ」門番がゴブリンを突き返そうとするその時。

「ともあれ」と他の声。金髪の男がやってくるではないか。

 この世界では金髪と言うのはそれだけで王族の証であり、男と言うのであればその格はさらに上位。

「それは私の客人だ。」と、フレイ・エルスト三世である。


 隔してゴブリンは城招かれた。

 町をふらつく事も許されず、まっすぐ城に向かわされた。手錠はないが兵士に囲まれての凱旋と言うのは生きた心地のしないものだった。

 城に着くとすぐに体を洗われた。上物の服も寄越した。飯もうまいものが並んだ。そうして会食と洒落込むのかと思っていたら、王は姿を出さなかった。では、どうするかと思えば、またも兵隊に囲われた。

 その後、部屋に通される。部屋と言っても休憩所だった。ゴブリンは床に就く。と、寝る間もなく王が現れた。兵隊と姫を連れて押し寄せたのだ。

「何事だ。」ゴブリンはナイフを構える。

「構えるな。玉座も会議室も謁見の間もその他すべての部屋はゴブリン相手には使えないのだ。」と、フレイ。

「だからって、寝床に押し寄せて来るのがこの国の礼儀か?」礼儀など言葉でしか知らないゴブリンが言い返す。が、「ゴブリンに下げる頭を持ち合わせてはいない。」と睨み返され、言葉を失う。

「しかしだ、褒美はやる。だが、なんの為に褒美を欲しがる?」

「人を遣わす為です。」と姫。

「ちげえよ。俺はゴブリンじゃねえから、人間になりてえんだ。」とゴブリンは言う。これを聞くとフレイは兵に下がる様に言った。そして、尋ねる。

「人間になるとは?」

「そのままだろうよ。今じゃ殆どのゴブリンが混血だ。」勿論人間との。今では純血のゴブリンは殆どいない。それは真実として、人間は、人間と言う名誉職を簡単にはく奪する。ゴブリンと混じったものはゴブリン、ゴブリンを孕んだ者も皆ゴブリンとなる。

「最もてめえらみてえな……」

「それ以上は。」とフレイが止める。

ゴブリンも察し、黙る。もともと褒美がもらえればそれでいいのだ。

「それ以上は、なんだというのですか?」きれいな声で姫は聞く。が、ゴブリンは答えない。フレイも、また答えない。

「しかしだ、ゴブリン。褒美は姫をちゃんと送り届けってからになる。」

「は? それはおめえ等で勝手にやればいいだろ。」

「知っての事ならば尚の事。姫は我が国のものではない。持て成す事は出来ても、送り届ける最中また襲われでもしたら大事だ。」

「だから、それは騎士団でも近衛兵でも好きにつければいい事だろう?」

「最も、ゴブリンに人質が効くかは分からぬが……」

「おい。まさか褒美はワーガイアに出してもらおうって事か?」ワーガイア。それが姫の名。ヒュートレッド・ワーガイア。西の王国の王族。それが姫である。

「ワーガイアからも褒美は出るだろう。しかし、エルストからも褒美は出る。」

「何が言いたい?」

「姫の前では言いにくい。」

「聞き方を間違えたかね。今度はゴブリンに就こうって魂胆か?」

「!」姫は驚いてフレイから身を遠ざける。

「そうでもない。が、誤解は招くものではないな。好かろう。」とフレイは語り出す。

 それは国を案じての事であった。

昨今の狂犬騒ぎではないが国が荒れているという。豊富な自然を有するエルスヴァンに危機が迫っている。と、王は語り出した。

 もともと自然しかなかったエルスヴァンを開拓したのはフレイ・エルスト一世の功績。もっと言えばもうこの世界には居なくなってしまったエルフの残した遺産。魔力結晶の功績と言い変えてもいい。属性・火。それがフレイ・エルストに委ねられた力である。名の示す通りにその火力は絶大にして絶対。使えるのは王族だけの技であるが、血が薄まるに連れその火力もまた落ちていった。そして、それに連れ逆賊もまた増えて行き、今では町の形を保つので精一杯だと、王は語った。

「だからって、姫の護衛くらい何とかなるだろ。」と言うのがゴブリンの本音だ。

 しかし、そういう訳にもいかない。行かない事が証明されてしまったのだ。奇しくもゴブリンの手によって。だからこそ英雄を欲している。

「そもそも、エルフなんかと手を結んでゴブリンを打倒したのが間違いの始まりじゃねえか。」

「それを言ってしまっては元も子もない。我々は過去に遡る術がないからな。」それはゴブリンも同じであろう? と、フレイは告げる。

「過去の、先祖の過ちは目を瞑れと?」

「そもそも、お主とて、そのゴブリンのはぐれ者だろう。」

「待てよ。まさか褒美って……」

「名も無きゴブリンに騎士の称号を与えよう。」

「冗談じゃねえ!」


 そこからは擦った揉んだあって、結局はゴブリンは名を得て、そして、人間と言う名誉職とエルスヴァンの騎士の称号を得た。ついでに馬車と食料とお召し物と少しの金銭にブロードソードとかいう武器ももらった。

「なんだよ。レッドって。」

「私の名から与えたのです。名誉なことですよ?」なんて事を姫は言う。

 西へ向かう馬車の中での事。


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