エルフが現れた。10
隔して世界樹は見つかった。
妖精の案内が無ければ見つからないだろう場所に世界樹はあった。世界樹へとたどり着いたのだ。
同じような風景をぐるぐる回ってやっとたどり着いたのが、目の前に聳える世界樹である。途中森を抜けたりもしたがそれはご愛敬。妖精の案内に感謝しなくてはならないだろう。
それで、どうしろと言うのか。
確かに世界樹は在った。しかし、それをどうしたらいいのかが分からない。
とりあえずぶった切ればいいのだろうか。
「斬れそうか?」とレッドはヒュートレッドに尋ねる。
ヒュートレッドは何も答えないで世界樹を見上げている。つまり無視だ。冗談の類と受け取ったのかもしれないがレッドは本気だった。しかしヒュートレッドにやる気がないのにレッドが力を入れても仕方がない。そもそも元を正せばエルフの里に行きたいのだ。
何故世界樹にたどり着いてしまったのかが分からない。
「おい妖精。」とレッド。
「なんだゴブリン。」と答えるのは男とも女とも分からないような妖精だ。
大きさは手のひらに収まる程度で、背中にトンボのような翅を携えている。
「世界樹に着いたらエルフの里はもうすぐじゃなかったのか。」
「もうすぐ。」
しかし辺り一面は森で、里らしき痕跡はこれっぽっちもない。しかし妖精は悪びれる事も無く、まっすぐに世界樹を見ている。見蕩れている。
「どこだよ。」と現実に引き戻すレッド。
しかし妖精は反応しない。
「まさか登れと言うのか。」と、言うお約束はない。お約束も何も世界樹に登りつくストーリーがどれ程あるのかは分からないが、ここにある世界樹は人が登るほど大きくはない。全長約五、六メートルと言った所だ。本当にぶった切って終えるだけの大きさなのだ。
そして、どうしていいのか分からない時間が続く。夜に目が覚めてしまい眠れなくなってしまった時のような遣る瀬無さが漂う。暇だからと言ってヒュートレッドに相手をしてもらうのもバカバカしいのでレッドはとりあえず眠る事にした。
どれ位寝ていたのだろうか。辺りはすっかり夕暮れ時になっていた。
それよりなによりレッドは水浸しになっており驚く。
雨でも降ったのだろうか。いや違う。これは湖の水だ。
世界樹を取り囲むように湖が出来つつあり、レッドはその中に居たのだ。
「くふっ。」と遠くで笑い声が聞こえて振り返ると、ヒュートレッドと妖精は仲良く笑っていた。勿論こっちを向いて、である。
レッドが水浸しになって驚く様を、助けもせずに笑っていた。
本当にメインヒロインかコイツ。
レッドは二つ以上の意味で悪寒を走らせたが、とにかく泉から出て言う。
「助けろよ。」
「もう少し寝かせてほしいと言ったのはソチラではありませんか。」ヒュートレッドは薄笑いでそう答える。きっとどうせ嘘なのだ。
溺れそうになっている相棒を放っておくのがこのお姫様なのかと、内心で蔑むように納得するレッド。
「夜になったら架け橋が架かるから、それに乗ってエルフの里に行くの。」と妖精は言う。
「なぜそれを先に言わない。」レッドの内心は無邪気な妖精の言葉さえ許容できなくなっていた。それはさて置き、妖精は答える。
「その方が拍が付くと思って。」
「もうすぐ、と言ってました。」とヒュートレッドも手伝う。
最近ずっとフウガに居た所為かゴブリンが嫌われ者だと言う事を失念しているレッドなのでした。と言うのが落ちなのだが、レッドはいたって冷静だった。と言うより嫌われている事の方が長かったのだから落ちにもならない。レッドはまっすぐに強い口調でこう言った。
「もうすでに、エルフは攻めて来ているかも知れない。と言う事だな。」




