エルフが現れた。9
マナを生み出す自然、とりわけ多くのマナを放出する木。その群生地からエルフはなわばりを強調する。
通称マナの森、エルフの森。それがレッドとヒュートレッドの行き先と言う事になる。そう、行き先だ。エルフが群れを成して急襲してきたという訳ではないのだ。
約束の日から大よそ百年。それが過ぎた今、エルフがどういった行動に出るか見当もつかない。だから今回その調査の為に、暇そうにしているレッドと、机での作業が苦手なヒュートレッドが選ばれたという運びだ。
マナの森に行くまでに一難去ってまた一難、ぶっちゃけ在りえないような冒険もした。それでもエルフの里ははるかに遠いという。
誰がって、木とか、だよ。まさに魔法文明。なんでもござれの万博博覧会だ。
木は喋る。花も歌う。鳥は騙す。動物は、まあ食料だ。喋るけど、気にしない。気にしたら負けな気がする。そんなこんなで分かった事も在った。
ゴブリンはあまり寝ないと言う事。ハーフエルフのヒュートレッドはよく眠ると思っていたけれど、数え二時間位だと言う事。この言で言うならレッドもハーフゴブリンなのだけどそれでも三十分も寝たら十分だと言う事だ。
この発見のおかげで荷物を盗まれたりする確率が大分下がった。交代で寝たらいいだけの話だ。
それよりなにより、魔法も使えない空も自由に飛べやしない一行には、嘘つき鳥がかなりイラつく存在だと言う事も共通の認識だ。
魔法が無ければ、嘘がある。と言う訳でもないのだけど、空を飛ぶしか能のない鳥でも嘘はつける。そういえばフウガも嘘とハッタリと事実の他には良く分からない、得体の知れない化学なんて言うものまで使っていた。それが天下統一しちまう程の国になるとは正直思わなかった。
それはそれとして、話を戻すと、現在マナの森の真っ最中だ。
顔見知りになった物知り顔の木と事実を言い当てる鳥と四人で行き先を検討中。
「ふぉふぉふぉ、世界樹を目指すのじゃ。」とか、初めて見た時から初めての気がしない気がするけどやっぱり初めて見た物知り顔の木はそういう。何度も言う。ボケているのか至って大真面目なのかさっぱりわからんが何度も言う。
「お前たちも空を飛べたら一気に行けるのにな。」と冷淡に囀る鳥は竹を割ったような性格で気持ちのいいやつなのだけど、気味は悪い。
マナの森は歩いて奥まで行くのは難しくなるように魔法をかけられて居るのだそうだ。鳥はバリエーション豊富にいろいろな事を教えてくれた。
森は焼いちゃダメだと教えてくれたのもこの鳥だ。
なぜダメなのか聞き出すまでに時間は掛かったが、理由としてはマナが薄れると世界はまるで意思を持って居るかのように彼方此方で猛毒を作り出すという。
どういう物質なのか、どういう毒なのか。と言うのも何度も何度も気長に聞いてやるとようやく言った。それは魔法文明の生物が一個体に集約されて行き、より強化されていく現象だと言う。
原因を聞いていたはずなのに結果を聞いてなんとなく納得するくらいに何度も聞いた。あとはどこかの誰かが勝手に解釈すればいい。
そもそも木自体は燃やした事がある。たき火と言う形だ。羽虫のごとくに集まる動物、喋る動物たちは寄ってきて火を消さないと大変な事になるよ。とか言っていた。食ったけど。焼いて食ったけど。
確かにここ、マナの森では火もまた魔法と言う扱いになるようでものすごい眠気に襲われたのは確かだ。
目を覚ました時には、衣類と武器以外の道具が一式無くなっていた。
嘘をつく鳥に騙されて火を点けてしまったのが運の尽きだ。というか服と武器を置いて行ったあたりにはメルヘン世界特有のルールが適用されているらしい。
それが約五時間毎に繰り返される昼夜での、一日目の夜。もう、兎にも角にも何もかもが無茶苦茶だ。




