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エルフが現れた。8


 愛、夢、希望、その数だけ魔法は存在する。

 そして今、その魔法と対峙し、勝たなければならない。

 そういった局面で必要になるのが戦略と戦力。

 戦略としては基本に忠実な攻撃手段、多勢に無勢を採用する。それも傷ついても痛くないゴブリンやオークといった、人ならざる者を使うと言う事で一致した。

 その為に契約は以前の戦争時にフウガの代表が済ませているので今回もこれを使うと言う事だ。

 標的は以前と変わらずジョヴァンニと言うのも都合が良い。

 しかし、相手は魔法、魔法使いに魔女にエルフも控えているかもしれないという戦況で、奇策を弄さずして勝てる訳も無い。そこで斥候で攻撃するという奇策、つまりは電撃作戦を採用した。

 投入する斥候は一人か二人と言った所だが、魔法を打ち破るためには一人はエルフの血族でなくてはならない。ヒュートレッドか、もしくはブルーブレスでなくてはならない。

 ヒュートレッドは軍勢の中にいる事で指揮を高める役割があり、強さも折り紙付き。ブルーブレスもキレ者で軍を率いるならば、どんな窮地も即応して見せる筈の人材だ。しかし軍を持てば反逆する可能性すら浮かぶ難物。

 それを指摘される前に斥候に志願するのは当然だとしても、その働きには疑問符が付く。平たく言えば裏切る可能性が在る。と言うより、元は敵対関係、信じることが難しい。

 だからと言ってせっかくの志願を棒に振る訳にもいかない。これで悩ましい所だが片方はブルーブレスで決まった。もう一人は、失敗しても痛くない人材と言う事でレッドとなる。

 当然言い争いは有った。しかしながら軍を率いるだけの人望のないレッドが、ヒュートレッドの為に、一度はゴブリンの集落を裏切っていてゴブリンからの信頼も無いレッドが、一国の代表であるミカドに敵うはずは無かった。

 奇しくも男女に分かれての作戦開始となる。


 作戦の開始は夜。と、決めたのはせめてもの情けだったのだろう。失敗しない為にも必要な事であるが、これまた奇しくも夜襲と言う形になる。

 夜襲で電撃作戦。

 途轍もなく卑劣に聞こえる組み合わせの作戦ではあるが、行っている本人は、レッドは不安でいっぱいだった。

 結果だけ見れば都合のいい様に事は動く。

 極上に好都合だった。

 組み合わせがブルーブレスとレッドだと言う事。これが功を奏した。と言うより勝手に事が運んだ。

 まずブルーブレスは、エルフィランの復興している事になっていたと言う事。そして、レッドは以前、戦争の際に休戦協定を申し込んだ事。この二つがジョヴァンニの、固く閉ざされた門を開けた。

 ブルーブレスがエルフィランで魔法結晶を使って、魔法を使って大暴れしたした後に、フウガで挙兵の動きがある事からジョヴァンニでは、ブルーブレスに帰還の命令が出されていたらしい。ついでにレッドは再利用する腹だと思われる。何はともあれつまりは、自由闊達に城内から魔法結晶を崩壊させることが出来るのだ。

 これが、暴れ馬のヒュートレッドや敵国の将たるミカドであればこうは上手くはいかなかっただろう。


 隔して、夜。

 飯を貰い、寝床を与えられた夜。激戦は始まった。戦いの火蓋は切って落とされたのである。

「魔法結晶よ、砕けろ!」とブルーブレスは言った。

 言わせるまでに一悶着あったが、とにかく言った。

 言ってしまえばあとは拡声器とやらの手柄になるのだが、ソイツで城中に声は響き渡った。

 城中の魔法結晶は砕けたであろう事は、ブルーブレスが入城の際に渡された偽物の魔法結晶が砕けた事で確認した事として、あとはとにかく逃げた。

 とにかく逃げた。

 風が吹こうと、火が行く手を遮ろうと、大地が揺れたってお構いなしに逃げた。逃げて、逃げて、逃げ延びて、やっとヒュートレッドの指揮する人間軍隊第一列までたどり着いた。

 戦いは苛烈を極める。

 血で血を洗うような戦いだ。屍の上に死体の山を築き、しゃれこうべに花が咲く程に長期に渡った戦。戦場には味方の方が多く横たわっている。それは錯覚などではなく、実際にゴブリンやオークやフウガ軍の鎧を着た死体が多い。もとより多勢に無勢。こうなる事は明白ではあったが、実際この目で見ると凄惨の一言に尽きる。

 この世最後の大戦と銘打って戦いに勇むつわもの達は次々に倒れる。倒れ、倒れ、倒れ倒した後にようやく戦いは終わった。

 負けられぬ戦いに、フウガは勝った。

 攻勢一方のフウガ軍が勝ったのだ。

 如何せん多勢に無勢も程がある。ジョヴァンニの主力は量産されたハーフエルフだった。一つの血族の為に国を挙げての大戦だったのだ。フウガにして見るならば、敵の敵は味方だった。ジョヴァンニにしてみれば味方もまた敵だった。

 つまり、勝敗を決したのは偏に「噂」の力である。民衆を味方につける為のプロパガンダを眩暈のする程に相手国にぶつけたのだ。民衆に情報をぶつけたのだ。当てこすりも無く直接的にビラを撒いたり、意味のない噂やら真実やらを織り交ぜて、叩きつけた。

 その結果、守らねばならない民衆の女性や子供からまでもがジョヴァンニの王族を憎むように仕込んだ。

 それでようやく長きに渡る戦乱の世は幕を閉じたのである。

 しかし、これでめでたしと言う訳にはならない。

 確かに、フリーゾロアとグリーンピースの降伏によって戦いはフウガの勝ちで決したが、肝心のエルフは居なかった。いや、戦いが長期化する事を予測して姿を晦ましたか、それは分からないが、とにかく、エルダーナは居なかった。

 終わって仕舞えば空しいもの、と言うのはレッドの心境で、実際の権力者たちは戦後処理に追われている。ミカドやブルーブレスは勿論の事ながら、暴れ馬のヒュートレッドまでもが書類の山を作っていく。

 それもその筈だった。フウガは勝ち、ジョヴァンニは負けた。只のそれだけではない。

 世界が大きく変わろうとしている。

 そんな事情を露ともせずに居れるのは、レッドくらいのものだ。

 フウガは勝ち、ジョヴァンニは負けた。

 ミューゼは枯れ、エルスヴァンは燃えた。燃えたその後に寒さと飢えに苦しんでいる。

 まとめて仕舞えばこんな所だが、その被害たるや、筆舌尽くし難し。言葉になど出来はしなかった。


 何日も何日も書類と格闘して、ようやくヒュートレッドが解放されたのは半年が過ぎた頃だった。

「よう、生きてるか?」との問いかけに、「なんとか……。」と力無く答えるの精一杯ではあったが、事情が事情だった。解放されざるを得なかったヒュートレッドには次の仕事が用意されていた。

 それこそが、エルフとの決戦であった。

 主人公はレッドでヒロインがヒュートレッドであるこの物語は、ようやくサブタイトルに追いついた。

 ようやく、エルフとの話題に入る事となる。

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